1. 共同研究および共同利用研究による顕著な業績

  1. Ishihara K, Yamamoto T, Kubo, Y (2009) Heteromeric assembly of inward rectifier channel subunit Kir2.1 with Kir3.1 and with Kir3.4. Biochem Biophys Res Commun 380:832-837.
    佐賀医科大学の石原(柳)圭子先生との共同研究で、内向き整流性K+チャネルの異なるサブファミリーに属するサブユニット Kir2.1と Kir3.4 が、これまでの理解に反し、分子会合することを免疫共沈実験および免疫組織化学実験により明らかにした。
  2. Kurogi M, Nagatomo K, Kubo Y, Saitoh, O (2009) Effects of spinophilin on the function of RGS8 regulating signals from M2 and M3-mAChRs. Neuroreport 20:1134-1139.
    長浜バイオ大学の斉藤修教授との共同研究で、G蛋白質シグナリング調節蛋白RGS8 によるM2ムスカリニック受容体応答の抑制作用を、spinophilin蛋白が増強することを明らかにした。
  3. Itoh H, Sakaguchi T, Ding WG, Watanabe E, Watanabe I, Nishio Y, Makiyama T, Ohno S, Akao M, Higashi Y, Zenda N, Kubota T, Mori C, Okajima K, Haruna T, Miyamoto A, Kawamura M, Ishida K, Nagaoka I, Oka Y, Nakazawa Y, Yao T, Jo H, Sugimoto Y, Ashihara T, Hayashi H, Ito M, Imoto K, Matsuura H, Horie M (2009) Latent genetic backgrounds and molecular pathogenesis in drug-induced long-QT syndrome. Circ Arrhythm Electrophysiol 2:511-523.
    滋賀医科大学 伊藤英樹博士、堀江稔教授との共同研究であり、薬剤により誘発されるQT延長症候群患者の遺伝的背景を検討し、遺伝子異常のあるイオンチャネルを発現させて機能を解析した。 さらにチャネル機能のシミュレーションから薬剤誘発性のQT延長症候群は、潜在性のQT延長症候群と位置づけられることを示した。生理学研究所は、イオンチャネルの計測技術とともにシミュレーションプログラムの開発面において貢献した。
  4. Nakato E, Otsuka Y, Kanazawa S, Yamaguchi M, Watanabe S, Kakigi R (2009) When do infants differentiate profile face from frontal face? A near-infrared spectroscopic study. Hum Brain Mapp 30:462-472.
    この論文は中央大学文学部との共同研究で、近赤外線分光法(NIRS)を用いて、乳児の顔認知に関する脳活動を解析したものである。正面顔を見極める能力は5ヶ月頃には確実に行われるが、横顔を見極める能力は8ヶ月頃にならなければ難しい事がわかった。
  5. Satou C, Kimura Y, Kohashi T, Horikawa K, Takeda H, Oda Y, Higashijima S (2009) Functional role of a specialized class of spinal commissural inhibitory neurons during fast escapes in zebrafish. J Neurosci 29:6780-6793.
    名古屋大学 小田洋一教授、東京大学 武田洋幸教授との共同研究で、マウスナー細胞から直接の電気シナプス入力を受ける脊髄交差型抑制性ニューロンの機能解析を、ゼブラフィッシュを用いて行った。解剖学的、電気生理学的、行動学的に詳細に解析することにより、それらが逃避行動において重要な役割を果たしていることを明らかにした。
  6. Sugiyama M, Sakaue-Sawano A, Iimura T, Fukami K, Kitaguchi T, Kawakami K, Okamoto H, Higashijima S, Miyawaki A (2009). Illuminating Cell-Cycle Progression in the Developing Zebrafish Embryo. Proc Natl Acad Sci USA 106:20812-20817.
    理化学研究所 宮脇敦史グループディレクターとの共同研究である。Fucci(Fluorescent, ubiquitination-based cell cycle indicator)は、細胞周期をマークする蛍光プローブである。オリジナルバージョンのFucciは、哺乳動物用にデザインされており、ゼブラフィッシュではうまく機能しなかった。本研究では、ゼブラフィッシュバージョンのFucciを作製した。そして、それらを発現するトランスジェニックフィッシュを作製し、発生途上のゼブラフィッシュ胚の個々の細胞の細胞周期を追跡することに成功した。ゼブラフィッシュFucciは、形態形成過程での細胞周期進行を調べるきわめて有力なツールとなることが期待される。
  7. Higo N, Nishimura Y, Murata Y, Oishi T, Saito K, Takahashi M, Tsuboi F, Isa T (2009) Increased expression of the growth-associated protein-43 gene in the sensorimotor cortex of the macaque monkey after lesioning of the lateral corticospinal tract. J Comp Neurol 516:493-506.
