生理学研究所年報 第27巻 | |
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17.超高圧電子顕微鏡の医学生物学分野への応用2006年2月4日−2月5日
【参加者名】 【概要】 23年余のうちに,380件を越える全国(外国を含む)からの課題が採択され,積極的な応用研究が行なわれて,これまでに160編を超える英文和文の論文を生み出してきた。これらの成果は,解剖学会,生理学会を始めとする各種学会などおよび生理研研究会において個別にあるいは部分的に纏まった医学生物学領域への超高圧電子顕微鏡の応用研究として数多く報告されてきている。しかし超高圧電子顕微鏡の医学生物学への応用分野だけに限った広範な生理研研究会はこれまで開かれていなかった。そこで今回,超高圧電子顕微鏡を利用してこれまで成果を挙げてきた研究者に参加を呼びかけ各自の医学生物学分野での成果を報告し今後の展望を諮るための研究会を行った。医学生物学分野での超高圧電顕分野での主要な特徴である厚い試料の観察可能性を生かした脊椎動物脳内の神経細胞およびグリア細胞の超微細形態の三次元的な形態の解明を行った研究成果を中心に20課題の報告があり超高圧電子顕微鏡の医学生物学領域への有効性を再確認した。平成16年4月の生理学研究所などの国立大学共同利用機関の法人化に伴い今後とも一層成果を期待される折から,これまでの超高圧電子顕微鏡共同利用実験の利用に当たっての組織体制と運営を見直す良い機会ともなった。
(1) 生理学研究所の医学生物学用超高圧電子顕微鏡の特徴有井達夫(生理学研究所)
生理学研究所の超高圧電子顕微鏡(H-1250M型)は,1981年に開発された東京工業大学の超高圧電子顕微鏡(H-1250S型)のドライでクリーンな真空系と高分解能光学系を基に,医学生物学用に役立てるために各種の工夫をしている。医学生物学用としての超高圧電子顕微鏡の重要な特徴は,厚い試料の立体観察(±q°の傾斜像による)が可能なことである。このために,超高圧電子顕微鏡にローテーションフリーズーム機能を導入し,全ての倍率で傾斜軸をフィルムの長辺に平行となるように設定した。またサイドエントリー試料傾斜機構にはユーセントリック機能の傾斜(±45°まで)を可能としていた。試料の傾斜角度の校正を行って測定誤差をあきらかにした。また初めて機械的シャッターを中間レンズの下部に導入し試料に対して一様露光を可能としその照射量を確実に制御できるようにした。これらは立体写真の撮影に極めて重要でありその後の立体観察および解析が容易となった。 シャッター方式はその後,第二コンデンサーレンズ直下にも導入された。この結果,生理学研究所独自のミニマムドーズシステムを開発することができ照射に弱い試料にも有効に応用できることが明らかとなっている。 1994年には試料位置で電子線をより平行に照射できるように対物レンズを新しく設計し導入した。1995年には,−60°から+60°まで1°から2°間隔で連続傾斜した像からトモグラフイ再構築を行えるようにサイドエントリー傾斜傾斜台を改良して全国の医学生物学分野の研究者により一層の便宜を図っている。
(2) 厚切り切片での立体構築片桐展子(東京女子医科大学 総合研究所 研究部) イソアワモチ(海産の腹足類)の外套皮下組織にある眼外光受容(皮膚光覚細胞,DP細胞)の形態と軸索の走行を調べるために,加温オスミウム染色しエポキシ樹脂包埋した0.2〜0.4µm厚さの連続切片を超高圧電顕(×1,500〜×30,000)で観察した。三次元立体構築には,1.DP細胞と軸索をトレースした図を描き,最終的に1枚に重ね合わせる。立体構築ソフトとして2.OZ95-VM32,3.DeltaViewerを用いた。 厚切り切片は加温オスミウム染色によって組織に高コントラストが得られ,通常の透過電顕と同様に観察できた。軸索は部位によって直径1mm以下にもなるがその走行を組織内で追跡できた。DP細胞の軸索起始部は他の光受容細胞にはみられない特異な部位の微絨毛の密在する端部と細胞質の境界部から出る。また,幼動物にみられた未成熟のDP細胞においても,成熟したDP細胞と同様の起始部と走行を辿ることが明らかになった。軸索はOZ95-VM32による三次元構築では表面の透過度を変えて,DP細胞の軸索が小神経束に入る状態や細胞内の微絨毛や核を透視できた。また,DeltaViewerでは立体構築像を任意の方向に回転できるので,DP細胞と軸索の全体像を理解し易かった。
(3) Three dimensional reconstruction of Drosophila retinal cell ultrastructure employing HVEM.Ji Young Mun,
