生理学研究所年報 第29巻
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動物実験センター

【概要】

 平成19年度に掲げた以下の事業計画について,途中修正を加えつつ実施した。

1.

明大寺地区地下SPF化の第三期工事終了
最終年度の今期は残りの小部屋・トイレの改修工事および扉の設置を果たし,器具・機材の搬入を行った。2008年4月オープンに向けて,個別換気ケージシステムを用いたSPF施設の利用者説明会 (2/29) を開催し(教育訓練も兼ねた),施設稼働準備はほぼ整った。
 

2.

利用者徴収金の変更
下期より実施し,計画通りの歳入を得た。
 

3.

自然科学研究機構動物実験規定に基づく動物実験の実施
動物実験計画書および結果報告書を提出して,動物実験を実施した。新しいシステムに移行したが,支障なく動物実験を進めることができた。
 

4.

胚操作業務
外部飼育依託業務の2名について,胚操作技術を習得させ,現在業務として実施中である。
6月から6か月間,木・金曜日に全日集中してマスターした。胚操作定常業務および本館2階・新館3階のクリーン化のためである。
 

5.

新館3階および本館2階のクリーン化
11月開始を目指したが,本年度は生理学研究所負担による病原微生物・寄生虫の検査(本館2階,新館3階)に留まった。
その結果,4室で病原微生物が見つかり,事故対策委員会を招集した。長年,普通動物施設に存在した病原微生物であり,完全撲滅することを目指し,研究環境を整える。
自然科学研究機構の普通環境清浄度レベル(国動協の定めるカテゴリーAおよびBが陰性)を定め,新館3階だけでなく,本館2階もクリーン化を図る。感染対策説明会(2008.4.21)を開催して,現状および今後の方針を明示した。岡崎の3つのSPF施設を守るためにもクリーン化を進める。
 

6.

全実験動物の搬入・搬出のtraceability確保
国動協加盟校でも達成できている施設は数少なく,今後さらに充実させたい。
 

7.

実験動物技術者二級資格取得
1名が受験して資格を取得することができた。これにより,有資格者が合計5名となった。

<研究・技術開発>
実験動物の皮膚科学・形成外科学領域の研究および伴侶動物の病態研究

 当センターでは,引き続き下記の研究を進めているところである。2006年度より,学会発表と論文投稿を定常的に行い,施設としての研究活動を開始した。本年度は生理学研究所研究会と学会を開催でき,他部門と同様な活動状況に漸く達した。

 皮膚科学および形成外科学領域を中心とした病態モデルの作出:ヘアレス動物およびニホンザルの皮膚を用いて,表皮あるいは真皮に存在するメラノサイトの機能を調べている。ヘアレス動物では表皮にメラノサイトを,そしてニホンザルでは真皮にメラノサイトを有する。本年度は真皮メラノサイトーシスに対する治療方法の検討を行った。また,金属アレルギーおよび光線アレルギーのモデル実験を行った。形成外科領域では創傷被覆材の評価法を動物実験で行った。

 伴侶動物の腫瘍細胞バンクの創設:動物細胞利用実用化として伴侶動物の腫瘍細胞を生体培養し,機能性腫瘍の特徴を調べている。確立できた腫瘍細胞株は凍結保存し,伴侶動物の腫瘍細胞バンクの創設を試みている。現在までに,イヌとネコで10ラインの腫瘍株を確立し得た。機能性腫瘍と思われる腫瘍株を見いだし,今後さらに掘り下げる。伴侶動物に長い年月をかけて自然発生した腫瘍細胞を利用して,ヒトの腫瘍に対する診断・治療技術を推し進める方法であり,従来の実験動物に人為的に腫瘍を誘発させて研究を推進する方法とは異なる点で,医学部の臨床系が注目している。獣医領域の研究から医学分野に情報を発信できれば何よりと期待している。

 実験動物飼育管理技術の開発:麻酔方法,環境エンリッチメントの評価,給水システムの改善,ストレスの評価と軽減などを検討している。このうち,サルの麻酔方法については,メデトミジン−ミダゾラム組み合わせ法によるニホンザルの不動化を確立し実用に供している。他の研究機関でも利用され定番化している。マウスのエンリッチメントとしては,紙製のnest boxをミュータントマウスに適用して生存率の改善効果を確認できた。給水システムの改善として給水パックを導入し,従来法(給水ビン方式)と比較したが,格段の違いを見いだせなかった。

 その他:実験動物臨床医学における救急医療に着手した。また,サル類のcase reportとして副腎皮質機能亢進症の病態およびnomaの治療成績についても検証した。これらの症例をヒトや伴侶動物の病態と比較して,類似点あるいは相違点を探りつつある。

 


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