2 大学共同利用機関法人 自然科学研究機構 年度計画(平成20年度) 抜粋

全文は、自然科学研究機構ウェブサイトの掲載。 http://www.nins.jp/pdf/h20keikaku.pdf

Ⅰ 研究機構の教育研究等の質の向上に関する目標を達成するためにとるべき措置
1 研究に関する目標を達成するための措置

(1)研究水準及び研究の成果等に関する目標を達成するための措置

大学共同利用機関法人自然科学研究機構(以下「本機構」という。)は、天文学、物質科学、エネルギー科学、生命科学等(以下「各分野」という。)、自然科学分野における研究所等(本機構が設置する大学共同利用機関をいう。以下同じ。)の役割と機能を一層充実させる。

また、各分野間の連携を積極的に行い、学際的・国際的研究拠点形成を目指す。

研究所等で得られた研究成果を、国内外の学会等において積極的に公表をする。

研究所等に置かれた運営会議は、共同研究計画に関する事項、研究者人事等に関する事項、組織の改編に関する事項及びその他研究所等に関する重要事項で研究所長等が必要とする事項について諮問を受け、答申する。

各分野において研究の進展、公表の状況、研究者等の大学や研究機関との交流の状況等をまとめ、研究水準・成果の検証を行うため、外部委員を含む委員会で自己点検を行う。

各分野の特記事項を以下に示す。

(中略)

(生理学研究所)

分子生物学、細胞生理学、生物物理学、神経解剖学、神経生理学、神経発生学、感覚情報生理学、認知行動学、病態生理学等広範な生理学分野及び関連分野において、ヒト及び動物の生体の機能とメカニズムを解明するため、世界的に高水準な研究基盤を発展強化するとともに、共同研究等により全国の関連研究者との連携を一層強化する。

① 機能的磁気共鳴画像診断装置(fMRI)や脳磁計等の脳イメージング技術を用いて、霊長類の高次脳機能の発達や機能代償に関わる研究及びヒトの社会的認知能力(social cognition)の発達過程に関わる研究を進める。遺伝子改変動物を用いた行動・代謝機能の研究を進める。

② 位相差電子顕微鏡等の超分子機能解析技術の向上を図る。バイオ分子センサー等の超分子的メカニズムの研究を推進する。

③ 生体恒常性維持のメカニズム及びその発達、破綻による病態等の分子・細胞メカニズムに関する基盤的研究を進める。

④ 大脳皮質、大脳基底核、視床等における神経回路の機能、グリアの働き等を、多面的に解析する。てんかん等の神経疾患モデル動物の病態解析を進める。

(中略)

(2)研究実施体制等の整備に関する目標を達成するための措置

① 研究連携委員会及び研究連携室において、研究所等間の研究連携及び研究交流の促進を図る。また、研究連携室の主導で、機構内分野間の連携による新分野形成に向けた活動を実施するとともに、これまでの進展状況の検証を行い、更なる活動の強化を図る。

② 知的財産室及び知的財産委員会において、知的財産の創出・取得・管理・活用を積極的に行う。

③ 各研究所等は、引き続き自己点検、外部評価を実施し、研究の質の向上に努める。

④ 各研究所等は、ポストドクトラル・フェローシップを維持して、引き続き若手研究者の育成に努める。

⑤ 他研究機関、大学、企業との研究者交流等の促進のため、分野間連携に係るシンポジウム等、引き続き広く開放された研究会等を企画・実施する。

⑥ 各分野間の連携を目指して、岡崎統合バイオサイエンスセンターでは、膜蛋白質研究、環境物質研究、バイオイメージング手法開発などを中心に統合バイオサイエンス研究を発展させ、各研究所間及び他研究機関との研究連携を引き続き強化する。

各分野の特記事項を以下に示す。

(中略)

(生理学研究所)

① 新領域開拓を目指す討論の場として生理学研究所研究会等を開催する。顕著な成果をあげた若手研究者に、研究推進のための支援を行う。

② 発展が期待される研究テーマを、広く公募して一般共同研究として設定する。計画共同研究として、新たに「位相差低温電子顕微鏡の医学・生物学応用」、「多光子励起法を用いた細胞機能・形態の可視化解析」を開始する。「バイオ分子センサー」事業を強力に推進し、その成果を発信する。

