生理学研究所年報 第28巻 | |
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技術課大庭明生 1.概要今年度の人事は,生体膜研究部門・河西教授の転出に伴い細胞器官研究系技術係・高橋直樹技術係員を生体情報系技術係・福田直美技術係員の育児休業中の代行として細胞生理研究部門に配置し,復帰後は生体情報解析室に配置換えした。行動・代謝分子解析センター・遺伝子改変動物作製室の立ち上げに対して生体情報研究系技術係・三宝誠技術係員の配置を行い,また行動様式解析室の立ち上げ準備に対して動物実験センター・動物実験技術係・佐治俊幸技術主任を併任とした。 課の研究活動への貢献を一層進めるため下記の事業を実施した。 ①技術課研修セミナーの開催 研究所の今後の研究および研究体制の動向,研究を支える技術,その技術の今後の方向性と重要性,そのなかで技術職員の負うべき責任を基本テ−マに,課のあるべき方向と今後の技術動向を探ることを目的に第8回技術課セミナーとともに,核融合科学研究所,分子科学研究所,基礎生物学研究所の技術職員を招聘し,その分野の最新情報を聴講する特別研修セミナーおよび岡崎ものづくり推進協議会を通して岡崎に開発型企業を招聘し,企業の開発現場の現況を聴講する岡崎開発型企業セミナーを開催し,他機関との技術連携活動を推進した。また技術課長が岡崎ものづくり推進協議会から招聘を受け,技術課の研究現場の技術活動について紹介をした。 ②生理科学実験技術トレーニングコースでの技術指導 電気生理の実験手法の一つであるパッチクランプ実験をテーマに,『PICマイコンによる温度コントローラーとバスチェンバーの作製』と『C言語によるPICプログラミング』の2コースを担当し,3人の若手研究者の技術指導に当たった。 ③科学研究費補助金(奨励研究)申請の推進 業務を展開,推進していくための問題意識の養成,その解決のための計画および方法の企画能力の養成,さらにはその表現力と説明力の養成を通じて,業務上の技術力の総合的な向上を図ることを目的に標記の申請を行い,下記の2課題の採択を得た。 (1)加藤勝巳:実験機材製作時の非金属材料選定指針の検討 (2)佐治俊幸:マウス,ラット用飲水量連続計測装置の開発 ④奨励研究採択シンポジウムの開催 時代要請に対応した技術認識と向上に立った技術職員の業務の社会的開示を推進するために奨励研究採択者による第3回の報告会を15演題で行った。この報告は『生理学技術研究会報告(第29号)』にまとめた。 ⑤成茂神経科学研究助成基金の申請の推進 課の自立的運営のためには独自の運営資金の確保が重要な課題である。今回,女性技術職員,産学連携,サイエンスパートナーをキーワードに,石原博美技術係員を代表者にして奨励研究採択課題技術シンポジウムの開催経費を申請し,採択された。 ⑥放送大学利用による専門技術研修の受講 研究の高度化と多様化の進むなかで技術職員の研修は重要な課題である。今回研修科目として『脳科学の進歩』,『分子生物学』,『統計学入門』『光電子技術とIT社会』,『ベンチャー企業論』を選び,10名が受講した。 ⑦生理学技術研究会の開催 全国の大学等の技術職員の技術連携と交流を目的に 第29回生理学技術研究会を基礎生物学研究所・技術課と合同で開催した(平成19年2月15日−16日)。会では,口演発表が25題,ポスター発表が43題あり,研修講演として『温度感知の分子機構』(富永真琴,生理学研究所)を行った。また技術課・三宝誠技術職員が『クローン技術』を話題講演をした。これらの報告は『生理学技術研究会報告(第29号)』にまとめた。 ⑧東海北陸地区等の技術職員研修 東海北陸地区の大学等の技術職員の技術交流と向上を目的に毎年当番校による技術研修が行われているが,今年度は電気・電子コース(富山大学)を受講した。また実験動物関係教職員高度技術研修(熊本大学),総合技術研究会(名古屋大学),静岡大学技術研究会(静岡大学),高エネルギー加速器研究機構技術職員シンポジウム(高エネルギー加速器研究機構),文部科学省・研究機関等における実験動物等の実施に関する基本方針説明会(京都大学,順天堂大学),国立大学法人動物実験施設協議会(富山大学),感染症診断・予防実技研修会(実験動物中央研究所),神経科学学会(京都)に参加し,業務の研究支援力の強化を図った。 ⑨労働安全衛生資格取得および技能講習受講 研究所の安全衛生を課業務として充実するために下記の資格取得と技能受講を行った。 (1)衛生工学衛生管理者,(2)第1種衛生管理者,(3)第1種圧力容器取扱作業主任者, (4)特定化学物質等作業主任者,(5)職場巡視・点検セミナー,(6)リスクアセスメント実務研修会 また,安全衛生に関する情報交換会(核融合科学研究所)に参加し,安全衛生に関する知見を深めた。 ⑩第1回自然科学研究機構技術研究会の開催 技術職員の業務の紹介と業務連携を目的に,5月22,23日の両日,国立天文台三鷹で開催した。会では24演題の発表があり,詳細は『第1回自然科学研究機構技術研究会集録』としてまとめた。 ⑪岡崎3機関技術課長会と機構技術会議の開催 岡崎3研究所の動向の意見交換を,事務センターの総務課長,施設課長を交え毎月1回開催している。また核融合科学研究所,時に国立天文台も交え毎月1回の相互訪問による情報交換も行っている。 ⑫核融合科学研究所技術部の外部評価への参加 技術部の研究支援体制等に関する外部評価の専門委員の委託を受け,技術部の研究支援活動の説明と現場視察を通して評価を行った。評価作業を通して研究支援活動の様々なあり方を理解する事が出来た。
2.施設の運営状況〈1〉統合生理研究系(1)生体磁気計測装置室 永田 治 【概要】 本年度は全頭型生体磁気計測装置において各種実験が順調におこなわれており,大きなトラブルは報告されていないが,システム管理上発生した問題および改修点は次の通りである。 4台設置されているA/Dコンバータユニット用電源の内1台が遅延リレー不良により起動不能になったため修理を行った。また,起動に時間を要するものがもう1台あるため交換予定であるが,起動後は安定しているため実験スケデュールによって交換予定を調整したい。最終的には部品の耐久性を考慮してすべての電源において交換を予定している。 刺激装置としては画像提示用プロジェクタのランプが使用耐久時間の3000時間を超えたため全体的な輝度低下が発生したため新規交換し刺激投影面全体において輝度差が最大1〜5%以内となるよう調整をおこなったが,次年度以降に部品が生産中止となるため予備部品を1本調達することとした。さらにスクリーン背部壁面に乱反射によるフレア対策を実施した。 解析システムにおいてはデータ記録容量に不足が生じたため,ハードディスクサーバにRAID5による領域を480GByte増設した。なお,生理研基幹に接続する端末の増加に伴い新規のIP取得が困難となってきたため,すべての端末において新規のアドレスへ変更を行い,同時にローカルエリアにおけるゲートウェイのアドレス変更もおこなった。 その他,三次元MRI画像解析環境の更新においては,現在の機材に一部障害が発生しているため更新を急いでいるが,主要機能のうち70%程度が終了しており,最終的には次年度において残りの機能とユーザインタフェース等の整備をおこない完了できる予定である。 平成18年度 生体磁気計測装置共同利用実験の実施状況
*総日数はセンサを使用した計測実験の総日数であり,解析装置の使用日数は含まれていない。
〈2〉脳機能計測センター(1)形態情報解析室 山口 登 【超高圧電子顕微鏡利用状況】 今年度における超高圧電子顕微鏡共同利用実験は,合計14課題が採択され,全ての課題が実施された。これらの共同実験の成果は,超高圧電子顕微鏡共同利用実験報告の章に詳述されている。超高圧電子顕微鏡の年間の利用状況を表にまとめたので下記に示す。稼動率は,利用日数と使用可能日数より求めている。本年度の主な超高圧電子顕微鏡の改良・修理としては,レンズ冷却水用流量センサーおよび温度センサーの取り付け,フィルム送り機構の修理,フィルム乾燥機のTMP冷却用ファンの取り付け作業などが行われた。 2006年度 超高圧電顕月別稼動率
フィラメント点灯時間 480.7時間 使用フィルム枚数 7,697枚
