公開日 2005.08.24

ラット上丘の層間の興奮性信号伝播機構を解明

カテゴリ:研究報告
 発達生理学研究系 認知行動発達機構研究部門
 

概要

中脳上丘は様々な感覚刺激に対して眼球や頭部、視線を向ける指向運動を制御する要となる中枢である。その浅層には視覚信号が入力する。その中間層には視覚以外の感覚信号が入力するとともにより下位の橋・延髄網様体や脊髄に向けて運動指令が出力される。しかし、上丘の層間の信号伝達機構についてはあまり知られていなかった。本研究ではラットの上丘スライス標本において各層のニューロンからホールセルパッチクランプ法による記録を行い、細胞外液にbicucullineを加え、Mg濃度を0.1 mMに低下させたときに自発的に生じる強い脱分極とバースト発火がどのように伝達するかを解析した。
すると

  1. 浅層と中間層ニューロンで同時記録を行うと、興味深いことに中間層ニューロンの方が先に脱分極していた。
  2. 次に視神経層のwide field vertical (WFV) cellと中間層ニューロンで同時記録すると、WFV cellの方が先に脱分極を開始していた。
  3. さらに浅層ニューロンとWFV cellで同時記録を行うと、WFV cellの方が先に脱分極を開始していた。

ということが明らかになった。
以上の結果から自発性同期的脱分極はWFV cell ― 中間層ニューロン ― 浅層ニューロンの順に伝播することが明らかになった。この結果からWFV cellがバースト発火の開始に関して低い閾値を有しており、同期的脱分極の起点になっていること、また上丘においてはより深い層から浅い層への興奮性信号伝播機構も存在していることが明らかになった。

論文情報

Saito Y, Isa T (2005) Organization of interlaminar interactions in the rat superior colliculus. Journal of Neurophysiology, 93: 2898-2907

【図1】

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上丘浅灰白層(SGS)、視神経層(SO)、中間層灰白層(SGI)間の信号伝達機構のまとめ