③ 改組により脳機能計測・支援センターと情報処理・発信センターを設置する。脳科学推進のための多次元共同脳科学推進センターを新たに設置する。行動・代謝分子解析センターの充実を継続して行う。

(中略)

2 共同利用等に関する目標を達成するための措置
(1)共同利用等の内容・水準に関する目標を達成するための措置

① 引き続き、共同利用・共同研究(以下「共同利用等」という。)の内容や水準を向上させるための基本的方策(募集の内容、周知の方法、フィードバックシステムを含む)を策定し、具体的運営に関して、運営会議に諮りつつ推進する。

② 大型の装置や施設を活用した共同利用等を推進する。また、共同研究の相手方機関の設備・研究環境も活用できるよう、必要に応じて本機構研究者を派遣する等、双方向性のある研究体制の整備を更に進め、実施する。

③ 引き続き、共同利用公募に関して、必要分野ごとの審査委員会の審査によりテーマを採択する。共同利用等の運用全般については、外部委員を含む委員会で検証し、今後の運用に反映させる。

④ 国際戦略本部及び各研究所等において、各分野の国際的窓口機能(国立天文台の研究連携室など)を向上させ、国際共同研究及び国際協定に基づいた様々な研究活動の積極的な展開を図るとともに、成果の分析等によって、国際協力活動を更に強化する。

⑤ 共同利用等の実施、募集、成果等について、ホームページ、大学その他研究機関への通知等により情報公開を積極的に行い、新たな利用者や研究者の発掘に努め、利用者の便宜を更に図る。

⑥ 情報ネットワーク等インフラストラクチャーの改善を行い、引き続き共同利用等の環境整備を行う。更に、分子科学研究所においては、「化学系研究設備有効活用ネットワーク」の各地域拠点・全国拠点の組織化に向けた活動を引き続き行う。また、それを運用する管理システムの改善を進める。

⑦ 各分野の研究者コミュニティの参画を得て、引き続き利用者の要望を一層取り入れた共同利用等の計画の具体的検討を行う。

⑧ 分野間連携における学際的・国際的研究拠点の形成に向けた共同利用等を、引き続き実施するとともに、国内外との共同利用等を通じて学際的な研究を更に推進する。

⑨ 引き続き、高度な実験装置・観測装置の開発整備、増強、改良を進め、共同利用等に提供する。

各分野の特記事項を以下に示す。

(中略)

(生理学研究所)

① 動物実験の更なる適正化を図るために、動物実験管理の体制を整備する。

② 計画共同研究の一環としてトランスジェニックラット、遺伝子ノックアウトマウスを作製する。新しいノックアウトラットの作製法等の技術開発を継続して行う。

③ ニホンザルのナショナルバイオリソースプロジェクト(NBR)事業を更に強力に推進するために、NBR推進室の体制強化を図る。NBR事業においてニホンザルの供給を本格化させるとともに、ニホンザル供給有償化に関す る問題点の検討を行う。

(2)共同利用等の実施体制等に関する目標を達成するための措置

本機構全体として、活発な共同利用等の実施体制に関して以下のような措置をする。

① 共同利用等に供するための機器開発を行える環境を引き続き整備し、大学・学会等と広く協力して、共同利用等の計画の採択、実施体制の検討を行うために、外部委員を含んだ委員会において、資源配分の公平性と透明性の向上を図る。

② 共同利用等の計画の採択の際に萌芽的研究の推進の観点も充分考慮する。

③ 共同利用等の成果は、引き続き学術雑誌、出版物、ホームページ等の多様なメディアを活用して公表する。

④ 引き続き、共同利用等の外部評価を行うとともに、その評価結果を、今後の運用に反映させる。

⑤ 技術職員の技術力向上のため、引き続き研修等の充実を図る。また、自然科学研究機構技術研究会の充実を図る。

⑥ 特別共同利用研究員等若手研究者に対する研究支援を強化する。

⑦ 共同利用者用の宿泊施設について、引き続き付帯設備等の充実を検討し利便性の向上を図る。

⑧ 国内外の共同研究者に対して実験・観測データの公開を引き続き進める。

各分野の特記事項を以下に示す。

(中略)

