10A.スライスパッチクランプ法(初心者体験コース)

宮田 麻理子 (神経シグナル研究部門)

内容

 近年、パッチクランプ法は既製の機器を組み合わせて簡易に測定できるようになり、細胞の活動性を検出する方法として様々な分野に活用されている。その一方で、電気生理学的手法に馴染んだ事の無い人がパッチクランプの実験を始めることも多いと思う。本コースでは正立顕微鏡やマニュピュレーターを扱ったことのないパッチクランプ実験の初心者を対象に、脳スライス標本の作製における留意点、細胞の選び方、パッチクランプのし方など、スライスパッチクランプ法の基本的技術を習得し、ホールセルパッチクランプが各自でできるようになることを目的とする。また、スライスパッチクランプ法の基本的理論を理解する。実習は囓歯類の大脳皮質、海馬、小脳などのスライス標本を用い、voltage-clamp 法、current-clamp 法で記録し神経細胞とシナプスの基本的性質を観察する。

具体的内容

  1. 脳スライス標本を用いたホールセルパッチクランプ法に必要な基本的機器の構成、組み立て方、ハムノイズのとり方を理解する。
  2. 正立顕微鏡やマニュピュレーターの基本操作を学ぶ。
  3. スライス標本作製における注意点、細胞の選び方、記録電極の取り扱い方など習得する。各自、マウス大脳皮質スライス標本を作製し、ホールセルクランプ記録を行う。また、パッチ内液の選び方を学ぶ。余裕があれば、他の脳部位のスライス標本での記録を試みる。
  4. Voltage-clamp法における容量補正のし方とその意味について習得する。
  5. Current-clamp 法 を用いて、脱分極パルスによるスパイク発火様式を観察する。
  6. 記録細胞の近傍に細胞外電気刺激を与えて興奮性および抑制性シナプス電流を誘発する。これらシナプス電流の電位依存性、薬理学的特性等を観察する。

受講者の習得状況にあわせて、上記の実習を臨機応変に進める予定である。


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