Sung Sik Han (School of Life Sciences and Biotechnology, Korea University) The study about structure of Drosophila melanogaster's retinal cell using electron microscopy was carried in detail. But, these results can have limitation in function research because of two-dimensional structure and chemical fixation. High voltage electron microscopy (HVEM) has been a natural outgrowth of the desire to obtain 3-dimensional information due to problems related to interpretations of 3-dimensional images from 2-dimensional electron microscopes is numerous. Also, the fine-structure preservation of cells can be achieved by using fast-freezing followed by freeze-substitution (FS) techniques. The fast freezing is so much better due to the speed of fixation, which freezing virtually means stopping all molecular movement. It is estimated that samples prepared by high pressure freezing are fixed in 20-50 msec, as compared to the seconds and/or minutes by chemical fixations. In this study, the adult retina of Drosophila Melanogaster was investigated employing HVEM, fixation by high pressure freezing followed FS, thick serial sections, and 3-dimensional reconstruction. From this investigation, the distribution of microtubules, mitochondria, and nuclei was reconstructed as three-dimensional structure using IMOD program. The current data provide us more precise cellular information and better understanding on the animal vision mechanism in new dimension.
(4) ラット腎糸球体メサンギウム細胞表面に存在する機能分子:Thy-1追手 巍(新潟大学大学院医歯学総合研究科腎研究施設機能制御学分野) 【はじめに】私どもはラット腎糸球体細胞に対する各種単クローン抗体を作製し,その中にメサンギウム細胞に存在するThy-1.1と特異的に反応する抗体(1-22-3)を見つけた。本研究では同じThy-1.1 分子に対する他の単クローン抗体(OX-7)と比較し,両分子の細胞局在を超微形態学的に検索,対応抗原エピトープの分子内局在,及びその分子の機能について検索した。 【方法と結果】1.免疫組織学的検索;培養ラットメサンギウム細胞を用い,2重染色すると1-22-3は細胞表面のみ,OX-7は細胞表面及び細胞外基質の一部にも結合した。血管内皮細胞と混合培養したメサンギウム細胞に対する両抗体の結合を共焦点レザー顕微鏡で観察した。1-22-3は両細胞の接触する部位に優位に局在した。2.超微形態学的検索;メサンギウム細胞と内皮細胞を混合培養し,両抗体を1次抗体として培養液に加え反応させた。2次抗体として 6 nm colloidal gold, 30倍希釈)(Jackson Immunoresearch Lab.Inc)を同様に生細胞状態で反応させ,0.02% sodium azide 含有PBSで洗浄後,2%グルタールアルデヒドで固定し,通常のエポン包埋による電顕試料を作成した。約1mm の厚い切片を超高圧電子顕微鏡(生理研日立 H-1250M, 1000 kV)で観察した。1-22-3は内皮細胞と接触する部位のメサンギウム細胞表面に結合し,OX-7はメサンギウム細胞全周の細胞表面と細胞外成分とも結合することが明確となった。3.1-22-3対応抗原のThy1-1分子内局在;GST融合蛋白法とペプチドマッピング法により,1-22-3認識エピトープはThy-1.1分子N末端15-23アミノ酸配列上に存在した。4.1-22-3,OX-7の結合によるメサンギウム細胞のCa++シグナル;メサンギウム細胞培養液中に両単クローン抗体を添加し,細胞内Ca++濃度の変化を測定した。1-22-3刺激により細胞内Ca++濃度は急激に増加し,暫時低下するものの長く持続していた。 【結語】ラット腎糸球体メサンギウム細胞上に存在するThy-1.1分子は接着分子,細胞内シグナル伝達に関わる機能分子として存在することが明らかとなった。
