生理学研究所年報 第27巻
 研究会報告 年報目次へ戻る生理研ホームページへ

17.超高圧電子顕微鏡の医学生物学分野への応用

2006年2月4日−2月5日
代表・世話人:有井達夫(生理学研究所)

(1)
生理学研究所の医学生物学用超高圧電子顕微鏡の特徴
有井達夫(生理学研究所)
(2)
厚切り切片での立体構築について
片桐展子(東京女子医大・総合研)
(3)
Three dimensional reconstruction of Drosophila retinal cell ultrastructure employing HVEM
Sung Sik HAN, Ji Young MUN (Korea University, School of Biosciences & Biotechnology)
(4)
ラット腎糸球体メサンギウム細胞表面に存在する機能分子;Thy-1
追手 巍(新潟大学・医歯学総合研究科腎研究施設)
(5)
超高圧電顕をとおして見た細胞小器官の立体構造
野田 亨(藍野大学・医療保健学部)
(6)
超高圧電子顕微鏡によるシナプスの立体観察
五十嵐 広明(東邦大学・医学部)
(7)
嗅球ニューロン・グリアの三次元構造解析
樋田一徳(徳島大学大学院・ヘルスバイオサイエンス研究部)
(8)
Approaches to synaptic plasticity with HVEM
Im Joo RHYU (Korea University, College of Medicine)
(9)
哺乳類神経前駆細胞の細胞分裂機構:形態学および分子生物学的アプローチ
小曽戸陽一(理化学研究所CDB)
(10)
赤核細胞樹状突起のシナプス形成とフィロポディア
村上富士夫(大阪大学・生命機能研究科)
(11)
超高圧電子顕微鏡による神経細胞およびグリア細胞の三次元解析
濱 清(生理学研究所)
(12)
超高圧電顕によるカサゴ鰾筋の横行小管-筋小胞体複合構造立体構築に関するステレオ観察
鈴木季直(神奈川大学・理学部)
(13)
3-D reconstruction of plastid crystalline bodies during development
InSun KIM (Keimyung University, College of Natural Sciences)
(14)
Thymic nurse cells forming a dynamic microenvironment for thymocytes differentiation
江崎太一(東京女子医科大学・医学部)
(15)
ウイルス感染細胞の全裁標本による超高圧電子顕微鏡観察
吉田まり子(岡山大学・医歯薬学総合研究科)
(16)
神経系培養細胞における神経栄養因子受容体の分布
遠藤泰久(京都工芸繊維大学)
(17)
ステロイドホルモンによる神経細胞機能形態調節機構の解明
−超高圧電子顕微鏡による解析アプローチ−
小澤一史(日本医科大学)
(18)
網膜ニューロン間の電気シナプス
日高 聰(藤田保健衛生大学・医学部)
(19)
海馬歯状回mossy cellの背腹方向での構造的,化学的,電気生理学的差異
遠藤泰久(京都工芸繊維大学)
(20)
小脳生後発達過程におけるバーグマングリア細胞の解析
古家園子,山口 登,有井達夫(生理学研究所)

【参加者名】
Ji, Sang Yong,Kim, InSun (Keimyung University), Han, Sung Sik,Kim, Ji Hui,Kim, Kang Min,Lee, Kyung Eun,Mun, Ji Young, Rhyu, In Joo (Korea University),野田亨(藍野大学),村上富士夫(大阪大学),吉田まり子(岡山大学),鈴木季直(神奈川大学),小坂俊夫(九州大学),遠藤泰久,西田倫希,吉村亮一(京都工芸繊維大学)江崎太一,片桐展子(東京女子医大),五十嵐広明(東邦大学),樋田一徳(徳島大学),中村栄男(名古屋大学),追手巍(新潟大学),小澤一史(日本医大),日高聰(藤田保健衛生大),小曽戸陽一(理化学研究所),喜多山篤,新田浩二(統合バイオ),有井達夫,大庭明生,窪田芳之,児玉貴史,重本隆一,濱 清,古家園子,水野 昇,山口 登(生理学研究所)

【概要】
 生理学研究所の超高圧電子顕微鏡は,昭和55年3月の生理研研究会「医学生物学における超高圧電子顕微鏡にかける夢」での全国からの研究者(理工学分野の研究者を含む)による報告と討論,その後の機種選定委員会での議論を経て導入された日本で最初の全国共同利用の医学生物学用専用機種である。昭和57年3月に搬入され,同年9月より全国に課題を公募して11月より使用が開始された。以来23年余が経過している。この間,多くの関係者からの暖かいご支援もあり,設置当初の機能をさらに充実させ,現在も10-6Pa台のドライでクリーンな真空のもとに安定に稼動してきている。