(2)機能情報解析室 佐藤 茂基 【概要】 今年度の装置整備状況は,主な事項として次の通りである。今年度は,6月に制御用電源ユニットが故障し部品の交換修理を行ったが,7月に再度不調になり電源ユニットの修理交換を行った。 2月にシム電源が不調になり点検を行ったが,修理交換するユニットがメーカーに無かった為,現在交換ユニット待ちである。不調だがMRIの撮影は可能である。 平成18年度のMR装置利用実績を別表に記す。
【機器利用率】 平成18年度リアルタイム装置月別稼働率
*保守以外の祝祭日は,使用可能日に含めた。
(3)生体情報解析室 吉村伸明,村田安永 【概要】 生理学研究所における当施設の利用形態は,生体情報解析システム(高機能ワークステーション+アプリケーション,高画質フルカラープリンタ等),情報サービス(e-mail,WWW等),プログラム開発及びメディア変換などに分類することができる。また,これらを円滑に運用していくためには,所内LANの管理,整備や情報セキュリティの維持も重要である。このような現状をふまえたうえで,岡崎情報ネットワーク管理室とも連携しながら,施設整備を進めている。 生体情報解析システムは,データ解析・可視化,信号処理,画像処理,数式演算,統計処理,電子回路設計などの多くのアプリケーションを備え,これらは高機能ワークステーション上での利用のみならず,各部門施設のPCに直接導入し,ライセンスサーバで認証を行うことでの利用も可能である。登録者は104名で,研究推進のための積極的な利用がある。 生理学研究所のネットワーク利用状況は,メール登録者が436名。WWW登録者が65名。LANの端末数が1686台。所内向けのダイヤルアップサービスは24回/週,2時間/週。VPNサービスは23回/週,28時間/週の利用があった。 所外からのメール受信数は35,000通/週。所外へのメール発信数は5,100通/週。WWWは4,600台/週の端末から62,000ページ/週の閲覧があった。
〈3〉生理研・基生研共通施設(1)電子顕微鏡室 前橋 寛 【概要】 今年度も,明大寺地区と山手地区の透過型電子顕微鏡各1台(JEM-1200EX,JEM-1010)の保守契約(年1回点検)を継続した。 JEM-1010本体と付属のCCDカメラの倍率表示等を同期させるため,電顕本体にカメラ制御基板を挿入した。 保守契約をしていないJEM-1200EX(B-15号室)は利用頻度が少ない為,一時的にナノ形態生理部門に貸し出すこととなり,山手地区に移転した。 共焦点レーザー顕微鏡(LSM-510)のArKrレーザー管が寿命となり交換した。さらに,制御用コンピュータが動作不良となり,新しいコンピュータと交換した。それに伴い制御用ソフトウェアがバージョンアップ(Ver.2.0からVer.3.2)しAverage,Scan Zoom機能の強化および深部と表層部の明るさ補正機能,2D Deconvolution等追加された。 2006年度電子顕微鏡講習会は,電子顕微鏡の取扱いおよび調整(明大寺地区コースJEM-1200EX,山手地区コースJEM-1010使用)という内容で行われ,計9名の参加があった。
【研究内容一覧表】 本年度,室を利用してなされた研究の総件数は44件であった。機構内では31件あり,機構外は,国内で8件,国外では中国,ハンガリー,オーストリアの研究者による利用が5件あった。下記の表はその研究部門・施設,大学,研究所と研究内容の一覧表である。
利用内容一覧表
所外(国内)
所外(国外)
(2)機器研究試作室 加藤勝巳 【概要】 機器研究試作室は多種多様な医学・生物学用実験機器の開発と改良,それに関わる技術指導,技術相談を室の役割としている。今,我々の周りには便利な物品があふれ,自分で工夫して作ったり,改良する機会が少なくなり,新しい研究には新しい研究機器を作るという『ものづくり』が希薄になり,一方で,最近の研究の多様化は室に新たな役割の模索を迫っている。そうした認識のもと,『ものづくり』能力の重要性の理解と機械工作ニーズの新たな発掘と展開を目指すために,室では,2000年度から,医学・生物学の実験研究に使用される実験装置や器具を題材にして,機械工作の基礎的知識を実習主体で行う機械工作基礎講座を開講し,2007年度は,2006年度同様,汎用工作機械の使用方法を主体に実習する初級コースと応用コース(アクリル樹脂製パッチクランプ用チェンバー,簡易型一軸式マニュプレータ,レンズ及びフィルターホルダーの3テーマから受講希望者が選択)の二コースを開講する準備を進めている。参加希望者は,二コース合わせ生理研7名,基生研2名で,初級コースは半日を1回,応用コースはガイダンスの後,マンツーマンで3〜4回の講習を行う予定である。 また,生理学研究所では,山手地区に移転した研究室のために,2005年4月に工作室を開設し,利用者のための安全及び利用講習会を,毎年機器研究試作室が依頼を受けて実施している。 なお,機器研究試作室の平成18年度の利用状況は,以下の通りである。
