生理学研究所年報 第31巻
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多次元共同脳科学推進センター

【概要】
 多次元共同脳科学推進センターは,全国の異分野研究者が参加し,BMIと霊長類遺伝子導入技術開発のための基礎研究及び異分野をまたぐ若手脳科学研究者の育成を行うネットワーク機構を構築し,サバティカル研究者の受け入れも行いながら,研究プロジェクトを推進するとともに人材養成を行う事業を推進している。本センターは2008年4月に設置され,自然科学研究機構(生理学研究所,基礎生物学研究所)の複数の教授が併任し運営を開始した。併任教授に加えてプログラムオフィサーとして特任教授を置き,外部研究機関からも基礎的な脳科学及びその関連分野(臨床医学,工学,心理学,倫理学)を専門とする客員教授,客員准教授を選任し,外部の研究機関と連携した研究環境を整え運営されている。

 またNBR事業推進室は,霊長類のナショナルバイオリソースの中核機関としての役割を担い,病原微生物学的にも安全で,馴化の進んだ実験用動物としてのニホンザルを繁殖・育成し,国内の研究者に安定して供給する体制を構築している。

 2009年度には,サバティカル的な制度を活用した長期滞在型共同研究の推進を図るための流動連携研究室を新設し,客員教授,客員准教授,客員助教の募集を開始した。

<多次元ブレインストーミング>
 現状での分子から細胞,回路,組織における脳情報表現解析手法を踏まえて,近未来の物質と情報をつなぐ脳科学研究像についてブレインストーミングを行った。全国の様々な分野の研究者を交えて,多次元ブレインストーミングを開催し意見交換を行った。多様なバックグラウンドの研究者による話題提供をきっかけに,「物質からどのようにして情報が形成されるのか」という根本的な視点から20年後にはどのような脳科学研究が展開されているかについてフリーディスカッションを行った。

<多次元トレーニング&レクチャー>
 若手研究者(大学院生を含む)を対象に運動制御回路に焦点を絞り脳の構造と機能をマウス,ラット,サル,ヒトを比較しながらに講義,及び実習を行った。

<流動連携室の新設によるサバティカル事業の実施>
 今年度は客員准教授として旭川医科大学の高草木薫准教授が3ヶ月間滞在し,認知行動発達機能研究部門,及び,生体システム研究部門との共同研究を実施した。

<霊長類遺伝子導入施設の整備>
 霊長類脳基盤研究開発プロジェクトでは,霊長類遺伝子導入のための施設を整備し,共同利用施設としての活用に向けた準備を開始した。

<国内の脳科学教育の連携についてのシンポジウム>
 第32回日本神経科学大会サテライトシンポジウムとして,国内の脳科学関連の大学院教育を組織的に展開している4大学(北大,東北大,東大,玉川大)と共に,各拠点の現状の紹介と将来展望について討論するワークショップ「脳科学教育の現状と理想−バーチャル脳科学専攻設立を目指して−」を企画・開催した。

<NBR活動>
 ニホンザル供給事業を実施し,全国の研究者から21件70頭の申請があった。審査の結果,21件68頭が採用された。また,ニホンザルを使用している研究者コミュニティとの連携協力,情報伝達と情報交換のための関連学会等での意見交換会の開催やポスター展示,ニュースレター等の発行を行った。広く社会に対しては,当該プロジェクトの意義や動物実験の意義を啓発するため,公開シンポジウム「霊長類の脳科学」を共催(3月20日)した。

 



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