 23年余のうちに,380件を越える全国(外国を含む)からの課題が採択され,積極的な応用研究が行なわれて,これまでに160編を超える英文和文の論文を生み出してきた。これらの成果は,解剖学会,生理学会を始めとする各種学会などおよび生理研研究会において個別にあるいは部分的に纏まった医学生物学領域への超高圧電子顕微鏡の応用研究として数多く報告されてきている。しかし超高圧電子顕微鏡の医学生物学への応用分野だけに限った広範な生理研研究会はこれまで開かれていなかった。そこで今回,超高圧電子顕微鏡を利用してこれまで成果を挙げてきた研究者に参加を呼びかけ各自の医学生物学分野での成果を報告し今後の展望を諮るための研究会を行った。医学生物学分野での超高圧電顕分野での主要な特徴である厚い試料の観察可能性を生かした脊椎動物脳内の神経細胞およびグリア細胞の超微細形態の三次元的な形態の解明を行った研究成果を中心に20課題の報告があり超高圧電子顕微鏡の医学生物学領域への有効性を再確認した。平成16年4月の生理学研究所などの国立大学共同利用機関の法人化に伴い今後とも一層成果を期待される折から,これまでの超高圧電子顕微鏡共同利用実験の利用に当たっての組織体制と運営を見直す良い機会ともなった。

 

(1) 生理学研究所の医学生物学用超高圧電子顕微鏡の特徴

有井達夫(生理学研究所)

 生理学研究所の超高圧電子顕微鏡(H-1250M型)は,1981年に開発された東京工業大学の超高圧電子顕微鏡(H-1250S型)のドライでクリーンな真空系と高分解能光学系を基に,医学生物学用に役立てるために各種の工夫をしている。医学生物学用としての超高圧電子顕微鏡の重要な特徴は,厚い試料の立体観察(±q°の傾斜像による)が可能なことである。このために,超高圧電子顕微鏡にローテーションフリーズーム機能を導入し,全ての倍率で傾斜軸をフィルムの長辺に平行となるように設定した。またサイドエントリー試料傾斜機構にはユーセントリック機能の傾斜(±45°まで)を可能としていた。試料の傾斜角度の校正を行って測定誤差をあきらかにした。また初めて機械的シャッターを中間レンズの下部に導入し試料に対して一様露光を可能としその照射量を確実に制御できるようにした。これらは立体写真の撮影に極めて重要でありその後の立体観察および解析が容易となった。

 シャッター方式はその後,第二コンデンサーレンズ直下にも導入された。この結果,生理学研究所独自のミニマムドーズシステムを開発することができ照射に弱い試料にも有効に応用できることが明らかとなっている。

 1994年には試料位置で電子線をより平行に照射できるように対物レンズを新しく設計し導入した。1995年には,−60°から+60°まで1°から2°間隔で連続傾斜した像からトモグラフイ再構築を行えるようにサイドエントリー傾斜傾斜台を改良して全国の医学生物学分野の研究者により一層の便宜を図っている。

 

(2) 厚切り切片での立体構築

片桐展子(東京女子医科大学 総合研究所 研究部)

 イソアワモチ(海産の腹足類)の外套皮下組織にある眼外光受容(皮膚光覚細胞,DP細胞)の形態と軸索の走行を調べるために,加温オスミウム染色しエポキシ樹脂包埋した0.2〜0.4µm厚さの連続切片を超高圧電顕(×1,500〜×30,000)で観察した。三次元立体構築には,1.DP細胞と軸索をトレースした図を描き,最終的に1枚に重ね合わせる。立体構築ソフトとして2.OZ95-VM32,3.DeltaViewerを用いた。

 厚切り切片は加温オスミウム染色によって組織に高コントラストが得られ,通常の透過電顕と同様に観察できた。軸索は部位によって直径1mm以下にもなるがその走行を組織内で追跡できた。DP細胞の軸索起始部は他の光受容細胞にはみられない特異な部位の微絨毛の密在する端部と細胞質の境界部から出る。また,幼動物にみられた未成熟のDP細胞においても,成熟したDP細胞と同様の起始部と走行を辿ることが明らかになった。軸索はOZ95-VM32による三次元構築では表面の透過度を変えて,DP細胞の軸索が小神経束に入る状態や細胞内の微絨毛や核を透視できた。また,DeltaViewerでは立体構築像を任意の方向に回転できるので,DP細胞と軸索の全体像を理解し易かった。

 

(3) Three dimensional reconstruction of Drosophila retinal cell ultrastructure employing HVEM.

Ji Young Mun, Sung Sik Han (School of Life Sciences and Biotechnology, Korea University)

 The study about structure of Drosophila melanogaster's retinal cell using electron microscopy was carried in detail. But, these results can have limitation in function research because of two-dimensional structure and chemical fixation. High voltage electron microscopy (HVEM) has been a natural outgrowth of the desire to obtain 3-dimensional information due to problems related to interpretations of 3-dimensional images from 2-dimensional electron microscopes is numerous. Also, the fine-structure preservation of cells can be achieved by using fast-freezing followed by freeze-substitution (FS) techniques. The fast freezing is so much better due to the speed of fixation, which freezing virtually means stopping all molecular movement. It is estimated that samples prepared by high pressure freezing are fixed in 20-50 msec, as compared to the seconds and/or minutes by chemical fixations. In this study, the adult retina of Drosophila Melanogaster was investigated employing HVEM, fixation by high pressure freezing followed FS, thick serial sections, and 3-dimensional reconstruction. From this investigation, the distribution of microtubules, mitochondria, and nuclei was reconstructed as three-dimensional structure using IMOD program. The current data provide us more precise cellular information and better understanding on the animal vision mechanism in new dimension.

