生理学研究所年報 第27巻
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動物実験センター

【概要】

 2005年6月より,前任の尾崎 毅先生から動物実験センターの運営管理を引き継ぐことになった。この数年間,職員の異動や退職が相次ぎ,センター長および専任教官のご苦労は大変なものであったと伝え聞いている。実験動物の日常管理だけで,精一杯の状況が続いていたようである。この一年間で,スタッフの補充およびマンパワーの適正化を図ることに努め,センターのサービス業務は質・量ともに向上したものと判断している。徐々にではあるが,技術職員,推進員および飼育委託外部職員にも“ゆとり”が現れ,研究機関本来の研究および技術開発へと力を入れ始めている。

 当センターの運営資金は厳しく,施設の工事や機器の修理で四苦八苦している。予算委員長よりご高配を賜り,特別配分費などでかろうじて乗り切っているが,経済面でも“ゆとり”がほしいものである。

<明大寺地区の本館地下SPF化>
 2005年度より3か年計画で,明大寺地区の本館地下SPF化に着手した。今次のSPF化案の特徴は,個別換気システムを導入することである。普通環境の実験動物と同じ建物の中でSPF動物を飼育維持するために個別換気システムを採用し,微生物汚染事故をできるだけ未然に防ぐことを心懸けた。もうひとつの特徴は,飼育室に実験室を隣接させ,細かい実験操作をSPF状態で行えることである。第一期工事:B-16,B-17の改修工事および飼育ラック,ケージ交換ステーション,クリーンベンチの導入),第二期工事:B-9,B-10の改修工事および焼却炉の撤去,第三期工事:B-14,B-15の改修工事および飼育ラックの導入を順次実施する予定である。このSPF化には,生理学研究所,基礎生物学研究所の資金が投入されるが,動物実験センターの資金も一部含まれる。

<研究・技術開発>
実験動物の皮膚科学・形成外科学領域の研究および伴侶動物の病態研究

 当センターでは,下記の研究を進めているところである。2006年の年明けとともに,学会発表と論文投稿を定常的に行い,施設としてのactivityを高める所存である。

1.

皮膚科学および形成外科学領域を中心とした病態モデルの作出:ヘアレス動物およびニホンザルの皮膚を用いて,表皮あるいは真皮に存在するメラノサイトの機能を調べている。さらに,創傷治癒の転帰を形態学的に検索してヒトへの外挿を目指している。
 

2.

伴侶動物の腫瘍細胞バンクの創設:動物細胞利用実用化として伴侶動物の腫瘍細胞を生体培養し,機能性腫瘍の特徴を調べている。確立できた腫瘍細胞株は凍結保存し,伴侶動物の腫瘍細胞バンクの創設を試みている。
 

3.

伴侶動物の肥満症の病態研究:イヌおよびネコの肥満症を臨床病理学的に調べ,治療法の確立を目指している。
 

4.

モルモットを用いた妊娠中毒症の研究:モルモットの妊娠中毒症を臨床病理学的および病理組織学的に検査し,この病態解明を実施している。
 

5.

実験動物飼育管理技術の開発:麻酔方法,エンリッチメントの評価,給水システムの改善,ストレスの評価と軽減などを検討している。

 この他,共同研究を2課題スタートさせ,研究テーマの種蒔きを施している。

 


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