    随意運動制御の主たる出力経路である皮質脊髄路を頚髄C4/C5レベルで切断したサルは訓練によって数週から1 -- 2ヶ月以内に手指の精密把持が回復する。これまで、PETによる脳機能イメージングによってその際の大脳皮質の活動の変化を解析し、損傷反対側の一次運動野(M1)の他に同側の一次運動野や両側の運動前野腹側部(PMv)が機能回復に関与することを明らかにしてきた。今回、損傷後の回復過程にあるサルの大脳皮質において神経突起の伸展などの可塑的な変化に関連するタンパク質であるGAP-43のmRNAの発現をin-situ hybridization法によって解析したところ、両側のM1、一次体性感覚野(S1)およびPMvのII/III層及び一次運動野のV層の大型錐体細胞で発現が上昇していることが明らかになった。以上の結果はPETの結果と一致して、M1-S1-PMvを結ぶ連合線維の神経回路とM1からの出力経路において可塑的な変化が起きていることを示唆する。
  8. Okada K, Toyama K, Inoue Y, Isa T, Kobayashi Y (2009) Different pedunculopontine tegmental neurons signal predicted and actual task rewards. J Neurosci 29:4858-4870.
    近年の研究から、中脳のドーパミン細胞は報酬予測誤差を符合し、強化学習に関与するとされているが、どのような入力によってこのような信号が精製するかは明らかでなかった。そこで我々はドーパミン細胞に興奮性の入力を送る脚橋被蓋核の神経活動を視覚誘導性サッケード課題を遂行しているサルにおいて記録・解析したところ、報酬期待を符合するニューロンと報酬そのものを符合する2種類のニューロン群の存在が明らかになった。この結果はドーパミン細胞での報酬予測誤差信号生成過程を明らかにした画期的な成果である。
  9. Fujii M, Kanematsu T, Ishibashi H, Fukami K, Takenawa T, Nakayama KI, Moss SJ, Nabekura J, Hirata M. Phospholipase C-related but catalytically inactive protein is required for insulin-induced cell surface expression of γ-aminobutyric acid type A receptors. J Biol Chem (in press).
    インスリンによるGABAA受容体の細胞膜への挿入、これに伴うGABAA電流の増大にはphospholipase C-related but catalytically inactive protein (PRIP)が関与していることをPRIIP1とPRIP2のダブルノックアウトマウスを用いて明らかにした。インスリンによるGABAA受容体のリン酸化、およびAKTのGABAA受容体へのリクルートにもPRIPが関与していることを明らかにした。
  10. Shiuchi T, Haque MS, Okamoto S, Inoue T, Kageyama H, Lee S, Toda C, Suzuki A, Bachman ES, Kim YB, Sakurai T, Yanagisawa M, Shioda S, Imoto K, Minokoshi Y (2009). Hypothalamic orexin stimulates feeding-associated glucose utilization in skeletal muscle via sympathetic nervous system. Cell Metabolism 10:466-480.
    視床下部オレキシンが視床下部腹内核の神経細胞を活性化し、交感神経を介して骨格筋でのグルコース利用を選択的に高めることを明らかにした。さらにこの調節機構が、味覚刺激とその期待感によって活性化されること明らかにした。本研究は、摂食時における骨格筋のグルコース代謝調節作用に、インスリンだけでなく視床下部並びに視床下部神経ペプチドオレキシンを関与することを初めて明らかにした論文である。
  11. Noguchi Y, Hirabayashi T, Katori S, Kawamura Y, Sanbo M, Hirabayashi M, Kiyonari H, Nakao K, Uchimura A, Yagi T (2009) Total expression and dual gene-regulatory mechanisms maintained in deletions and duplications of the Protocadherin-alpha cluster. J Biol Chem 284:32002-32014.
    大阪大学八木教授との共同利用研究で、クラスター型プロトカドヘリンであるプロトカドヘリンαファミリーの多様性の意義を明らかにするために、同遺伝子の可変領域エクソン数を増減させ、発現する分子種数を変化させた種々の遺伝子ターゲティングマウスを作製した。これらのマウスは解剖学的な異常は観察されなかったが、発現する分子種数が異なっても、ファミリー全体の総発現量に変化はなかったことから同遺伝子には発現量を一定に保つための発現制御機構が存在することが示唆された。
  12. Uchimura A, Hidaka Y, Hirabayashi T, Hirabayashi M, Yagi T (2009) DNA polymerase δ is required for early mammalian embryogenesis. PLoSONE 4: e4184. 大阪大学八木教授との共同利用研究で、DNAポリメラーゼδ遺伝子ノックアウトマウスおよび同分子の複製時における校正活性を失わせることで、世代を経るごとに遺伝子に変異が蓄積する遺伝子ターゲティングマウスを作製した。ノックアウトマウスの解析結果からDNAポリメラーゼδ遺伝子は初期発生において必須な分子であることが明らかになった。また、遺伝子変異が蓄積するマウスでは多くの個体で胸腺、尾などに腫瘍が認められた。
  13. Tanaka H, Ma J, Tanaka K, Takao K, Komada M, Tanda, K, Suzukki A, Ishibashi T, Baba H, Isa T, Shigemoto R, Ono K, Miyakawa T, Ikenaka, K (2009) Mice with altered myelin proteolipid protein gene expression display cognitive deficits accompanied by abnormal neuron-glia interactions and decreased conduction velocities. J Neurosci 29:8363-8371.
    生理学研究所池中一裕教授との共同研究で、脳の神経細胞ではないグリア細胞という神経細胞以外の細胞のわずかな異常が、神経の電気信号の伝わり方を遅くさせ、それが統合失調症で見られるような認知障害の原因になっているということを明らかにした。【ここでの共同研究に含まれないのでは?】