 

(4) ラット腎糸球体メサンギウム細胞表面に存在する機能分子:Thy-1

追手 巍(新潟大学大学院医歯学総合研究科腎研究施設機能制御学分野)
有井 達夫(自然科学研究機構生理学研究所形態情報解析室)

【はじめに】私どもはラット腎糸球体細胞に対する各種単クローン抗体を作製し,その中にメサンギウム細胞に存在するThy-1.1と特異的に反応する抗体(1-22-3)を見つけた。本研究では同じThy-1.1 分子に対する他の単クローン抗体(OX-7)と比較し,両分子の細胞局在を超微形態学的に検索,対応抗原エピトープの分子内局在,及びその分子の機能について検索した。

【方法と結果】1.免疫組織学的検索;培養ラットメサンギウム細胞を用い,2重染色すると1-22-3は細胞表面のみ,OX-7は細胞表面及び細胞外基質の一部にも結合した。血管内皮細胞と混合培養したメサンギウム細胞に対する両抗体の結合を共焦点レザー顕微鏡で観察した。1-22-3は両細胞の接触する部位に優位に局在した。2.超微形態学的検索;メサンギウム細胞と内皮細胞を混合培養し,両抗体を1次抗体として培養液に加え反応させた。2次抗体として 6 nm colloidal gold, 30倍希釈)(Jackson Immunoresearch Lab.Inc)を同様に生細胞状態で反応させ,0.02% sodium azide 含有PBSで洗浄後,2%グルタールアルデヒドで固定し,通常のエポン包埋による電顕試料を作成した。約1mm の厚い切片を超高圧電子顕微鏡(生理研日立 H-1250M, 1000 kV)で観察した。1-22-3は内皮細胞と接触する部位のメサンギウム細胞表面に結合し,OX-7はメサンギウム細胞全周の細胞表面と細胞外成分とも結合することが明確となった。3.1-22-3対応抗原のThy1-1分子内局在;GST融合蛋白法とペプチドマッピング法により,1-22-3認識エピトープはThy-1.1分子N末端15-23アミノ酸配列上に存在した。4.1-22-3,OX-7の結合によるメサンギウム細胞のCa++シグナル;メサンギウム細胞培養液中に両単クローン抗体を添加し,細胞内Ca++濃度の変化を測定した。1-22-3刺激により細胞内Ca++濃度は急激に増加し,暫時低下するものの長く持続していた。

【結語】ラット腎糸球体メサンギウム細胞上に存在するThy-1.1分子は接着分子,細胞内シグナル伝達に関わる機能分子として存在することが明らかとなった。

 

(5) 超高圧電顕をとおして見た細胞小器官の立体構造

野田 亨(藍野大学医療保健学部理学療法学科)

 電子顕微鏡を含めて,顕微鏡で見る細胞はともすると平面的なものと捉えがちになるが,細胞は本来,立体であり,その中の核を始めとする細胞小器官もそれぞれの細胞内部で特有の立体的ひろがりを持っている。細胞小器官の立体的な構造を捉えようとする方法には走査型電子顕微鏡や通常の透過型電子顕微鏡を用いた連続超薄切片からの立体再構成などがあるが,細胞の厚切り切片を用いた超高圧電子顕微鏡による観察法はより直接的で,情報量が多く,細胞小器官の立体像を捉えるための最も優れた観察法の一つということができる。しかしながら,この方法から形態的な情報を最大限に引き出すためには超高圧電子顕微鏡下で細胞小器官を特異的に,しかも明瞭に染め出しておくことが必要であり,そのための処理が最終的な超高圧電顕像の良し悪しを決定しているといえる。このステップは細胞化学,あるいは組織化学と呼ばれる方法であり,それらには銀やオスミウムなどを用いた古典的染色法,酵素組織化学,免疫組織化学などの方法がある。講演ではこれまで演者が種々の細胞化学的染色を行って観察してきた細胞小器官の超高圧電顕像を紹介し,超薄切片からは直接得ることのできない細胞小器官本来の立体像の特徴を述べる。

 

(6) 超高圧電子顕微鏡によるシナプスの立体観察

五十嵐広明(東邦大学医学部解剖学講座微細形態学分野)

