Research

研究活動

分子神経免疫研究部門

研究部門メンバー

新規ゲートウェイ反射の発見
ゲートウェイ反射の全容解明

 自己免疫疾患の発症には、遺伝因子と環境因子が関連しています。遺伝因子は、家族性の自己免疫疾患の解析からいくつかの疾患誘導に関連する遺伝子が同定されてきました。さらに、最近では、次世代シークエンサーを用いたゲノムDNAの解析から、患者に多く存在する一塩基変異(SNPs)が明らかとなり、疾患関連遺伝子が数多く同定されています。さらに、環境因子についても加齢、感染、ストレスなど多くの病気を悪化する可能性が高いものも示されてきました。私たちは、特にサイトカインであるIL-6とCD4+T細胞に注目して研究を行ってきました。その過程で、血管内皮細胞、線維芽細胞、外分泌細胞などに存在する炎症誘導機構、IL-6アンプを2008年に発見して、いくつかのSNPsがNFkB経路の活性化を介して病気の誘導に関連することを示してきました。また、環境因子を介する特異的な神経回路の活性化が特異的な血管部位にノルアドレナリンを分泌することで、自己反応性CD4+T細胞の侵入口(ゲートウェイ)を形成して組織特異的自己免疫疾患を誘導すること(ゲートウェイ反射)を2012年に発見しました。初めに発見したものは重力ですが、その後、痛み、ストレス、光、さらに、関節内の炎症、人為的な神経の活性化が特異的なゲートウェイを作ってそれぞれ別の組織部位に炎症性疾患を誘導しました(下図)。生理学研究所分子神経免疫研究部門では、これら炎症誘導の独自の2つコンセプトを北海道大学と量子技術研究開発機構の村上研究室と協力して精力的に研究しています。特に、ゲートウェイ反射の解析を強力に進め、
(1)新たなゲートウェイ反射の発見、
(2)すでに発表したゲートウェイ反射に関連する神経回路の詳細の解析、
(3)ゲートウェイ形成部位の分子基盤の解析、
(4)自己反応性CD4+T細胞の抗原特異性とゲートウェイ形成の関係の解析を通してゲートウェイ反射に関わる分子機序の全容解明を目指します。

IL-6アンプとゲートウェイ反射

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代表的な論文情報

*H. Ogura et al., Interleukin-17 promotes autoimmunity by triggering a positive-feedback loop via interleukin-6 induction. Immunity 29, 628-636 (2008)
*Y. Arima et al., Regional neural activation defines a gateway for autoreactive T cells to cross the blood-brain barrier. Cell 148, 447-457 (2012).
*Y. Arima et al., Brain micro-inflammation at specific vessels dysregulates organ-homeostasis via the activation of a new neural circuit. eLife 6, (2017).
*M. Murakami, D. Kamimura, T. Hirano, Pleiotropy and Specificity: Insights from the Interleukin 6 Family of Cytokines. Immunity 50, 812-831 (2019).
R. Hasebe et al., ATP spreads inflammation to other limbs through crosstalk between sensory neurons and interneurons. The Journal of experimental medicine 219, (2022).