公開日 2005.12.22

視床下核から淡蒼球内節への単シナプス性興奮性入力と2シナプス性抑制性入力

カテゴリ:研究報告
 生体調節研究系 生体システム研究部門
 

概要

大脳基底核のうち視床下核(STN)は、淡蒼球外節(GPe)と淡蒼球内節(GPi)に興奮性投射をしている(図参照)。また、GPeはGPiに抑制性投射をしているので、GPiはSTNから単シナプス性の興奮性の影響と、GPeを介した2シナプス性の抑制性の影響を受けていることになる。霊長類を用いて実験を行ったところ、STNの単発刺激ではGPeとGPiの両者に興奮とそれに続く抑制が観察された。STNの刺激を連続刺激に変えるとGPeでは興奮性応答が主になり、これはGPeの局所にグルタミン酸受容体の拮抗薬を注入することによりブロックされた。一方、STNの連続刺激はGPiに主に抑制性の反応をもたらした。この抑制性応答はGPiの局所にGABA受容体の拮抗薬や、GPeにグルタミン酸受容体拮抗薬を注入することにより消失したことから、STN-GPe-GPi路を介していると考えられる。以上の結果はSTN連続刺激の際には、STN-GPe-GPi路による抑制性の影響がSTN-GPi路による興奮性の影響に打ち勝ち、その結果、GPiが抑制されることを示している(図、太い投射で示す)。近年、パーキンソン病などの治療法として、STNの連続電気刺激が用いられているが(脳深部刺激療法)、このような現象は、その作用機序を説明しているのかもしれない。

論文情報

Kita H, Tachibana Y, Nambu A & Chiken S (2005) Balance of monosynaptic excitatory and disynaptic inhibitory responses of the globus pallidus induced after stimulation of the subthalamic nucleus in the monkey. J Neurosci 25: 8611-8619.

【図1】

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