 シナプスを特異的に染色する方法として知られるethanolic phosphotungstic acid (E-PTA) 染色法を超高圧電子顕微鏡による厚切り切片の観察にも応用できるものと考え,E-PTA染色を施したラット大脳前頭皮質の0.5〜2mmの切片を作製して観察した。最小の0.5mm厚の設定は,E-PTA染色によるヒト等の大脳皮質のシナプスの直径が0.24〜0.42mmと計測されていたことによる。すべての厚さでシナプスが観察できたが,比較的コントラストの強い0.5mm切片を主として観察した。後シナプス側,鉛直方向から見たシナプスの全体像では,円形あるいは楕円形の細網状の少し電子密度の高いpostsynaptic density(PSD)が観察され,前シナプス側に電子密度の高いpresynaptic dense projection(PDP)が六角形あるいは三角形の分布様式をとってpresynaptic gridを構成しているのが観察された。なお,PDPは一定の分布様式をとらないものも多く存在した。比較的大きなPSDの中央付近にはperforation(PR)が存在し,大きなPSDではPRが3〜4個存在するものもあった。以上の観察結果は従来の報告とほぼ同じものであったが,切片に傾斜をかけて初めてシナプスの立体像を記載することが出来た上,切片に90°の傾斜をかけることにより,同一のシナプスの正面像と側面像を初めて得ることができた。

 

(7) 嗅球ニューロン・グリアの三次元構造解析

樋田一徳(徳島大学大学院・ヘルスバイオサイエンス研究部)

 単純な層構造を示す嗅球は,近年の分子レベルの解析によって多様な嗅覚情報を精巧に処理することが判り,複雑な脳神経回路網の基本的構造の解明の為の重要な鍵が見出せるものと期待されている。我々はこれまでシナプス結合による脳構築モデルとして,電子顕微鏡連続切片によるラット嗅球神経回路の三次元構造解析を進めてきた。嗅球ニューロンのシナプスは径0.2mm以下の突起に形成することも多く,このためシナプスを形成する突起の細部及び全体像の三次元的構造を正確に知るには共焦点レーザー顕微鏡の解像度では難しく,現状では超高圧電子顕微鏡による立体構造解析以外に確実な方法はない。そこで嗅球ニューロンのうち糸球体内のシナプス結合を同定したCalbindin, Tyrosine Hydroxylase,及びCalretinin免疫陽性ニューロンを超高圧電子顕微鏡により解析を行ない,いずれも径0.2mm以下の突起を識別・追跡でき,光学顕微鏡では不明であった糸球体内細部での突起の正確な分布と相互の近接構造が明らかとなった。これらの知見により,同定を行ったシナプス結合の神経回路内の存在意義がより明確となった。

 本研究会ではこれまでの所見を紹介し,嗅球を中心とした脳神経回路解析における統合的な顕微鏡的解析の有用性を論じた。また超高圧電子顕微鏡の今後の魅力的な解析の可能性について専門家との有意義な討論を行なった。

 

(8) Approaches to synaptic plasticity with high voltage electron microscopy (HVEM)

Kea Joo Lee, Im Joo Rhyu (Department of Anatomy College of Medicine, Korea University)

 Synapses are specialized interneuronal junctions where signals are propagated from one to another. Most excitatory synapses consist of presynaptic axon terminals and postsynaptic dendritic spines in a mammalian central nervous system. Shapes and number of dendritic spines are dramatically changed under various physiological or pathological conditions such as development, environmental enrichment, learning, hormonal states,ataxia, and mental retardation. To analyze dendritic spines quantitatively or qualitatively, light microscopy (LM), laser confocal microscopy, transmission electron microscopy (TEM), and HVEM have been generally used. Because dendritic spines are numerous and small in size, standard LM may not adequately identify spine morphology. The profiles of dendritic spines appear to be fragmental in thin sections for TEM; thus, without an adequate 3-D reconstruction method, TEM is not suitable for quantifying structural dimensions and composition of spines. HVEM has been effectively applied to quantitative studies of spines by using 3-5 mm thick sections and taking advantage of its high resolution and penetrating power.

 We have analyzed the detailed morphology of the dendritic spines in hippocampal neurons and Purkinje cell in some physiologic and pathologic conditions with HVEM. The density, length and spine have been analyzed in the acrobat trained rat, P/Q type calcium channel mutant, and fmr-1 knock out mice, which is an animal model of human fragile X syndrome. The density and length of Purkinje cell dendritic spine were increased in the acrobat trained rat cerebellum. But the density and length of the dendritic spine of Purkinje cell were decreased in the P/Q type calcium channel mutant. The increased spine density and length of fmr-1 knock mice were observed in dentate granule cell of the hippocampus.

 The HVEM provide a useful tool in synaptic plasticity studies and in extracting 3 dimensional information of the nervous system.

