生理学研究所年報 第29巻 | |
磁気共鳴装置共同利用実験報告 | ![]() ![]() |
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1.非侵襲統合脳機能計測技術を用いた高次視覚処理の研究岩木直(独立行政法人産業技術総合研究所) 網膜における視覚刺激の「動き」に基づいて対象の物体を知覚する場合,低次視覚野から頭頂部へ至る背側視覚経路と側頭部へ至る腹側視覚経路の両方が寄与していると考えられる。本研究は,高次視覚情報処理にかかわる複数の脳領域間における神経活動の相互作用を,MEGとfMRIの両方を用いて得られる高精度な脳神経活動可視化技術を用いて,定量的に評価することを目的としている。 このための第一段階として,視覚刺激の動きから物体が知覚される,MEG実験用の視覚刺激を作成するとともに,対応するMEGとfMRI実験データを統合的に解析する技術の開発を進めた。具体的には,申請者がこれまでの研究で開発してきたMEGデータを用いた脳内活動分布可視化アルゴリズムをベースに,fMRI計測データから得られる脳内活動の空間分布を先見情報として用いる統合データ解析モデルを作成した。すなわち,fMRIで得られる活動マップを,MEGデータからの脳内神経電流分布推定問題に対する先見情報として組み込むことにより,電気生理学的計測と血液動力学的計測で得られる脳活動データを統合的に扱うことのできるモデルを開発した。 上記のMEG/fMRIデータ解析技術を用いて,視覚刺激の動きに基づく対象知覚にともなうMEG/fMRIデータ(平成21年度計測予定)の解析を行い,その脳活動ダイナミクスの高精度な可視化を図る。
2.磁気共鳴画像装置による脳賦活検査を用いたヒトの情動と
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尾上浩隆(独立行政法人理化学研究所 分子イメージング研究プログラム)
これまでに我々は,マカクサル(アカゲサル)に陽電子断層撮像法 (ositron emission tomography, PET) を用いた非侵襲的な脳機能イメージング法を適用して,視覚認知,時間知覚,記憶・学習などの脳高次機能に関わる神経機構について明らかにしてきた。小型の霊長類であるマーモセットには,ヒトの社会適応不全の動物モデルとして,小家族の集合体という社会構造の類似性,効率的な繁殖サイクルなど,マカクサルにはない霊長類動物モデルとしての特徴を持つ。また,非侵襲的に生体内分子動態を観察する分子イメージング技術は,遺伝/環境―機能分子―脳内回路―行動連関を解くために有用な技術である。しかし,これまでにマーモセットを用いた行動評価系に基づく分子イメージング研究は実現されていない。昨年度は,ヒト用のヘッドコイルやマカクサル用に特注されたサーフェースコイルを用いた撮像を行ったが,十分なシグナルの強度が得られず,皮質下構造が見分けられない解像度の低い画像であった。このことから,今年度は,マーモセット専用の8ch仕様のサーフェースコイルを設計,製作した。さらに,本コイルが装着可能な頭部固定装置を作製し,マーモセットの頭部を定位固定しての撮像が可能になった。現在,データ収集の条件等,調整中であり,条件決定後にマーモセット8頭の画像を収集し,テンプレートの作成を行う予定である。
萩原裕子(首都大学東京大学院)
尾島司郎(科学技術振興機構)
定藤規弘(生理学研究所)
人間は,他人の発した言葉を聞いて,同じことを繰り返して言う,すなわち,復唱をする能力を持つ。母語や外国語の学習における復唱の役割と,その神経基盤の解明が期待される。
MRI計測では被験者の動きが計測ノイズと成り得るが,我々は被験者の復唱に伴う口の動きがノイズとならないようなパラダイムを考案している。
予備実験において,種々の単語の復唱に伴う脳賦活領域を同定したところ,先行して行っていた光トポグラフィーによる計測結果と整合性のある結果が得られた。光トポグラフィーは被験者の動きに比較的強いという利点があるが,脳の領域に関する情報が得られないという弱点もある。我々のMRI計測では直接的に関係する脳領域を可視化することができ,さらに,光トポグラフィーでは原理的に調べることができない脳の深部のデータも得られている。
