生理学研究所年報 第28巻
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動物実験センター

【概要】

 平成18年度に掲げた以下の事業計画について,すべて遂行することができた。

1.

明大寺地区の本館地下SPF化:第二期工事完了 実験室の工事,個別換気システム飼育ラックの導入,焼却炉の撤去など。
 

2.

本館地下SPF化に伴う明大寺地区シャワー室の改修工事完了。
 

3.

サルの飼育ケージに対する施錠設置(全ケージ完了)
 

4.

実験時におけるサルの移動経路の変更
 

5.

法令改正への対応
1) ケタミン麻薬指定に対応する麻薬研究者免許の取得
2) サルの飼育許可取得
3) 自然科学研究機構動物実験規程の制定(2007/2/23) 教育訓練の実施(3回)
 

6.

サル飼育担当者の所属の明確化
 

7.

動物実験センターの検査体制の充実 腫瘍細胞の移植,凍結保存技術の確立 血液凝固系検査 麻薬保管庫の設置 以上を実施。
 

8.

動物実験センターの研究および技術開発・獲得
 

9.

サル,イヌ,ネコ:個体識別用マイクロチップの適用(全頭実施)
 

10.

山手地区:SPF飼育室と各研究室とを結ぶネットワークの構築完了
 

11.

エレベーター,ダムウェイターの改修
 

12.

実験動物技術者二級資格取得

 以上12項目の達成により,センターでの業務にかかわる利便性および信頼性が少しでも改善できればと願う次第である。今後も毎年事業計画を示し,動物実験センター運営委員会の承認に基づいて,センターのサービス向上を図る所存である。

<明大寺地区の本館地下SPF化>
 2005年度より3か年計画で,明大寺地区の本館地下SPF化を行っている。昨年度の第一期工事では,B-16, B-17の改修工事および飼育ラック,ケージ交換ステーション,バイオクリーンベンチの導入を実施した。2年目の第二期工事では,B-9, B-10, B-13, B-14の改修工事,個別換気ケージシステムの追加導入およびケージ交換ステーション・クリーンベンチの導入まで進展した。さらにダイオキシンの問題に対応すべく,ダイオキシン濃度を測定して焼却炉の撤去を行った。生理学研究所および基礎生物学研究所のご協力により,当初の計画を大幅に前倒しで進めることができ,全工程の約9割まで達成できた。最終年度の第三期工事では,残りの小部屋・トイレの改修工事および扉の設置を予定している。2007年9月に利用者へのSPF施設オープンを目指している。

<研究・技術開発>
 実験動物の皮膚科学・形成外科学領域の研究および伴侶動物の病態研究

 当センターでは,下記の研究を進めているところである。2006年度より,学会発表と論文投稿を定常的に行い,施設としての研究活動を開始した。

1.

皮膚科学および形成外科学領域を中心とした病態モデルの作出:ヘアレス動物およびニホンザルの皮膚を用いて,表皮あるいは真皮に存在するメラノサイトの機能を調べている。ヘアレス動物では表皮にメラノサイトを,そしてニホンザルでは真皮にメラノサイトを有することを見いだした。前者は紫外線に対するメラノサイトの挙動を調べ,後者は真皮メラノサイトーシスのモデル動物として研究を進めている。
 

2.

伴侶動物の腫瘍細胞バンクの創設:動物細胞利用実用化として伴侶動物の腫瘍細胞を生体培養し,機能性腫瘍の特徴を調べている。確立できた腫瘍細胞株は凍結保存し,伴侶動物の腫瘍細胞バンクの創設を試みている。現在までに,イヌで5ライン,ネコで1ラインの腫瘍株を確立し得た。
 

3.

伴侶動物の肥満症の病態研究:イヌおよびネコの肥満症を臨床病理学的に調べ,治療法の確立を目指している。今年度は,肥満症の動物を作出することができた。
 

4.

モルモットを用いた妊娠中毒症の研究:モルモットの妊娠中毒症を臨床病理学的および病理組織学的に検査し,この病態解明を実施している。
 

5.

実験動物飼育管理技術の開発:麻酔方法,エンリッチメントの評価,給水システムの改善,ストレスの評価と軽減などを検討している。このうち,サルの麻酔方法については,メデトミジン−ミダゾラム組み合わせ法によるニホンザルの不動化を確立した。現在,ケタミンの代替法として利用している。マウスのエンリッチメントとしては,nest boxをミュータントマウスに適用して生存率の改善効果を確かめ,ストレス軽減の有無を評価している。給水システムの改善では,従来の方式による漏水事故を調べ,さらに改善方法の一つとして給水パックを導入し,その性能を確認した。その他として,体外受精における培地を改良し,胚操作技術の飛躍的改善に結びつけることができた。 

<終わりに>
 本年度をもって,13年間動物実験センター長を務められた池中教授がセンター長職を退任され,平成19年度からは伊佐教授が新センター長に就任されることを申し添えます。

 


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