公開日 2005.08.03

スパインのネック形態は樹状突起カルシウムシグナルの決定因子

カテゴリ:研究報告
 細胞器官研究系 生体膜研究部門
 

概要

大脳神経細胞の樹状突起のスパインは頭も首もきわめて多様で、同じ形のスパインを見出すことは困難な程である。これまで、筆者らのグループはスパイン頭部の大きさはシナプス結合強度を決め、その大きさは結合強度の変化に伴って速く変わることを明らかにしてきた。今回、2光子励起法でケイジドグルタミン酸を活性化して単一スパインを刺激しながら、スパインのカルシウム上昇を測定することにより、スパインの首の多様性がグルタミン酸受容体を通って流入したカルシウムの動態に強く影響することを明らかにした。小さなスパインの首は細い傾向があるので、単一スパインに限局した高いカルシウム濃度上昇が作りやすく、このため独立した長期増強(LTP)、即ち、頭部増大の好発部位となる。一方、大きなスパインは首が太い傾向があるので、カルシウムは樹状突起に広がりやすく、濃度上昇は小さい。このことが、大きなスパインが長期増強を起こし難く、形態安定であることを説明するかもしれない。この様にスパインの頭と首は、それぞれ、シナプスの結合強度とその安定性を決める重要な因子と考えられる。

論文情報

Noguchi, J., Matsuzaki, M., Ellis-Davies, G.C.R. & Kasai, H. (2005). Spine-neck geometry determines NMDA receptor-dependent Ca2+ signaling in dendrites. Neuron 46, 609-622.

【図1】

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解説記事(1)より転載

  1. Hayashi, Y. and Majewska, A.K. (2005) Dendritic spine geometry: Functional implication and regulation. Neuron 46, 529-532.
  2. Rowan, A. (2005) Dendritic spines shape up. Nature Review Neuroscience 6, 501
  3. Editor's Choice (2005) Geometry of calcium signaling. Science 308, 1381.