今後さらにパラダイムを改善し,復唱に関わる神経基盤の解明を,より精密なレベルで行っていきたい。
清水惠司(高知大学 医学部)
悪性グリオーマは,正常組織への高い浸潤能,放射線,化学療法耐性能を示すため,平均余命1年から1年半の難治性悪性腫瘍である。この腫瘍を根治するためには,既存の治療法とは異なる新規治療法の開発が必要である。過去に米国NIHで悪性グリオーマに対する自殺遺伝子HSVtk をコードするレトロウイルスを産生する細胞を患者脳内に移植し,遺伝子治療を実施したが,ウイルス力価の低さ,異種移植による低い細胞生着率のため,顕著な治療効果は得られなかった。我々は,この欠点を克服するために,パッケージング細胞の遺伝的改変と遠心濃縮により1x1011-12pfu/mlの高力価ウイルス溶液の調製を可能とした。さらに,自殺遺伝子HSVtk の発現制御にミエリン塩基性蛋白遺伝子のプロモーターを導入し,脳特異的高力価レトロウイルスベクターを構築した。これを用いた遺伝子治療にて,ガンシクロビル投与プロトコールの最適化をおこない,マウスグリオーマモデルを完治せしめた。
本研究では,脳特異的高力価レトロウイルスベクターを臨床応用するために,霊長類(コモン・マーモセット)3匹を用いた毒性・発ガン性試験を実施した。患者に一回あたり投与する予定量の1x1011pfuのレトロウイルスをコモン・マーモセットの脳実質に投与し,経過観察をおこなった。3ヶ月後の血液検査,8ヶ月−12ヶ月後のMRIによる撮像,血液検査及び解剖において異常所見は観察されなかった。各組織からのウイルスゲノムの検出をPCR法にてDNA,RNAレベル共に実施した結果,残存ウイルスは検出されなかった。さらに,レトロウイルスベクターをもちいる際に問題となるRCR(Replication Competent Retroviruses)の有無の試験をFDA(米国食料医薬品局)の検査基準でおこなえる外部機関に委託した結果,RCRの混入は陰性である証明を得た。今後は,安全性試験の検体数を増やし,臨床試験の準備に着手する予定である。
現在,我々は脳特異的高力価レトロウイルスベクターの前臨床段階試験に加え,安全性を考慮した腫瘍特異的治療用ベクターを構築した。これらの開発により,悪性脳腫瘍に限局せず,他組織由来の悪性腫瘍,他の疾患に有用な安全で効果の期待できるウイルスベクターを提供すると共に悪性脳腫瘍に対する遺伝子治療法の確立を目指している。
定金理(基礎生物学研究所)
小松勇介(基礎生物学研究所)
廣川純也(基礎生物学研究所)
山森哲雄(基礎生物学研究所)
脳活動をモニタする新しい試みとして,また脳活動を分子レベルで理解するために,近年注目されているMRIを用いた分子イメージング技術を試みている。今回の実験では神経活動依存的に転写されるc-fos遺伝子を対象とした。MRIの造影剤であるSPION(超常磁性酸化鉄ナノ粒子)を付加したc-fos mRNAに対するアンチセンスオリゴを脳室内に投与し,c-fos遺伝子の転写をともなう脳活動領域をMRIで観察することを目指した(Liu et al., 2007)。c-fosはアンフェタミンの投与により大脳基底核で発現上昇することが知られているので,先行文献と同様にアンフェタミン投与個体(今回はラット)とコントロール個体とを比較した。どちらの個体でも大脳基底核近辺にSPIONのシグナルは観察され,アンフェタミン投与個体でやや強いシグナルを得た。しかし,その後の組織学的観察では,神経細胞に取り込まれたSPIONの染色は前交連(anterior commissure)近辺に集中しており,c-fosの抗体染色の分布とは一致しなかった。また,投与部位が脳室を貫通している個体もあった。したがって,今回のMRIではSPION-アンチセンスの投与時における何らかのアーティファクトを主に観察している可能性が否定できない。前交連近辺に集中していた一つの可能性としては,アンチセンス投与時に用いるリポフェクチンにより,ミエリンなどの脂質領域への親和性が増したためかもしれない。今後投与条件を検討し,脳室に限定した安定した投与技術を確立して実験を行い,SPION-アンチセンスオリゴを用いた実験系の有用性を評価していきたい。
参考文献
Liu CH et al.,(2007) ,J Neurosci, 27(3) :713-722.