 

(9) 哺乳類神経前駆細胞の細胞分裂機構:形態学および分子生物学的アプローチ

小曽戸陽一(理化学研究所・発生再生科学総合研究センター・非対称細胞分裂研究グループ)

 脊椎動物の中枢神経系神経細胞の前駆細胞である神経上皮細胞が,細胞増殖的対称分裂および神経細胞生成的非対称分裂を行う際に,apical表層の細胞体とbasal laminaとのコンタクトは大変細長い形状(直径1mm以下,長さ100mm以上)となるものの,プロセス様の構造物(basal process)として保持されている。光学顕微鏡ではその微細構造の空間的情報の観察が困難であるため,細胞分裂の際にbasal processがどのように娘細胞に引き継がれるかについては不明な点が多い。我々は超高圧電子顕微鏡および免疫染色法による形態学的解析から,basal processが細胞分裂時にはそのapical-basal軸に沿って分裂しうることを示した。細胞分裂期のbasal process内には細胞分裂溝の構成蛋白質であるanillinが塊状の局在を示し,さらにanillinの局在とbasal processの分裂点が一致している場合があることが見いだされた。また,細胞分裂の進行に連れて塊状anillinの局在はbasal側からapical側に移動し,最終的に細胞体の分裂溝に引き継がれることがタイムラプス解析等により示された。我々の研究から少なくとも神経発生の初期段階において,神経上皮細胞のbasal processは細胞体分裂に先立って分裂し,その結果娘細胞に引き継がれる場合があることが示された。

 

(10) 赤核脊髄路細胞樹状突起におけるフィロポディア状突起とシナプス形成

村上富士夫(大阪大学大学院生命機能研究科)

 The formation of synaptic contacts is a crucial event which is achieved by complex interactions between incoming axons and the neurons in the target. We have focused on spine-like dendritic protrusions (SLDPs), which are transient pleomorphic protrusive structures seen in developing brains. Accumulating in vitro evidence suggested that the SLDP plays an important role in synaptogenetic interactions with axons. To test this idea, we examined whether the SLDPs are the preferential sites of synapse formation. The ultrastructure of biocytin-labeled corticorubral (CR) terminals was examined in serial thin sections during the period of synaptogenesis in newborn cats. We found that a major proportion (86%) of the CR synapses was formed on SLDPs. The presynaptic terminals were often invaginated by fine processes extending from the tips of SLDPs. Presumptive CR synapses were also found on SLDPs of HRP-labeled rubrospinal cells, suggesting that SLDPs postsynaptic to labeled CR terminals originate at least in part from rubrospinal cells. Thus, SLDPs may represent preferred sites of synapse formation and play a role in synaptogenic interactions during brain development.

 We also examined CR synapses in adult cats. Electron microscopic observation of serial thin sections of Phaseolus vulgaris-leucoagglutinin-labeled axons revealed that approximately 60% of CR terminals formed synapses on dendritic spines. CR axons terminated on dendritic spines originating from the intermediate or distal dendrites of rubrospinal cells (>200 mm apart from the soma), in contrast to kittens in which CR fibers terminate on SLDPs originating from the proximal dendrites (< 100 mm apart from the soma). Thus, CR synapses appear to undergo remarkable remodeling after initial termination on SLDP.

 

(11) 超高圧電子顕微鏡による神経細胞及びグリア細胞突起の三次元定量解析

浜 清(生理学研究所名誉教授)

 超高圧電子顕微鏡の高い電子線透過能を利用すると厚い生物試料の立体観察が可能である。生理学研究所の1000 kV HVEM は生物試料の3次元立体計測のための特性(ローテーションフリー,ズーム,長焦点対物レンズ等の光学系の他,0.1°の精度で±60°ユウセントリック傾斜が可能なサイドエントリー試料ホールダー)を備えた世界で初めての生物専用機である。演者等は±q°傾斜立体像を用いて3次元定量解析を行なう方法を開発し,厚さ3mmの横紋筋切片を用い横細管の3次元定量に成功した( Hama et al. 1985, Arii & Hama 1987)。

 神経細胞やグリア細胞の複雑な突起の3次元定量解析には厚い切片を用いたHVEM解析が特に有効である。

 ラット歯状回顆粒細胞のGolgi 染色標本から5 mmの連続切片を作成し,上記のHVEMステレオ解析法によって樹状突起棘の形状,長さ,数量と密度,表面積について3次元定量解析を行い興味ある所見を得た(Hama et al.1994)。

 星状グリア細胞の突起は脳内に極めて繊細,複雑な網目を作っていて,その広範な三次元定量解析は光学顕微鏡,連続超薄切片による再構築法,及びステレオ解析などでは不可能である。我々は−60°から+60°まで2°間隔の連続傾斜像から星状グリア細胞突起のトモグラフイ再構築を行って,その体積と表面積を計測し,星状グリア細胞の突起が極めて大きな表面積/体積比を持つ事を発見した(Hama et al. 2004)。此の事は神経細胞とグリア細胞間の緊密な機能的相関を考える上で重要な指標となる。

 Hama, K., Arii,T., and Nakamura,S., Insitu Experiments with High Voltage Electron Microscopes. H. Fujita ed, pp 455 -460, 1985.

