![]() 2009年 生理学研究所 第20回 生理科学実験技術トレーニングコース“生体機能の解明に向けて”-分子・細胞レベルからシステムまで- |
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Last update: 25-May-2009 日程 / 8月24日(月)~8月28日(金)8月24日(月)13:00-講演・研究紹介 8月25日(火)-8月28日(金)実習コース 8月26日(水)18:00-20:00トレーニングコース交流会 8月28日(金)15:00-研究室訪問 講演・研究紹介8月24日(月)午後(岡崎コンファレンスセンターにて)
■ 12:15- 受付開始
実習コース 一覧
実習コース詳細1.「生物試料の位相差低温電子トモグラフィー」
1.位相差電顕の原理とトモグラフィーの原理 2.「免疫電子顕微鏡法」生体のはたらきを知るためには、まずその構造を知り、機能分子がその構造の中でいかなる分布、局在、動態を示すかを知ることが、基本的に重要である。電子 顕微鏡レベルで分子の局在を可視化するためには、特定の分子を選択的に、且つできるだけ高解像度で標識することが必要となる。免疫電子顕微鏡法(免疫電顕 法)とは、超微形態レベルで抗原分子の局在を特異抗体を用いて観察する免疫組織化学法のことである。本コースでは神経科学において高解像度で抗原分子の局在を観察するために広く使われているPre-embedding法やPost-embedding法などの金標識抗体法に加え生理学研究所脳形態解析研究 部門で最近行っている凍結割断レプリカ免疫標識法を紹介する。具体例として、神経伝達物質受容体の局在解析をとりあげるが、受講者が希望すれば任意の分子 について実験を行うことも可能である。 3.「海馬神経初代培養と生細胞イメージング」海馬神経初代培養法は、神経細胞の分化(軸索、樹状突起形成、シナプス発達)やシナプス可塑性を解析するために有用な手法として広く用いられるようになっている。しかし、多様なファクターが培養の成否に関与するため、良質で長期間安定な培養を再現性高くおこなうことが難しいことも多い。本コースでは、”比較的簡便で失敗しにくい”海馬神経初代培養法を体験する。また、初代培養神経細胞への遺伝子導入法および生細胞イメージング法(長時間タイムラプス観察、全反射蛍光顕微鏡観察およびPhotoactivation法を用いた蛋白質動態観察)を体験する。通常の細胞培養の経験があることが望ましい。 4.「タイトル:ジーンターゲティングマウス作製の基礎から応用へ」マウスでは、生殖細胞への分化能を持ったES細胞レベルで、標的遺伝子組み換えを施し、その組み換えES細胞を受精卵へインジェクションすることで、標的遺伝子の配列を自由自在に改変させた個体を作り出すことができる。分子生物学的手法と発生工学的手法を駆使して作製するこの手法は、マウスにおけるジーンターゲティング法と呼ばれており、ヒト疾患の発症メカニズムや脳神経機能の分子メカニズムを解明するのに大いに役立っている。本コースでは、マウスにおける、1) ES細胞培養の基礎、2) 実験動物の取り扱い、3) 受精卵の採取(過剰排卵誘起、卵管・子宮灌流)、4) 受精卵の顕微操作(8-cellインジェクション)、5) 胚移植(胚の子宮内移植)といった発生工学の基本技術について実習する。 5.「in vitro 発現系を用いたイオンチャネル・受容体の機能解析」イオンチャネル・チャネル型受容体・代謝型受容体等の膜機能蛋白を、アフリカツメガエル卵母細胞、HEK293細胞等のin vitro発現系を用いて発現させ、その分子機能と細胞応答を、2本刺し膜電位固定法、パッチクランプ法、細胞内Ca2+イメージング法、FRET法に基づいた分子プローブによるcAMP解析法などにより記録するトレーニングを行う。データの解析法や実験の統合的な進め方についてのトレーニングも行う。少人数制とし、マンツーマンに近い形での指導を行う。電気生理学の初心者、分子生物学の初心者も歓迎し、各自の希望に沿えるよう個別対応も行う。 6.「2光子顕微鏡による神経・分泌細胞の形態と生理機能の可視化解析法」多光子顕微鏡法は生体組織深部のin-vivoイメージングや定量的な蛍光観察、刺激を可能とする新しい手法である。本課題では、蛍光顕微鏡や光学顕微鏡、レーザー安全に関するの基本的な原理、操作についてや基本的な知識を習得するともに、実際に生理学研究所で行われているin-vivoイメージング、細胞内カルシウムや開口放出のイメージング、ケイジド試薬の光活性化などを実習し、光学顕微鏡による微細形態や細胞機能の可視化解析法について理解を深める。参加者の希望によっては、持参のサンプルの観察にも挑戦する。 7.「パッチクランプ法 (パッチクランプ基本法とその応用(バイオ分子センサーパッチクランプ法))」