(5) 超高圧電顕をとおして見た細胞小器官の立体構造野田 亨(藍野大学医療保健学部理学療法学科) 電子顕微鏡を含めて,顕微鏡で見る細胞はともすると平面的なものと捉えがちになるが,細胞は本来,立体であり,その中の核を始めとする細胞小器官もそれぞれの細胞内部で特有の立体的ひろがりを持っている。細胞小器官の立体的な構造を捉えようとする方法には走査型電子顕微鏡や通常の透過型電子顕微鏡を用いた連続超薄切片からの立体再構成などがあるが,細胞の厚切り切片を用いた超高圧電子顕微鏡による観察法はより直接的で,情報量が多く,細胞小器官の立体像を捉えるための最も優れた観察法の一つということができる。しかしながら,この方法から形態的な情報を最大限に引き出すためには超高圧電子顕微鏡下で細胞小器官を特異的に,しかも明瞭に染め出しておくことが必要であり,そのための処理が最終的な超高圧電顕像の良し悪しを決定しているといえる。このステップは細胞化学,あるいは組織化学と呼ばれる方法であり,それらには銀やオスミウムなどを用いた古典的染色法,酵素組織化学,免疫組織化学などの方法がある。講演ではこれまで演者が種々の細胞化学的染色を行って観察してきた細胞小器官の超高圧電顕像を紹介し,超薄切片からは直接得ることのできない細胞小器官本来の立体像の特徴を述べる。
(6) 超高圧電子顕微鏡によるシナプスの立体観察五十嵐広明(東邦大学医学部解剖学講座微細形態学分野) シナプスを特異的に染色する方法として知られるethanolic phosphotungstic acid (E-PTA) 染色法を超高圧電子顕微鏡による厚切り切片の観察にも応用できるものと考え,E-PTA染色を施したラット大脳前頭皮質の0.5〜2mmの切片を作製して観察した。最小の0.5mm厚の設定は,E-PTA染色によるヒト等の大脳皮質のシナプスの直径が0.24〜0.42mmと計測されていたことによる。すべての厚さでシナプスが観察できたが,比較的コントラストの強い0.5mm切片を主として観察した。後シナプス側,鉛直方向から見たシナプスの全体像では,円形あるいは楕円形の細網状の少し電子密度の高いpostsynaptic density(PSD)が観察され,前シナプス側に電子密度の高いpresynaptic dense projection(PDP)が六角形あるいは三角形の分布様式をとってpresynaptic gridを構成しているのが観察された。なお,PDPは一定の分布様式をとらないものも多く存在した。比較的大きなPSDの中央付近にはperforation(PR)が存在し,大きなPSDではPRが3〜4個存在するものもあった。以上の観察結果は従来の報告とほぼ同じものであったが,切片に傾斜をかけて初めてシナプスの立体像を記載することが出来た上,切片に90°の傾斜をかけることにより,同一のシナプスの正面像と側面像を初めて得ることができた。
(7) 嗅球ニューロン・グリアの三次元構造解析樋田一徳(徳島大学大学院・ヘルスバイオサイエンス研究部) 単純な層構造を示す嗅球は,近年の分子レベルの解析によって多様な嗅覚情報を精巧に処理することが判り,複雑な脳神経回路網の基本的構造の解明の為の重要な鍵が見出せるものと期待されている。我々はこれまでシナプス結合による脳構築モデルとして,電子顕微鏡連続切片によるラット嗅球神経回路の三次元構造解析を進めてきた。嗅球ニューロンのシナプスは径0.2mm以下の突起に形成することも多く,このためシナプスを形成する突起の細部及び全体像の三次元的構造を正確に知るには共焦点レーザー顕微鏡の解像度では難しく,現状では超高圧電子顕微鏡による立体構造解析以外に確実な方法はない。そこで嗅球ニューロンのうち糸球体内のシナプス結合を同定したCalbindin, Tyrosine Hydroxylase,及びCalretinin免疫陽性ニューロンを超高圧電子顕微鏡により解析を行ない,いずれも径0.2mm以下の突起を識別・追跡でき,光学顕微鏡では不明であった糸球体内細部での突起の正確な分布と相互の近接構造が明らかとなった。これらの知見により,同定を行ったシナプス結合の神経回路内の存在意義がより明確となった。 本研究会ではこれまでの所見を紹介し,嗅球を中心とした脳神経回路解析における統合的な顕微鏡的解析の有用性を論じた。また超高圧電子顕微鏡の今後の魅力的な解析の可能性について専門家との有意義な討論を行なった。
