公開日 2005.04.12

運動前野のもつ領域特異的な非運動性認知機能

カテゴリ:研究報告
 大脳皮質機能研究系 心理生理学研究部門
 

概要

従来、運動制御装置の一部と考えられてきた広義の運動前野(ブロードマン6野)が 運動をともなわないさまざまな認知的操作の制御をおこなっていることが明らかにさ れつつある。本研究では、被験者が認知操作をおこなっているときに運動前野内のサ ブ領域の機能を経頭蓋磁気刺激(TMS)をもちいて一過性に干渉することによって生じ る行動学的な変化を観察することにより、それぞれの領域が非運動性認知機能に果た す特異的な役割を明らかにすることを試みた。被験者が言語的心内表象操作課題と空 間的心内表象操作課題を遂行しているときに、外側運動前野と内側前補足運動野を刺 激し、反応時間の変化を評価した。その結果、外側運動前野の刺激により空間的心内 表象操作課題の成績が、前補足運動野の刺激により言語的心内表象操作課題の成績 が、それぞれ選択的に影響を受けることがあきらかとなった。本研究の結果は、広義 の運動前野(ブロードマン6野)内において、運動制御と同様に認知機能においても領 域特異的な機能が存在することを示しており、人間の運動制御機能と認知機能の連続 性を示唆するものと考えられる。

論文情報

Tanaka S, Honda M, and Sadato N. Modality-specific cognitive function of medial and lateral human Brodmann area 6. J Neurosci 25: 496-501, 2005.

【図1】

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