パッチクランプ法による実際の電流記録と活動電位の関連を基礎から学ぶことができます。神経細胞の膜電位依存性Na+及びK+イオンチャネルの活動をパッチクランプ法で記録します。活動電位の発生機構を理解するために、Hodgkin-Huxleyの式のコンピュータシミュレーションなどを活用します。こうした基本法を修得した後、希望者は以下のような応用技術を学ぶことができます。
8-1.「スライスパッチクランプ法」パッチクランプ実験の初心者を主な対象として、脳スライス標本の作製手順、細胞の選別法、ホールセル記録の基本的手技を指導する。本コースは、パッチクランプ実験の原理を理解するとともに、スライスパッチクランプ法を各自の研究目的に即して実際に適用できるようになることを目標とする。実習では、マウスやラットの脳スライス標本(大脳皮質・小脳・海馬など)を作製し、current clamp法ならびにvoltage clamp法を用いてニューロンの発火活動やシナプス電流を記録する。また、データの解析方法についても概説する。希望者には、記録した細胞を可視化して形態を観察する方法(バイオサイチン染色法)も併せて指導する。染色法も学びたい受講者は、オンライン申し込みフォームの備考欄に「バイオサイチン染色法受講希望」と必ず明記してください。 8-2.「In vivoパッチクランプ法(応用コース)」ラットまたはマウスin vivo標本における脊髄後角細胞からのパッチクランプ記録法の実習を行う。麻酔下に気管内にカニューレを挿入し、人工呼吸下に椎弓切除を行う。露出した腰部脊髄表面よりパッチ電極を刺入し、ブラインド法により後角細胞をホールセルクランプする。In vivoパッチクランプ法は皮膚への痛みなど、生理的な感覚刺激によって誘起されるシナプス応答を記録・解析できるため、鎮痛薬などの薬物の評価のみならず、遺伝子操作動物や種々のモデル動物で観察される行動の異常の成因をシナプスレベルの変化として説明するためにも極めて有用な方法である。また、本手法に用いるin vivoブラインド法は組織深部からの記録にも適しているため、脊髄後角のみならずあらゆる神経系にも応用可能である。 9.「ゼブラフィッシュを用いた神経回路機能の解析」発生分野で重要なモデル生物であるゼブラフィッシュは、神経機能解析の分野でも重要なモデル生物となりつつある。胚期、幼期を通して体がほとんど透明であることであるため、蛍光タンパク質を用いて神経細胞を生きたまま高精度に可視化できることが最大の利点となっている。本トレーニングコースでは、この長所を実際に受講者にふれてもらうことを第一義の目的として以下の実験を行う��(1)DNAコンストラクトの胚への注入と、GFP発現細胞の観察:当方で用意したDNAコンストラクトを一細胞期の胚に注入する。DNAコンストラクトとしては、GFPのみならず、遺伝学的にコードされたカルシウムインディケーターやChR2(下記参照)も用いる。1―3日後に、ラベルされた神経細胞の形態を通常の落斜蛍光顕微鏡および共焦点顕微鏡で観察する。(2)遺伝学的にコードされたカルシウムインディケーター(カメレオ、あるいはG-CaMP)を用いた、神経細胞のラベカルシウムイメージング:カメレオン、あるいはG-CaMPをゼブラフィッシュ神経細胞へ発現させ、幼魚の行動に伴う神経活動を、カルシウムイメージングによってモニターする。(3)ゼブラフィッシュ幼魚の神経細胞からの、仮想遊泳行動中の電気生理学的記録:GFP、および、ChR2でラベルされた脊髄神経細胞からの、仮想遊泳行動中の電気生理学的な記録を紹介する(講師によって行われる)。ChR2(光によって活性化する陽イオンチャネル)発現細胞においての、光によるスパイク誘発を確認する。 10.「摂食・飲水行動発現機構入門」摂食・飲水行動は生命維持に関わる最も基本的な本能行動であり、生体内外の環境変化を中枢神経系においてモニターすることによって惹起されます。