野村理朗(広島大学大学院総合科学研究科)
従来の強化学習の理論的枠組のもとで発展した衝動性(impulsivity)に関する研究課題は,近年の高次脳機能計測技術の進展により,エージェントである内部モデルと脳という実体との比較・検討が可能となり,国際的に大きな関心の寄せられているテーマである。
本研究は,ヒト脳高次機能への遺伝子と環境,およびその相互作用の関わりの解明を目指す一連の研究として,情動,および報酬に対して生じる衝動性へのセロトニン(5-HT)情報伝達系の関与について脳機能画像化法,およびゲノム学的手法を駆使してそれらの統合的研究を国際的レベルで行うことを目指すものである。具体的には,申請者の研究グループと,米国の研究グループの各々において衝動性と5-HTT,5-HT2A受容体の各遺伝子多型,中枢神経系,および行動指標にかかわる実験を個別に実施し,得られた結果を比較・統合し,総合的な検討を行う。
今年度は,衝動性のメカニズムの機序に迫るための手法である報酬−罰Go/Nogo課題を用いた予備実験を実施した。なお,同課題での誤答は,反応してはならない刺激に反応するCER(Comission error),反応すべき刺激に対して反応をしないOER(Omission error) の二つのタイプに大別されるが,とくに前者のCERは「反応を抑制するコストよりも,反応出力が優先された結果」として反応制御の指標となる。したがって,Go/Nogo課題という系におけるCERの観測条件が重要となるため,上記課題の予備実験により,最適な諸条件(刺激数,提示時間,報酬・罰確率)を決定すべく実験系の確立を進めている。
上記の手続きにより実験系が確立された後,fMRIを用いて衝動性の発現とその制御プロセスに関与する脳の空間的活動を検討する必要があるだろう。
神谷之康(株式会社国際電気通信基礎技術研究所・脳情報研究所
上級・主任研究員/奈良先端科学技術大学院大学 客員准教授)
宮脇陽一(独立行政法人情報通信研究機構/株式会社国際電気通信基礎技術研究所・
脳情報研究所 研究員)
内田肇(奈良先端科学技術大学院大学 大学院生)
fMRI信号によって,視覚刺激を与えた際のヒト脳活動を空間的に細かに知ることが出来る。近年,このfMRI信号の空間パターンと視覚刺激との対応関係を機械学習することにより,ヒトが何を見ているかをfMRI信号のみから予測可能になってきている(Kamitani & Tong, 2005など)。しかしながら,これまでの手法では,線分方位などの視覚特徴しか予測することができず,視覚画像そのものを「画像」として再構成することはできなかった。本研究では,画像の局所コントラストを多重解像度で予測する局所画像復号器を画像表現モデルに基づいて組み合わせることにより,ヒトが見ている任意のコントラストパターンを「画像」として再構成することを目指した。
ランダム画像セッションと一般図形セッションの2種の実験を行った。ランダム画像セッションでは,フリッカする小さなチェッカーボード矩形パッチを最小単位として構成されるランダム画像を多数提示した。一般図形セッションでは,同じサイズの矩形パッチで幾何学図形を描画したもの5種類を提示した。これらの画像を提示中の視覚野のfMRI信号を計測した。
ランダム画像セッション時の視覚野のfMRI信号から画像の局所コントラストを予測する局所画像復号器を,スパースロジスティック回帰(Yamashita, et al., 2008)を用いて構築した。このアルゴリズムは,fMRI信号の最適な荷重和係数を学習しながら,予測に関連のない信号を除去していくという特徴をもつ。同じ視野位置に対して複数の解像度でコントラストを予測できるように複数個の復号器の学習を同時に行い,それら復号器からの予測値を線形画像表現モデルに基づいて組み合わせ,提示画像のコントラストパターンを再構成した。続いて,構築した画像復号器を一般図形セッションのfMRI信号に対して適用し,新奇な一般図形が再構成できるかを検証した。
構築された局所画像復号器は,中心視付近で特に高い精度で,提示画像のコントラストを予測可能であった。局所画像復号器を多重解像度で組み合わせた画像復号器は,一般図形にもよく汎化し,クリアな再構成画像を得ることができた。
本手法の基礎原理は,BMI技術において要請される汎化性能の高い神経活動復号器を構成する上で有用であるとともに,ヒト視覚野での画像表現様式の解明に向けて重要な知見を与えるものであると期待される。
Mueller Jutta(国立長寿医療センター研究所長寿脳科学研究部
Max Planck Institute for Human Cognitive and Brain Sciences)
中村昭範(国立長寿医療センター研究所長寿脳科学研究部)
小野健太郎(国立長寿医療センター研究所長寿脳科学研究部)
杉浦元亮(自然科学研究機構生理学研究所大脳皮質機能研究系心理生理学研究部門)
定藤規弘(自然科学研究機構生理学研究所大脳皮質機能研究系心理生理学研究部門)