 Arii, T. & Hama,K. J. Electron Microsc. 36: 177-1995, 1987

 Hama, K., Arii, T., and Kosaka, T., Microsc. Res. Tech. 29:

357-367, 1994.

 Hama,K, Arii,T., Katayama, K., Martone, M., and Ellisman, H. J. Neurocytol. 33: 277-285, 2004.

 

(12) 超高圧電顕によるカサゴ鰾筋の横行小管-筋小胞体複合構造立体構築に関するステレオ観察

鈴木 季直(神奈川大学理学部生物科学科)

 骨格筋(横紋筋)では,筋形質膜から筋小胞体への興奮伝達のため,横行小管(T-管)とそれを両側から挟み込む2つの筋小胞体終末槽がtriadを形成している。筆者と共同研究者は,横紋筋であるカサゴ鰾筋の収縮-弛緩にともなう細胞内Ca2動態を研究するためにまず筋線維の微細構造観察を行なったが,この筋では,同一筋線維内に規則的に分布するZ型とAI型の2種のtriadが含まれ,それらの分布境界領域には,triadの他に,2本のT-管と3つの筋小胞体終末槽からなるpentadと,3本のT-管と4つの筋小胞体終末槽からなるheptad (著者ら命名)が含まれていることを見出した(J. Electron Microsc. 52:337-347, 2003)。Triadより複雑なpentadやheptadの構築様式を明らかにするために,樹脂包埋試料から厚さ0.5 mmの切片を作製し,生理学研究所の超高圧電子顕微鏡(Hitachi H-1250M HVTEM)で観察し,ステレオ撮影した。その結果,筋節のZ帯部位にあるT-管が分枝し,両側に伸び,A帯とI帯の境界部位でZ帯と平行に走行し,それらを筋小胞体終末槽が取り囲むことでheptadが構築されることが明らかにされた。PentadはこのheptadのT-管3本のうち,A帯とI帯の境界部位にあるべき1本が欠けた変則的なheptadと考えられる。一般に,骨格筋は,筋種ごとに,2種のtriadのうちどちらか一方の型のみを含むが,本研究の結果は,AI型 triadがZ型triadから分化する可能性と,AI型 triadのみを含む骨格筋はZ型triadのみを含む骨格筋よりもさらに進化したレベルにあることを示唆した。

 

(13) 3-D reconstruction of plastid crystalline bodies during Sedum rotundifolium development

InSun Kim (Biology Department, Keimyung University)

 Employing HVEM and tomography, the present study attempted to reconstruct the 3-D plastid crystalline inclusion bodies detected during Sedum rotundifolium development. The 3-D reconstruction has been based on data attained from the tilting, tomography, and diffractogram. The plastid inclusion body differentiated during CAM metabolism and revealed quite peculiar structural pattern. The inclusion bodies were intrathylakoidal and non-membrane bounded structures. Being irregular in shape and variable in size, their structural attributes considerably affected the plastid morphology in early development. Fusion or branching was common between the inclusion bodies. The elements within the crystalline body exhibited either parallel or lattice arrangement depending on the section angle. The crystalline inclusions consisted of tubular elements exhibiting a hexagonal arrangement of the six substructures with a 17.9-18.6 nm periodicity between elements. Implications of such changes in the tubular inclusions in relation to CAM will be discussed.

 

(14) 胸腺ナース細胞は胸腺細胞分化のための動的微小環境を形成する
(Thymic nurse cells forming a dynamic microenvironment for thymocytes differentiation)

江崎太一(東京女子医科大学医学部解剖学・発生生物学講座)

 胸腺ナース細胞(Thymic nurse cells: TNC)は,その胞体内に多数の細胞を抱き込み特異な細胞複合体を形成した胸腺上皮細胞の一つである。本研究では,リンパ球過形成を伴った良性胸腺腫を自然発症するBUF/Mna系ラットの胸腺を用いて,TNCのin situにおける形態学的特徴を免疫組織学的・超微形態学的に検索し,その細胞生物学的意義を考察した。光顕および通常電顕の観察により,TNC内はリンパ球のみならずマクロファージを含む極めて多様な細胞集団から成ること,増殖細胞が存在すること,また胸腺ホルモンFTSや細胞接着因子ICAM-1などの存在が確認された。さらに,厚さ5mの連続切片を用いた超高圧電顕での観察において,TNC内では細胞同士がいくつかのコンパートメント毎に仕切られて包含されていること,さらにはTNC表層のコンパートメントから胸腺細胞が活発に出入りしていることが明らかとなった。以上より,TNC内は包含された細胞に多様性と増殖性ならびに移動性があり,極めて動的な状態であることが示された。そのことはTNCが胸腺細胞の分化・成熟のために極めて重要な微小環境を提供している可能性が強く示唆された。

 

