3 大学共同利用機関法人自然科学研究機構年度計画(平成22年度)抜粋
I 研究機構の教育研究等の質の向上に関する目標を達成するためにとるべき措置
1 研究に関する目標を達成するための措置
(1) 研究水準及び研究の成果等に関する目標を達成するための措置
- ① 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(以下「本機構」という。)は、天文学、核融合科学、分子科学、基礎生物学、生理学の各分野(以下「各分野」という。)における拠点的研究機関(以下「機関」という。)において、以下の各計画のように、国際的に高い水準の学術研究を進める。
- ② 岡崎統合バイオサイエンスセンターが中心となり、基礎生物学研究所、生理学研究所、分子科学研究所と連携を図りつつ、環境分子の受容・応答機構、高次生命現象の機能解析、生命機能分子の探索等に関する研究を行う。
- ③ ブレインサイエンス研究分野においては、国内の脳研究者コミュニティにより、今後の我が国の脳研究のあり方について討論する。また、公開シンポジウムを開催し、将来を見据えた国際的に高い水準の脳研究について討議する。更に、我が国の科学行政への提言のための研究動向の調査を行う。
- ④ イメージングサイエンス研究分野においては、各機関の持つイメージングデータを持ち寄り、それを4次元イメージ化する研究をスタートさせる。また、限られた情報を基にイメージを再構成する汎用性の高い技法の開発にも着手する。
各分野の特記事項を以下に示す。
(中略)
(生理学研究所)
- ① 生体機能を担う分子の動的構造と動作メカニズム、生体恒常性維持の分子・細胞メカニズム及び発達、破綻による病態等関する研究を進める。
- ② 脳神経系における情報処理機構の分子・細胞的基盤及び病態への関わりに関する研究を行う。
- ③ 痛覚・視覚等の感覚・認知や四肢・眼球の運動制御等の脳内機構に関する研究、及び判断・感情や社会的行動等の神経科学的基盤を明らかにする研究を進める。特に機能的磁気共鳴画像装置(fMRI)2台の同時計測による対人関係における脳機能等の研究を開始する。また、脳神経系障害や神経疾患の病態と代償・回復メカニズムに関する研究を進める。
- ④ 分子・細胞から個体にいたる各レベルでの生体機能の可視化を進める。また、可視化のためのプローブ作成等、技術開発・改良を行う。また、各レベルのデータの統合に向けての方策を検討する。
(中略)
(2)研究実施体制等の整備に関する目標を達成するための措置
- ① 個々の研究者が応募できる研究推進経費の充実、及び研究進捗状況の審査を踏まえた若手研究者への経費の重点配分など、効果的な経費の配分を行う。また、既存の専門性の高い研究を行う組織に加え、生物機能解析センター及びモデル生物研究センターを整備するなど、学術研究等の個人の自由な発想に基づく研究を進展させる。
- ② 大型研究プロジェクトに関しては、本中期目標・計画の達成に向けて既存の組織を見直し、各機関内の柔軟な研究連携が可能となる組織を構築する。
- ③ ブレインサイエンス分野では、国内の脳研究者コミュニティの中から客員教授及び運営委員を選び、教授会議及び運営会議を組織する。また、分科会を作り霊長類を中心とする研究センター設立について検討を始める。
- ④ イメージングサイエンス分野では、客員教授を中心として、各機関の教員が協力し、非常勤研究員が加わって自然現象のイメージング化の研究を推進する体制を構築する。
2 共同利用・共同研究に関する目標を達成するための措置
(1)共同利用・共同研究の内容・水準に関する目標を達成するための措置
- ① 各研究施設の高性能化・高機能化を図り、より国際的に高い水準の共同利用・共同研究を進める。
- ② 各機関において、その研究分野に応じた学術研究ネットワークの中核拠点としての共同利用・共同研究を実施する。
(中略)
各分野の特記事項を以下に示す。
(中略)
(生理学研究所)