(8) Approaches to synaptic plasticity with high voltage electron microscopy (HVEM)Kea Joo Lee, Im Joo Rhyu (Department of
Anatomy College of Medicine, Korea University) Synapses are specialized interneuronal junctions where signals are propagated from one to another. Most excitatory synapses consist of presynaptic axon terminals and postsynaptic dendritic spines in a mammalian central nervous system. Shapes and number of dendritic spines are dramatically changed under various physiological or pathological conditions such as development, environmental enrichment, learning, hormonal states,ataxia, and mental retardation. To analyze dendritic spines quantitatively or qualitatively, light microscopy (LM), laser confocal microscopy, transmission electron microscopy (TEM), and HVEM have been generally used. Because dendritic spines are numerous and small in size, standard LM may not adequately identify spine morphology. The profiles of dendritic spines appear to be fragmental in thin sections for TEM; thus, without an adequate 3-D reconstruction method, TEM is not suitable for quantifying structural dimensions and composition of spines. HVEM has been effectively applied to quantitative studies of spines by using 3-5 mm thick sections and taking advantage of its high resolution and penetrating power. We have analyzed the detailed morphology of the dendritic spines in hippocampal neurons and Purkinje cell in some physiologic and pathologic conditions with HVEM. The density, length and spine have been analyzed in the acrobat trained rat, P/Q type calcium channel mutant, and fmr-1 knock out mice, which is an animal model of human fragile X syndrome. The density and length of Purkinje cell dendritic spine were increased in the acrobat trained rat cerebellum. But the density and length of the dendritic spine of Purkinje cell were decreased in the P/Q type calcium channel mutant. The increased spine density and length of fmr-1 knock mice were observed in dentate granule cell of the hippocampus. The HVEM provide a useful tool in synaptic plasticity studies and in extracting 3 dimensional information of the nervous system.