3 教育に関する目標を達成するための措置
(1)大学院への教育協力に関する目標を達成するための措置

① 総合研究大学院大学の教育に積極的に参加するなど、大学院教育を実施する。総合研究大学院大学の5年一貫制大学院教育等によって、自然科学の広い視野と知識を備えた若手研究者の育成を推進する。また、大学院教育に関する検討会において、大学院教育を一層充実させるための検討を行う。

② 8専攻の教員約330名が学生約170名に対し、講義、単位認定、学位授与に加えて、各種 セミナーによる総合的大学院教育を行う。

③ 東京大学大学院理学系研究科、名古屋大学大学院理学研究科、同工学研究科、北海道大学大学院工学研究科、京都大学大学院理学研究科、富山大学大学院理工学研究科等との間で、緊密な連携のもとに大学院教育を行う。

④ 各研究所等の研究教育職員は、要請に応じて特別共同利用研究員として学生を受託し、大学院教育を行う。(平成20年度は、100名程度)

⑤ 約160名の大学院生をリサーチアシスタントとして採用し、高度な研究能力を備えた研究者の育成を行う。

⑥ 大学及び総合研究大学院大学の他専攻との単位互換制度を継続する。

⑦ カウンセリングを相談窓口で実施する。

(2)人材養成に関する目標を達成するための措置

本機構は以下のように、各種ポストドクトラル・フェローシップを整備し、若手研究者の育成と流動化の促進に一層努める。

① ポストドクトラルフェローの進路先について調査する。

② ホームページなどで求人(公募)一覧を掲載するなど、広い分野から人材発掘を可能にするように取り組む。

③ 引き続き、外部資金獲得に努めるとともに、大学院生・博士号取得者の支援を充実させる。

各分野の特記事項を以下に示す。

(中略)

(生理学研究所)

大学院生を含む若手研究者の育成のため、生理科学実験技術トレーニングコースを開催する。

(中略)

4 その他の目標を達成するための措置
(1)社会との連携、国際交流等に関する目標を達成するための措置

以下のように、社会との連携や国際協力等に関して具体的な計画を推進する。

① 本機構及び各研究所等のホームページ、広報誌等を更に充実するとともに、一般市民向けのシンポジウムを開催して、本機構の活動内容や研究成果等を広く社会に発信する。 国立天文台では、国連で制定された世界天文年(IYA2009)事業の支援を行う。

② 知的財産室、知的財産委員会及び利益相反委員会において、知的財産・利益相反等に関する理解を深めるための活動を行い、産学官連携を推進する。

③ 各種審議会や学会・地方公共団体の委員会等に積極的に参加する。講演会、ホームページ、各種資料等を通じて広く一般社会への情報発信に努める。情報発信の状況及び効果についても調査を行う。

④ 一般市民向けの講演会を開催するとともに、スーパーサイエンスハイスクール及びサイエンスパートナーシッププロジェクトの取り組み等に協力する。また、教員、各分野の専門家の生涯教育に貢献する。

⑤ 研究成果は学術雑誌に論文として発表するとともに、様々な情報発信媒体(ホームページ、パンフレット、解説資料等)を通じて積極的に公表する。また、核融合科学研究所では、機関リポジトリを構築し、公開する。

⑥ 研究所等間の連携を考慮しつつ、国際シンポジウム・国内研究会を積極的に実施し、国内研究者の研究活動を更に支援する。

⑦ 海外の国際的な中核研究機関との連携を強化するとともに、科学技術協力事業、二国間、多国間事業等、いろいろなレベル・規模の国際共同研究事業を引き続き推進する。その状況を調査し年度報告として公表する。

⑧ 海外研究者や留学生等の受入れに関する情報の英語化等、広報活動を積極的に行うとともに、生活環境の整備及び安全対策の充実を図る。また、受入れ担当者向けマニュアルを充実させる。

(2)その他

① 他の大学共同利用機関法人及び総合研究大学院大学と連携し、アクセス可能な電子ジャーナル 利用を推進させ、各分野の情報センターとしての機能を拡充する。

② 情報セキュリティに考慮しつつ、本機構と研究所等間のネットワーク等の効率的運用を推進する。

(後略)