Language learning is a complex skill known to be susceptible to aging effects (Birdsong, 2001).The present fMRI study asks the question which brain mechanisms support semantic and syntactic learning in young and elderly adults. For this reason we used a learning task in which participants learned new semantic and syntactic information in a previously unknown language which was German.
The experiment consisted of two sessions. In the first session participants learned a basic set of German sentences. In the second session which took place inside the fMRI scanner they were exposed to familiar sentences, to sentences with a new syntactic structure (passive construction) and to sentences with new words. The sentences were auditorily presented in alternating test and learning blocks (five test blocks, four learning blocks). Using this paradigm, we tested 20 young Japanese adults (age 20 - 26, 10 female) and 24 elderly subjects (age 60 - 72, 14 female).
For the young participants behavioural results show that learning of the new syntactic rule could be accomplished faster compared to learning of the new words. For exploratory fMRI data analysis we analyzed the BOLD response of the two types of new sentences vs. familiar sentences for each block separately. First results point to common activation sites for syntactically and semantically new sentences in left anterior and middle frontal gyrus, supplementary motor area, bilateral insula, bilateral superior temporal lobe and the cerebellum. However, while syntactic activation was seen only in the first testing block, semantic activation was seen in the first and second testing block (cf. Figure 1). Further analyses which are planned to be done at the Max Planck Institute for Human Cognitive and Brain Sciences, Leipzig, include using the behavioural results as parametric regressors.
In the elderly group 4 subjects had to be excluded due to technical problems and physiological abnormalities. Although 17 of the elderly subjects could learn to comprehend the miniature German in the pre-scanning training session, only 2 subjects showed clear learning effects during the fMRI session. Analyses that are currently conducted focus on structural anatomical differences between participants that were successful during training and those who were less successful.