(9) 哺乳類神経前駆細胞の細胞分裂機構:形態学および分子生物学的アプローチ小曽戸陽一(理化学研究所・発生再生科学総合研究センター・非対称細胞分裂研究グループ)
脊椎動物の中枢神経系神経細胞の前駆細胞である神経上皮細胞が,細胞増殖的対称分裂および神経細胞生成的非対称分裂を行う際に,apical表層の細胞体とbasal laminaとのコンタクトは大変細長い形状(直径1mm以下,長さ100mm以上)となるものの,プロセス様の構造物(basal process)として保持されている。光学顕微鏡ではその微細構造の空間的情報の観察が困難であるため,細胞分裂の際にbasal processがどのように娘細胞に引き継がれるかについては不明な点が多い。我々は超高圧電子顕微鏡および免疫染色法による形態学的解析から,basal processが細胞分裂時にはそのapical-basal軸に沿って分裂しうることを示した。細胞分裂期のbasal process内には細胞分裂溝の構成蛋白質であるanillinが塊状の局在を示し,さらにanillinの局在とbasal processの分裂点が一致している場合があることが見いだされた。また,細胞分裂の進行に連れて塊状anillinの局在はbasal側からapical側に移動し,最終的に細胞体の分裂溝に引き継がれることがタイムラプス解析等により示された。我々の研究から少なくとも神経発生の初期段階において,神経上皮細胞のbasal processは細胞体分裂に先立って分裂し,その結果娘細胞に引き継がれる場合があることが示された。
(10) 赤核脊髄路細胞樹状突起におけるフィロポディア状突起とシナプス形成村上富士夫(大阪大学大学院生命機能研究科) The formation of synaptic contacts is a crucial event which is achieved by complex interactions between incoming axons and the neurons in the target. We have focused on spine-like dendritic protrusions (SLDPs), which are transient pleomorphic protrusive structures seen in developing brains. Accumulating in vitro evidence suggested that the SLDP plays an important role in synaptogenetic interactions with axons. To test this idea, we examined whether the SLDPs are the preferential sites of synapse formation. The ultrastructure of biocytin-labeled corticorubral (CR) terminals was examined in serial thin sections during the period of synaptogenesis in newborn cats. We found that a major proportion (86%) of the CR synapses was formed on SLDPs. The presynaptic terminals were often invaginated by fine processes extending from the tips of SLDPs. Presumptive CR synapses were also found on SLDPs of HRP-labeled rubrospinal cells, suggesting that SLDPs postsynaptic to labeled CR terminals originate at least in part from rubrospinal cells. Thus, SLDPs may represent preferred sites of synapse formation and play a role in synaptogenic interactions during brain development. We also examined CR synapses in adult cats. Electron microscopic observation of serial thin sections of Phaseolus vulgaris-leucoagglutinin-labeled axons revealed that approximately 60% of CR terminals formed synapses on dendritic spines. CR axons terminated on dendritic spines originating from the intermediate or distal dendrites of rubrospinal cells (>200 mm apart from the soma), in contrast to kittens in which CR fibers terminate on SLDPs originating from the proximal dendrites (< 100 mm apart from the soma). Thus, CR synapses appear to undergo remarkable remodeling after initial termination on SLDP.
(11) 超高圧電子顕微鏡による神経細胞及びグリア細胞突起の三次元定量解析浜 清(生理学研究所名誉教授) 超高圧電子顕微鏡の高い電子線透過能を利用すると厚い生物試料の立体観察が可能である。生理学研究所の1000 kV HVEM は生物試料の3次元立体計測のための特性(ローテーションフリー,ズーム,長焦点対物レンズ等の光学系の他,0.1°の精度で±60°ユウセントリック傾斜が可能なサイドエントリー試料ホールダー)を備えた世界で初めての生物専用機である。演者等は±q°傾斜立体像を用いて3次元定量解析を行なう方法を開発し,厚さ3mmの横紋筋切片を用い横細管の3次元定量に成功した( Hama et al. 1985, Arii & Hama 1987)。 神経細胞やグリア細胞の複雑な突起の3次元定量解析には厚い切片を用いたHVEM解析が特に有効である。 ラット歯状回顆粒細胞のGolgi 染色標本から5 mmの連続切片を作成し,上記のHVEMステレオ解析法によって樹状突起棘の形状,長さ,数量と密度,表面積について3次元定量解析を行い興味ある所見を得た(Hama et al.1994)。 星状グリア細胞の突起は脳内に極めて繊細,複雑な網目を作っていて,その広範な三次元定量解析は光学顕微鏡,連続超薄切片による再構築法,及びステレオ解析などでは不可能である。我々は−60°から+60°まで2°間隔の連続傾斜像から星状グリア細胞突起のトモグラフイ再構築を行って,その体積と表面積を計測し,星状グリア細胞の突起が極めて大きな表面積/体積比を持つ事を発見した(Hama et al. 2004)。此の事は神経細胞とグリア細胞間の緊密な機能的相関を考える上で重要な指標となる。 Hama, K., Arii,T., and Nakamura,S., Insitu Experiments with High Voltage Electron Microscopes. H. Fujita ed, pp 455 -460, 1985. Arii, T. & Hama,K. J. Electron Microsc. 36: 177-1995, 1987 Hama, K., Arii, T., and Kosaka, T., Microsc. Res. Tech. 29: 357-367, 1994. Hama,K, Arii,T., Katayama, K., Martone, M., and Ellisman, H. J. Neurocytol. 33: 277-285, 2004.