本コースでは、これら本能行動の神経回路網を明らかにする研究法の一つとして、マウス視床下部・脳室内に微量の神経伝達物質あるいはホルモンを投与し、摂食行動および飲水行動の発現を観察します。特に本実習においては、1)マウス脳室内あるいは視床下部神経核への微小カニューレの挿入、頭蓋への固定技術、2)無麻酔・非拘束下において、固定した微小カニューレよりホルモン・神経ペプチドを投与する技術、3)マウスの摂食行動や飲水行動ならびに自発運動量を観察・定量化する基礎技術を学習する予定です。また、マウスは実験者及び実験環境に慣れ難いため、行動実験においてはマウスへのストレスを最小限にするなどの注意が特に必要です。そこで、マウスのハンドリング操作を含む、マウス個体を用いた実験法の基本的事項についても併せて学習します。さらに、参加者各自の実験および研究内容について発表・議論をする時間を設け、この技術の応用・適用法を助言・提案いたします。そこで、本コースにおいては、現在この技術を用いて実験を行う可能性がある、あるいは将来この分野の研究に関わりたいと考えている大学院生や若手研究者を歓迎します。 11.「麻酔下動物での感覚応答の多チャンネル記録」麻酔下の動物で神経回路を構成する細胞間の結合関係や神経回路の動的特性、また個々のニューロンの細胞内電位や膜特性を計測する実験は1950年代から微小電極法の開発に伴って急速に進歩し、1960-70年代までは神経生理学における主要な実験技術のひとつとされ、その過程で様々なノウハウが蓄積されてきた。しかし1970年代から無麻酔動物での行動中の神経活動の記録法が発展してきたこと、また単離培養細胞やスライスなどのin vitroでのパッチクランプ法などの実験系がより洗練されてきたこと、さらには機能的MRIなど非侵襲的脳機能イメージング法が発展してくるに従って、麻酔下の動物での電気生理実験は「辛くて大変な割にはあまり大したことがわからない実験」として敬遠され、すっかり下火になってしまっていた感があった。しかし、近年遺伝子改変動物の開発技術が発展し、分子生物学が個体の機能の解明を目指すようになってきたこと、さらには培養細胞やスライスで解析で きることの限界が認識されるに従って、条件を制御した状態で個体機能を解析できる麻酔下個体動物での急性電気生理学的実験の有用性が再認識されるようになってきている。本コースでは麻酔下動物での電気生理実験の最も基本的な実験手技を習得することを目的として、麻酔下ラットにおいて視覚および体性感覚刺激に対する大脳皮質感覚野と中脳上丘におけるフィールド電位や単一ニューロンの応答を記録する手法を実習する。特に麻酔下で動物の全身状態を良好に保つことが実験を成功させる秘訣である。 様々な生体機能の指標に注意を払いながらより良い実験データを取得する方法を学ぶ。 12.「慢性動物実験法入門」覚醒下の実験動物に様々な課題を遂行させ、その際の神経活動を記録・解析するという「慢性実験」は、神経回路が実際に生体内でどのように働いているのかを解明する強力な手段です。慢性実験は主に霊長類を用いた実験手技として発達・洗練されてきたのですが、げっ歯類にも応用可能で、とくに遺伝子改変動物を用いたin vivo記録は、遺伝子と行動との間をつなぐ重要なステップです。また、慢性実験は覚醒下で行えるため、麻酔の影響を排除することや、繰り返し同一の実験動物を使うことが可能です。さらに従来の急性実験の手法を流用し、様々な脳領域に刺激電極を留置し電気生理学的に神経回路を解析することや、脳局所への薬物注入による行動変化なども観察することができます。しかし、このような実験技術は各研究室内で手から手へと受け継がれることが多く、なかなか体系だって習得する機会が少ないのが現状です。本コースでは、このような慢性実験を始めたばかり、あるいはこれから始めようとする研究者や大学院生を対象に、実験動物からの神経活動記録、金属電極作成、基本的なハードウエアやソフトウエアなどの周辺技術を題材に実習を行います。 13.「視知覚の脳内メカニズムの実験的解析」視知覚の神経機構を明らかにするためには、ある視知覚が生じている時に大脳皮質視覚野においてどのようなニューロン活動が生じ、視知覚の変化に伴ってこのニューロン活動がどのように変化するのかを調べる必要があります。