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吉田晴世(大阪教育大学)
横川博一(神戸大学)
定藤規弘(自然科学研究機構生理学研究所)
第一言語におけるさまざまな心理言語学的・神経心理学的言語処理モデルを踏まえ,第二言語の獲得・処理・学習の神経基盤を機能的MRIを用いて描出することを目指している。言語習得において模倣はきわめて重要である。そこで模倣による言語学習過程,特に語彙習得過程を,行動学的指標とともに神経活動の変化を観察することにより解明する。仮説としては,視聴覚提示に模倣を加えることにより,単語記銘力が増大する。本年度は,大阪教育大学にて機能的MRI実施のための予備調査を行った。
<被験者>
大阪教育大学生,グループ1(4名),グループ2(9名)
<語彙選定>
長さ(シラブル数¥)がほぼ均一なウズベグ語30表現
(A群:15表現,B群:15表現)。
<デザイン>
1回目:使用するのはA群の語彙
グループ1(模倣しない):顔面付きの音声VTRを7回ずつ流すが,聞くのみで模倣はしない。グループ2(模倣する):顔面付きの音声VTRを7回ずつ流し,その都度模倣する。
繰り返しの直後に,両グループともに顔面付きの音声VTRを表現ごとに1回流し,それを繰り返した自分の音声を録音。
2回目:使用するのはB群の語彙
グループ1(模倣する):顔面付きの音声VTRを7回ずつ流し,その都度模倣する。グループ2(模倣しない):顔面付きの音声VTRを7回ずつ流すが,聞くのみで模倣はしない。
繰り返しの直後に,両グループともに顔面付きの音声VTRを表現ごとに1回流し,それを繰り返した自分の音声を録音。
<評価>
被験者全員(13名)に対し,ウズベグ語話者(モデル話者)が,「模倣をしてから録音したもの」と「模倣なしで録音したもの」の正確さと精度を測定。
判定A:意味が通じ,精度が高い
判定B:意味が通じ,精度が普通
判定C:意味が通じ,精度が低い
判定D:意味が通じない
<結果>
模倣をしてから録音した場合の精度は,判定Aが10人,判定Bが1人,判定Cが2人であった。模倣をせずに録音した場合の精度は,判定Aが0人,判定Bが6人,判定Cが6人,判定Dが1人であった。
このことは,模倣による繰り返し後の単語産出の精度の高さを表しているといえる。
来年度はこの予備実験結果をもとに,第二言語の獲得・処理・学習の神経基盤を解明すべく,機能的MRIを用いて本格的な実験に入る予定である。
岡崎安孝(大阪大学大学院生命機能研究科)
田村弘(大阪大学大学院生命機能研究科)
郷田直一(生理学研究所)
小松英彦(生理学研究所)
藤田一郎(大阪大学大学院生命機能研究科)
両眼立体視機能は,一次視覚野から後頭頂葉皮質に向かう頭頂葉経路で担われていると考えられてきた。しかし,近年われわれは,一次視覚野から下側頭葉皮質に向かう側頭葉経路に,両眼視差感受性細胞,相対視差情報を伝える細胞,両眼大域対応を算出する細胞が存在することを発見し,さらに奥行き判断の試行間変動と側頭葉細胞の活動ゆらぎが相関することを示した。これに基づき,側頭葉経路において,相対視差情報を必要とするような「細かい両眼立体視」,ならびに両眼大域対応がなされることで初めて成立する「奥行き面の知覚」が担われているという考えを提唱した。
他グループにより,頭頂葉経路の細胞が,視野局所の絶対視差を伝え,両眼大域対応を伝えないこと,「粗い奥行き弁別」に関わることが示され,われわれ自身の結果と合わせて,側頭葉経路と頭頂葉経路の両方が両眼立体視に関わるものの,両者の立体視における機能は大きく異なるという結論にいたった。上述の生理学的根拠の多くは,側頭葉経路のV4野と頭頂葉経路のMT野の細胞の性質の比較に基づいており,両経路の他の領野における両眼視差情報処理の様式はいまだに不明の点が多い。
本研究では,V3野,V3A野のニューロン活動を,覚醒行動中(注視課題遂行中)のサルから記録し,両眼立体視における役割の解明を目指す。V3,V3A野は,脳溝の奥に位置し,また,ニューロンの受容野構造や刺激反応特性などが確実な細胞同定基準になりえないため,サルごとに脳構造をMRIにより把握し,それに基づいて電極を刺入する必要がある。
そこで,アカゲザル2頭の頭部MRI画像を撮影し,当該サルの脳回,脳溝構造の地図作成を行った(図1)。この地図に基づき,視覚前野V3野およびV3A野からの神経活動記録を可能にするための電極設置用チェンバーのとりつけを行った。手術後,十分な回復を得たのち,チャンバーと脳回,脳溝との相対位置を確認するため,再び,MRI画像の撮影を行い,チェンバーに取り付けた電極マニピュレータの操作により期待される電極刺入路を再構成した。現在,2頭のサルに対して,注視課題の訓練中である。訓練が完了次第,V3,V3A野のニューロン活動の記録を開始する予定である。
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