(12) 超高圧電顕によるカサゴ鰾筋の横行小管-筋小胞体複合構造立体構築に関するステレオ観察鈴木 季直(神奈川大学理学部生物科学科)
骨格筋(横紋筋)では,筋形質膜から筋小胞体への興奮伝達のため,横行小管(T-管)とそれを両側から挟み込む2つの筋小胞体終末槽がtriadを形成している。筆者と共同研究者は,横紋筋であるカサゴ鰾筋の収縮-弛緩にともなう細胞内Ca2+動態を研究するためにまず筋線維の微細構造観察を行なったが,この筋では,同一筋線維内に規則的に分布するZ型とAI型の2種のtriadが含まれ,それらの分布境界領域には,triadの他に,2本のT-管と3つの筋小胞体終末槽からなるpentadと,3本のT-管と4つの筋小胞体終末槽からなるheptad (著者ら命名)が含まれていることを見出した(J. Electron Microsc. 52:337-347, 2003)。Triadより複雑なpentadやheptadの構築様式を明らかにするために,樹脂包埋試料から厚さ0.5 mmの切片を作製し,生理学研究所の超高圧電子顕微鏡(Hitachi H-1250M HVTEM)で観察し,ステレオ撮影した。その結果,筋節のZ帯部位にあるT-管が分枝し,両側に伸び,A帯とI帯の境界部位でZ帯と平行に走行し,それらを筋小胞体終末槽が取り囲むことでheptadが構築されることが明らかにされた。PentadはこのheptadのT-管3本のうち,A帯とI帯の境界部位にあるべき1本が欠けた変則的なheptadと考えられる。一般に,骨格筋は,筋種ごとに,2種のtriadのうちどちらか一方の型のみを含むが,本研究の結果は,AI型 triadがZ型triadから分化する可能性と,AI型 triadのみを含む骨格筋はZ型triadのみを含む骨格筋よりもさらに進化したレベルにあることを示唆した。
(13) 3-D reconstruction of plastid crystalline bodies during Sedum rotundifolium developmentInSun Kim (Biology Department,
Keimyung University)
Employing HVEM and tomography, the present study attempted to reconstruct the 3-D plastid crystalline inclusion bodies detected during Sedum rotundifolium development. The 3-D reconstruction has been based on data attained from the tilting, tomography, and diffractogram. The plastid inclusion body differentiated during CAM metabolism and revealed quite peculiar structural pattern. The inclusion bodies were intrathylakoidal and non-membrane bounded structures. Being irregular in shape and variable in size, their structural attributes considerably affected the plastid morphology in early development. Fusion or branching was common between the inclusion bodies. The elements within the crystalline body exhibited either parallel or lattice arrangement depending on the section angle. The crystalline inclusions consisted of tubular elements exhibiting a hexagonal arrangement of the six substructures with a 17.9-18.6 nm periodicity between elements. Implications of such changes in the tubular inclusions in relation to CAM will be discussed.
(14) 胸腺ナース細胞は胸腺細胞分化のための動的微小環境を形成する
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