公開日 2005.06.10

抗不整脈薬感受性変化を伴うBrugada症候群心筋Naチャネル変異

カテゴリ:研究報告
 生体情報研究系 神経シグナル研究部門
 

概要

電位依存性ナトリウムチャネルは、筋細胞や神経細胞など興奮性細胞における活動電位の発生に不可欠な役割を担っている。心筋ナトリウムチャネルSCN5Aは、不整脈を抑える薬剤(抗不整脈剤)の標的分子である一方、SCN5A遺伝子変異により重篤な不整脈疾患(突然死など)が起きることが知られている。その不整脈疾患のなかでも、特徴的な心電図変化(右脚ブロックとST上昇)をともなう不整脈は、Brugada症候群と呼ばれ、近年の研究により、少なくともその一部はSCN5Aの機能低下によるものであることがわかってきている。
 本論文で詳細に解析されたSCN5Aの変異N406Sは、わが国で新たに発見されたBrugada症候群をおこす変異である。この変異を持つナトリウムチャネルは、電位依存的な活性化が悪くなるとともに、速い不活性化が促進し、また遅い不活性化傾向が強くなるという、異常を示した。
 さらにこの変異は抗不整脈剤の一つであるピルジカイニドに対する感受性をほとんど完全に失っていた。しかし抗不整脈剤に対する変化は一様ではなく、他の抗不整脈剤であるキニジンに対しては感受性がむしろ増強していた。 遺伝子変異により薬剤感受性が多様に変化しうることを示した本論文は、遺伝子異常が予測される患者に対して抗不整脈剤を投与する場合に、通常以上の感受性がある(効きすぎる)可能性があることを示した点で、臨床的にも重要なものである。

論文情報

Itoh H, Shimizu M, Takata S, Mabuchi H, Imoto K: A novel missense mutation in the SCN5A gene associated with Brugada syndrome bidirectionally affecting blocking actions of antiarrhythmic drugs. J Cardiovasc Electrophysiol, 16:486-493, 2005.

【図1】

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