脳研究ネットワークの拠点として、戦略的プロジェクト等の研究成果が広く研究者コミュニティで利用できる研究環境を整備する。分子から個体にいたる各レベルのイメージング技術を用いた共同利用研究を発展させる。サバティカル制度等を利用した長期滞在型の共同研究を行うための設備の充実化を図る。若手研究者を対象とした全国的な連携育成システム形成に向けての検討を行う。
ナショナルバイオリソースプロジェクト(NBRP)の一環として、ニホンザルの安定した供給を進める。供給の有償化を施行し、長期的安定供給体制の整備を検討する。供給ニホンザルの高品質化のために、諸検査結果等のデータベース化を進める。計画共同研究として遺伝子改変ラット・マウスの作製と供給を行う。ラット遺伝子改変技術の開発を継続して行う。
(中略)
(2)研究実施体制等の整備に関する目標を達成するための措置
(生理学研究所関係項目のみ)
- ④ 生理学研究所では、行動・代謝分子解析センターに、新たに代謝生理解析室を設置する。サバティカル制度等を利用した長期滞在型の共同研究を行うための制度の充実化を図る。
- ⑨ 生理学研究所では、日米科学技術協力事業「脳研究」分野の事業を継続し、研究交流の促進を図る。
- ⑲ 生理学研究所では、脳科学の研究領域における戦略的プロジェクト等の研究成果が、広く研究者コミュニティで利用できる体制を整備する。
3 教育に関する目標を達成するための措置
(1)大学院への教育協力に関する目標を達成するための措置
- ① 高度な研究設備と国際的な研究環境を活かした研究を通じて、自然科学の広い視野と知識を備えた研究者を育成する。
- ② 総合研究大学院大学の教育に積極的に参加し、国立天文台、核融合科学研究所、分子科学研究所において「組織的な大学院教育改革推進プログラム」事業を実施するなど、大学共同利用機関としての機能を生かした特色ある大学院教育を実施する。また、総合研究大学院大学に入学した大学院生に、指導体制を早期に周知させるためのガイダンスを充実させ、他専攻と協力して実施する合同セミナーを引き続き実施する。
- ③ 全国の国公私立大学より特別共同利用研究員を受け入れ、大学院教育に協力する。また、東京大学大学院、名古屋大学大学院等との間で、単位取得互換制度を備えた教育協力の実施を図る。
(2)人材養成に関する目標を達成するための措置
- ① 優秀な若手研究者を、国内外を問わず公募して、博士研究員として受入れを行う。また、リサーチアシスタント(RA)制度を見直すことで優れた若手研究者の養成を図る。
更に、研究者としての質的向上を図るため、成果発表や研究者交流のための旅費支援制度を充実する。 分子科学若手育成基金等により、優れた総合研究大学院大学院生を支援する。 - ② 各機関において、総合研究大学院大学の事業「夏の体験入学」及び「アジア冬の学校」を実施するとともに、総合研究大学院大学大学院生を対象とした「すばる望遠鏡観測実習」、「電波天文観測実習」、並びに大学院生一般を対象とした電波天文、数値シミュレーションなどのスクール(国立天文台)、国内研究者を対象にした「バイオインフォマティックストレーニングコース」(基礎生物学研究所)、「生理科学実験技術トレーニングコース」及び若手研究者を対象とした全国的な連携育成システムの形成に向けたレクチャーコース(生理学研究所)、日本学術振興会「アジア研究教育拠点」事業のセミナー(分子科学研究所)等を実施し、大学院生を含む国内外の若手研究者の育成に取り組む。
また、日本学術振興会の優秀若手研究者海外派遣事業等について、若手研究者の積極的な応募を奨励する。
4 その他の目標を達成するための措置
(1)社会との連携や社会貢献に関する目標を達成するための措置
(生理学研究所関連項目のみ)
- ④ 生理学研究所では、研究成果を積極的に社会に発信する。「せいりけん市民講座」の開催及び「せいりけんニュース」の発行を継続して行う。
- ⑥ 出前授業やスーパーサイエンスハイスクール事業等の理科教育に協力するとともに、自治体、公民館や医師会等との協力による市民講座やセミナー、科学イベントを通じて科学の普及活動を実施する。
また、国立天文台では、展示館の共同運営を通じて、天文学の広報普及活動を進めるとともに、ハワイ観測所では、文化の大使として地元との交流を推進する。