(15) ウイルス感染細胞の全載標本作製による超高圧電子顕微鏡観察

吉田まり子(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科・病原ウイルス学分野)

 ウイルス感染細胞の細胞内部におけるウイルス粒子の存在様式を探るために,感染細胞の全載標本を作成して超高圧電子顕微鏡(HVEM)観察することを試みた。全載標本の観察には,1.細胞質周辺部は観察できるが,核を含む中心部は観察できない,2.ウイルス感染細胞の形態変化によっては内部の観察が困難,3.細胞表面上のウイルス粒子と内部のウイルス粒子の区別が困難などの問題点がある。そこで,解決策として,解析の目的をウイルス粒子とそれを取り囲む空胞構造の相互関係に絞り,表面上の粒子と細胞内部の粒子を区別するために,HVEMによるステレオ観察およびHVEMと走査型電子顕微鏡(SEM)による同一部位観察を行った。単純ヘルペスウイルス1型感染細胞では,ゴルジ由来の細胞質内空胞に,多数のウイルス粒子が集積した像を観察でき,細胞周辺部の粗面小胞体の内部にはウイルス粒子を認めなかった。サイトメガロウイルス感染細胞では,HVEMで核内封入体構造が明瞭に観察でき,densebodyと呼ばれる異型粒子の構造が成熟粒子と同様に出芽によって空胞膜に包まれ,ヌクレオカプシドを含まないことが明瞭になった。ポックスウイルスでは,細胞外に放出された成熟粒子はゴルジ由来空胞膜または表面膜由来の外膜を被っていることが明白になった。このように,全載標本によるウイルス感染細胞のHVEM観察は,立体的な空胞構造におけるウイルス粒子と膜との相互関係を探るのに非常に有用であった。

 

(16) 神経系培養細胞における神経栄養因子受容体の分布

遠藤泰久(京都工芸繊維大学)

 神経系培養細胞PC12を用い神経成長因子受容体(TrkA)が細胞膜陥入構造であるカベオラに関連するか否か,免疫電顕および超高圧電顕による三次元立体再構築により検討した。電顕試料用メッシュ上に培養した細胞をTrkA,カベオリン-1(カベオラ関連タンパク質),クラスリン(飲込み小胞の被覆タンパク質)の抗体で免疫染色し臨界点乾燥を施し,超高圧電顕により傾斜撮影を行ない3次元再構築ソフト(r-image及びIMOD)で解析した。TrkA免疫反応はカベオラとは形態の異なる細胞膜直下の陥入構造が多数集まったクラスターやlysosomeに主に認められた。カベオリン-1免疫反応はカベオラ構造を示さず,細胞質中に網目状に分布していた。クラスリン免疫反応は飲込み小胞や endosome に明瞭に認められた。恐らくTrkAは神経成長因子と結合した後,クラスリン依存的経路で細胞質中に取り込まれ,カベオリンは細胞質中の輸送系に何らかの関与をしていると考えられる。

 

(17) ステロイドホルモンによる神経細胞機能形態調節機構の解明
−超高圧電子顕微鏡によるアプローチ−

小澤一史(日本医科大学・大学院医学研究科・生体制御形態科学部門)

 副腎皮質から分泌されるコルチコステロイドは脂溶性物質ホルモンであり,血液脳血管関門を容易に通過して,受容体を介することによって神経系の細胞に直接作用する。脳内におけるコルチコステロイド受容体には,ミネラルコルチコイド受容体(mineralocorticoid receptor, MR)とグルココルチコイド受容体(glucocorticoid recdptor, GR)が知られている。この2つの受容体は海馬領域において豊富に分布しており,血中コルチコステロンの変動に伴い両者の受容体の機能的調節がなされている。

 血中コルチコステロンの変動によって,海馬の錐体細胞(CA1, CA2領域)や歯状回顆粒細胞において機能的な変動のみならず,樹状突起の棘の変化を中心とした,形態学的な変動もダイナミックに生じることが,超高圧電子顕微鏡を用いた三次元観察によって明らかとなった。海馬は脳におけるストレス応答の中心として考えられており,この反応性が視床下部−下垂体−副腎系といった実際のストレス応答軸に直接関わることが考えられている。従って,海馬領域におけるコルチコステロンへの反応性やその際の海馬神経細胞における形態変化の解析は,ストレス現象の解明に直接つながることと考えられる。血中のコルチコステロンの変動が,GRの発現調節や神経細胞の機能発現調節のみならず,神経細胞の構造,特にシナプス形成と密接な関係のある樹状突起棘の密度や形状とも密接に関係する可能性が見出されたことは,神経間の情報伝達システムを考える上で興味深い結果が得られたと考えている。特に,超高圧電子顕微鏡によるステレオ観察が,このような解析に有用であることも興味深く,今後さらに超高圧電子顕微鏡によるトモグラフィー観察を合わせたより詳細な観察の展開を考えている。

 