本コースではこのような研究の考え方を学び、研究を行う基礎となる脳活動計測(電気生理およびfMRI計測)実験および心理物理実験の実習を行います。脳活動計測実験では、当研究室で行われている微小電極法およびfMRIを用いてサルの視覚皮質から脳活動を記録する実験を体験することにより、実験目的の設定、課題や刺激のデザイン、記録に必要なシステムについて理解を深めます。一方、知覚そのものを客観的に測定する方法を理解するために、パソコン上に作成し呈示する視覚刺激を用いた心理物理実験を体験し、さらに知覚とニューロン活動を対応付ける方法について学びます。本コースは視知覚の研究にしぼって第一線の研究を初心者に分かりやすく体験してもらうことを目的としています。将来、この分野の研究に関わりたいと考えている大学院 生、若手研究者を歓迎します。 14.「脳磁図によるヒト脳機能研究の基礎」脳磁図は、脳波や機能的磁気共鳴画像とともにヒト脳機能研究において重要かつ大変有用な方法として広く認められています。しかしどの方法にも必ず一長一短 があり、最適な目的に使われなければ有用性を発揮できないばかりか間違った結論を導くことにもつながりかねません。本コースでは、脳磁図の測定原理の講義 を行い、実験の立案からデータの取得、解析方法まで体験していただきます。今後脳磁図を使う受講者は、脳磁図で何ができるか、わかるかを実感し、今後の研 究に生かせることでしょう。また、脳波や機能的磁気共鳴画像との違いが鮮明になり、個々の方法論の正当な評価をすることができるようになるでしょう。 15.「脳機能画像解析入門 (ヒト脳機能マッピングにおけるデータ解析入門)」機能的磁気共鳴画像法(functional MRI)に代表される脳機能 画像法の発達により、人体を傷つけることなく脳活動を可視化出来るようになった。得られたデータの解析には画像処理や統計学的手 法の応用が不可欠であるが、SPMを代表とする解析パッケージ が容易に手に入ることもあり、その中身を理解しなくとも簡単に結 果が得られる状況にある。データ処理手法は近年ますます高度化・ 複雑化し、初学者が独学で理解するには難しい面もあるが、誤った取扱い (安直な実験課題作成や不適切な解析、誤った解釈など)は、 真実からかけ離れた結論を導き出しかねず、注意が必要である。本 コースは、脳機能画像解析の初級編と位置づけ、主に画像データの 前処理および統計解析(個人解析・集団解析)の理論と実際について、機能的MRIデータを教材とした講義と実習を行う(MRI を使った撮像実習は行わない)。これらを通して脳機能画像法のもつ可能性とピットホールについてバランスのとれた理解を深められるようにする。 16-1.「生理学実験のための電気回路・機械工作・プログラミング(1) (生体アンプとバスチェンバーの作製)」本実習コースは、電気回路工作・機械工作実習を通して研究を進める上での「もの作り」の大切さを知ることを目的としています。電気回路工作では、生体アンプの作製を通して回路設計の基本、回路図の読み方、はんだ付け技術の習得を目指します。また生体信号の計測をLabVIEWを用いて体験し、計測・制御の理解を深めます。機械工作では、アクリル製バスチェンバーの作製を通して機械設計のポイント、材料の選択、加工手順、縦フライス、旋盤、ボール盤等の工作機械の使用法を習得します。本実習コースは、一人の方が最初から完成まですべて行う、より実践型の実習であることを特長としています。 16-2.「生理学実験のための電気回路・機械工作・プログラミング(2) (C言語によるPICプログラミング)」種々の実験の制御や計測に応用可能なPIC(Peripheral Interface Controller)を取り上げ,PICを応用するためのハードウェアとソフトウェアの基礎を学びます。ハードウェア実習ではPIC本体の構成と機能ならびに周辺部品の概要を学び,「PICマイコン学習キット」の作製を行います。ソフトウェア実習では,C言語のプログラミングの基礎を学習し,PICを制御するためのプログラムを作成します。作成したプログラムは,PICライタにて書き込みを行い,先に作製した「PICマイコン学習キット」を使って動作確認を行います。このような実践型の実習を通し,生理学実験に必要となる実験機器の製作技術の基本と応用力の養成を目的とします。 |
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