更に、基礎生物学研究所では、生物学オリンピック日本代表学生の特別教育を実施する。 - ⑦ 学術成果を社会に還元するため、研究成果・知的財産等の創出、管理、普及を行う。民間等との共同研究や受託研究等を適切に受け入れ、その成果の特許出願及び権利活用を行う。
また、特許収支を考慮した登録特許の管理(評価・PR・維持)システムの構築を進める。
(2)国際化に関する目標を達成するための措置
- ① 我が国の自然科学分野における国際的学術拠点として、機構長のリーダーシップの下、国際戦略本部を中心に、欧州分子生物学研究所(EMBL)やプリンストン大学(米国)等との国際的な共同研究を積極的に実施する。
- ② 国立天文台におけるすばる国際研究集会、核融合科学研究所における国際土岐コンファレンス、基礎生物学研究所における基生研コンファレンス、生物学国際高等コンファレンス(OBC)、マックス・プランク植物育種学研究所(MPIZ)との学術交流シンポジウム、生理学研究所における生理研国際シンポジウム、及び分子科学研究所における分子科学に関する国際研究集会(岡崎コンファレンス)等を開催するとともに、Webページにおいて英語による研究者の採用情報を掲載し、海外からの応募を可能とする方策の充実を図る。
II 業務運営の改善及び効率化に関する目標を達成するためにとるべき措置
1 組織運営の改善に関する目標を達成するための措置
- ① 機構長のリーダーシップの下、役員会や外部委員を含む経営協議会、教育研究評議会等を開催して、研究の促進に向けた不断の点検を行う。
- ② 各機関の運営会議等において、研究計画や共同利用・共同研究の重要事項について、外部の学識経験者からの助言や意見を踏まえ、核融合科学研究所及び基礎生物学研究所における研究組織の再編等、各分野の特徴を踏まえた業務の改善を実施して効率的な運営を進める。また、核融合科学研究所及び分子科学研究所では、豊富な学識経験者を顧問に任命し、助言を受ける。
- ③ 機構長のリーダーシップの下、各機関が一体となって自然科学の新分野の創成を図るため、新分野創成センターの運営体制を充実させるとともに、萌芽的な分野間協力形成の支援等を行う。
- ④ 研究教育職員の採用は原則として公募制により実施し、その人事選考は外部委員を含む運営会議で行い、透明性・公平性の確保を図る。また、研究者の流動化による研究の活性化を図るため、分子科学研究所においては、内部昇格禁止を実施し、その他の機関においては、各分野の特徴を踏まえた任期制を実施する。
- ⑤ 技術職員、事務職員の専門的能力の向上を図るため、機構及び各機関主催の研修を計画的に実施しつつ、外部の研究発表会、研修等へも積極的に参加させる。
- ⑥ 各分野における、研究者や応募状況等の男女比率を調査・分析を実施する。
(中略)
III 財務内容の改善に関する目標を達成するためにとるべき措置
1 外部研究資金、寄附金その他の自己収入の増加に関する目標を達成するための措置
外部研究資金の募集等の情報を機構一体的に掲載するWebページを開設し、応募、申請を促す。
(中略)
IV 自己点検・評価及び当該状況に係る情報の提供に関する目標を達成するためにとるべき措置
1 評価の充実に関する目標を達成するための措置
- ① 各機関の特性に応じた研究及び共同利用・共同研究の実施状況や体制等について、自己点検及び外部評価等を実施し、その結果を広く公開する。
- ② 機構全体としての業務運営の改善に資するため、自己点検及び外部評価の検討を行う。
2 情報公開や情報発信等の推進に関する目標を達成するための措置
機構の活動、財務内容や共同利用・共同研究の状況等を、シンポジウムの開催及びWebページの充実、報道発表の実施等により、一般社会へ分かりやすく発信する。
V その他業務運営に関する重要目標を達成するためにとるべき措置
(中略)
3 法令遵守に関する目標を達成するための措置
論文の捏造・改ざん・盗用の防止、職員の倫理、各種ハラスメントの防止、研究費の適切な執行等について講習会等を開催し、周知徹底する。
(後略)
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