(18) 網膜ニューロン間の電気シナプス:ギャップ結合における開口チャネル割合の計測

日高 聰(藤田保健衛生大学医学部)

 ギャップ結合はニューロン間の電気シナプスを形成する。ニューロン間電気シナプスにおける細胞間チャネルの開口割合を計測した。視覚系の主要な興奮性ニューロン・a型網膜神経節細胞は同一型との間で電気シナプスを形成している。二連のホールセルパッチクランプ法で細胞間ギャップ結合のチャネルコンダクタンスは最大2.45nS(平均1.35nS, n=9)であった。2つの細胞間で樹状突起同士の接触回数は平均7回であった(n=12)。超高圧電子顕微鏡を用いて5mmの厚切り切片の標本で,樹状突起間の接触部位にギャップ結合を同定し,そのギャップ結合の大きさを測定した結果,平均0.86mmの直径であった(n=14)。ギャップ結合蛋白サブユニット・コネキシン36がa型網膜神経節細胞間のギャップ結合を構成している結果(単一チャネルコンダクタンス,15pS)と,ギャップ結合チャネル粒子・コネクソンの密度は 5,180 particles/mm2 であることから,電気シナプスの細胞間チャネルの開口割合は0.8%と計算された。電気シナプスがa型網膜神経節細胞間で同期興奮を引き起こすために,この細胞間開口チャネルの機能が評価された。a型網膜神経節細胞間にあるギャップ結合の開口チャネルの割合は,電気シナプスの形成がよく知られている網膜アマクリン細胞間や水平細胞間のものに匹敵した。

 

(19) 海馬歯状回mossy cellの背腹方向での構造的,化学的,電気生理学的差異

小坂俊夫(九州大学大学院 医学研究院 基礎医学部門 神経形態学分野)

 海馬歯状回mossy cellはhilus に存在する大型多極性のグルタメイトを神経伝達物質とする興奮性ニューロンであり,その樹状突起近位部(及び種によっては細胞体そのもの)に顆粒細胞のmossy terminals からシナプスを受ける特徴的な大型の複雑な複合スパイン thorny excrescences を有している。マウスやハムスターではカルシウム結合蛋白calretinin の含有,thorny excrescencesの構造の面で背腹側の長軸方向で明確な差異がある。すなわち,背側海馬のmossy cellは腹側海馬のmossy cellより複雑なthorny excrescencesを有し,一方 calretininは背側海馬のmossy cellに陽性で背側海馬の mossy cell では陰性である。更に興味深いことに電気生理学的性質においても大きな差異があることが明らかとなった。スライスパッチクランプ法で,マウス海馬歯状回mossy cell の電気生理学的性質を検討したところ,背側海馬のmossy cell は自発的なEPSPの頻度,最大値が腹側海馬の mossy cellより大きかった。更に,シナプス結合を遮断すると膜電位が約−50mV程度に脱分極し,背側海馬のmossy cell はスパイク発火がなくなったが,腹側海馬のmossy cell はリズム的バースト発火を示した。この腹側海馬のmossy cell のリズム的発火に INaP が大きな役割を果たしていることが明らかになった。本研究は藤瀬昇(熊本大),劉陽(九大),村川亮(九大),神野尚三(九大),石塚智(九工大)氏との共同研究である。

 

(20) 小脳生後発達過程におけるバーグマングリア細胞の解析

古家園子,山口 登,有井達夫(生理学研究所)

 エンドセリン(ET)は血管平滑筋を持続的に収縮させるだけでなく,種々の細胞の増殖や分化に関与していることが明らかになっている。小脳において,バーグマングリアにETB受容体のmRNAが豊富に存在することがin situ hybridization法で報告されていた。そこで,ETB受容体の一部欠損を持つAR系統(sl劣性遺伝子を持つ)の野生型とsl/slラットを用いて,生後発生過程におけるETAおよびETB受容体の発現を免疫電顕で観察した。その結果,野生型においては,生後5日からETB受容体が発現し,生後2週齢までは細胞膜およびゴルジ装置に局在し,3週齢以降では,ゴルジ装置にのみ局在した。ETA受容体は生後7日から2週齢まで細胞全体に存在した。一方,sl/slラットではETB受容体は検出できず,生後5日から2週齢までETA受容体が発現していた。すなわち,sl/slラットではETB受容体の替わりにETA受容体が生後5日に発現し,代償的に機能していることが考えられる。次に,野生型とsl/slラットの小脳のゴルジ染色標本を作製し,3-4mmの厚切り切片を超高圧電顕で観察し,3次元構築を行った。現在,バーグマングリアがプルキンエ細胞のスパインと平行線維間のシナプスを包んでいる部位と,非シナプス部位に分け,単位体積あたりのバーグマングリアの膜表面積の値を,野生型,sl/slラットの生後発生過程について解析している。


このページの先頭へ年報目次へ戻る生理研ホームページへ
Copyright(C) 2006 National Institute for Physiological Sciences