機器研究試作室利用機器表 (件数)
機器研究試作室部門別利用状況
〈4〉動物実験センター(岡崎共通研究施設)佐治俊幸,廣江猛,窪田美津子,小池崇子 【概要】 3年計画による明大寺地区陸生動物室のSPF化の第二期改修を行った。予算として生理学研究所から1,930万円,基礎生物学研究所から500万円,及びセンターの自助努力で300万円が計上された。本年度は,2室のSPF化(1室は飼育室,他の1室は実験室),個別換気方式の飼育ラック,ケージ交換ステーション等とクリーン飼育室及び実験室の改修,焼却炉の撤去工事を行った。改修の最終年度にあたる平成19年度には,地下の残る実験室等の改修と廊下の改修を行う予定である。 外来生物法の制定及び感染症予防法の改正による環境省及び厚生労働省へアカゲザル,カニクイザル,タイワンザルの申請書に引き続き,その他のマカク属サルに関し,動物愛護法の改正による飼育許可を受けた。 自然科学研究機構動物実験規定が制定され,飼育室及び実験室の指定申請を行い,教育訓練を実施した。 実験動物の授受に関し,年間で54件の導入と43件の供与があった。平均すると毎週2件の授受が行われており,それに伴う条件や書類の確認,ユーザーへのアドバイスに費やされる時間が増大している。 【受精卵凍結・クリーンアップ事業】 平成17年度と比べ,受精卵凍結保存依頼は減少し,導入動物に対するクリーンアップはほぼ同様の依頼があった。過去に当センターで受精卵凍結した胚に関する融解移植依頼は,平成17年度より増加した。また今回行った融解移植の中には,事業を始めた当初の1998年に凍結した胚も含まれていたが,産仔を得ることが出来,問題なく長期保存されていることも証明された。 実施件数としては,受精卵凍結保存がのべ20件,クリーンアップ兼受精卵凍結保存がのべ6件,過去に当センターで受精卵凍結した胚の融解・移植はのべ6件であった。 【明大寺地区 陸生動物室】 平成18年度の飼育室利用部門数は,32研究部門(生理研17部門,基生研7部門,統合バイオサイエンスセンター5部門,他3部門)であった。 動物飼育数は減少の傾向を示している。飼育費等の負担金徴収のために,飼育数を抑える傾向があるのだろうか。そこで,空きスペースを利用し,山手地区の利用者も明大寺地区の飼育室が使用できるようにした。また,サルの搬入数が増加し,検疫室が常時使用されている状態で一年間が経過した。これに伴い,サルケージ洗浄等に係る作業員の負担が増加している。 【山手地区動物実験センター分室】 平成18年度の飼育室利用部門数は,12研究部門(生理研5部門,基生研2部門,統合バイオサイエンスセンター5部門)であった。 利用者講習会を毎月開催するとともに,陸生動物利用者には実務講習会を実施している。各受講者はそれぞれ37名,35名であった。 全SPF飼育室およびマウス・ラット一時保管室2の病原微生物モニタリングが,3ヶ月に1回のペースで実施され,異常は検出されなかった。 また,ハエ準備室をアリマキ飼育室として,利用を開始した。 【明大寺及び山手地区 水生動物室】 平成18年度の水生動物室利用状況は,生理研・基生研両研究所あわせて7部門・施設の利用があった。 平成19年度より基礎生物学研究所の耐震補強工事に伴う水生動物室の改修工事が計画されており,その改修内容を検討している。この改修のために本年度は水槽類の機器の業者による修理を極力行わずに,手持ちの補修部品で修理を行うか,大きな故障時には使用中止にすることとした。
陸生動物 部門別・動物種別搬入数(平成18年度)
水生動物 月別・動物種別搬入数(平成18年度)
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