公開日 2005.12.16

KCNQ/Mチャネルの抑制におけるPIP2とPKCの異なる役割

カテゴリ:研究報告
 分子生理研究系 神経機能素子研究部門
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概要

M電流は比較的低い閾値(-60 ~ -40 mV)を持つ電位依存性のカリウム電流で、神経細胞などに発現し細胞の興奮性を抑える役割を果たしている。M電流はムスカリン性アセチルコリン受容体などのGqカップルの受容体が活性化すると抑制されるため、神経回路の興奮性調節に重要な役割を果たしていると考えられる。実際、M電流を構成するKCNQチャネルの遺伝子は良性新生児てんかんの原因遺伝子としても知られている。
ムスカリン性アセチルコリン受容体の活性化によるM電流の抑制がどのような細胞内メカニズムによるかは20年以上にわたる謎であったが、近年この抑制機構が、Gqカップルの受容体が活性化する際に起こる細胞膜中のホスファチジルイノシトール(4,5)2リン酸(PIP2)の分解によるものであることが報告された。その一方で、同時に起こるPKCの活性化がチャネルの抑制に関わっていることを示唆する報告もある。しかしながらPKCがPIP2分解による抑制機構の補助的な役割を担っているのか、あるいはPIP2とは異なった方法でKCNQ/Mチャネルを抑制しているかは明らかではなかった。
今回、我々はKCNQチャネルとムスカリン性アセチルコリン受容体をアフリカツメガエル卵母細胞に共発現させることでM電流を再構成し、PKCがどのようにしてKCNQ/Mチャネルを抑制しているかを解析した。その結果、PKCが活性化することによってKCNQチャネルの膜電位依存性を示すカーブが約20mV脱分極側にシフトすることを見出した。一方、PKCを活性化させずにPIP2を減少させると、電流量は減少したものの、膜電位依存性を表すカーブにはほとんど影響を与えなかった。
以上より、KCNQ/Mチャネルの抑制において、PIP2とPKCはそれぞれ異なる役割を担っていて、PIP2の減少がチャネルの最大電流量を減少させるのに対し、PKCはチャネルの電位依存性を変化させることでチャネルを抑制していることが明らかになった。

論文情報

Nakajo K and Kubo Y (2005) Protein kinase C shifts the voltage dependence of KCNQ/M channels expressed in Xenopus oocytes. Journal of Physiology 569(1): 59-74.

【図1】

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