公開日 2005.12.09

二次の視覚性運動処理に関わる脳部位の探索

カテゴリ:研究報告
 生体調節研究系 感覚運動調節研究部門
 

概要

人間が物体の運動を知覚する時の手掛りには少なくとも2種類のものがあることが知られている。1つは物体と背景の明るさの違いであり、この違いに基づいた運動知覚を一次運動処理という。だが一方で物体と背景の明るさが等しい時にも人は運動を知覚できることが知られている。物体・背景間の模様やコントラストの違いなど、明るさ以外の手掛りに依拠したこれらの運動知覚を二次運動処理という。本研究では機能的磁気共鳴画像法(fMRI)を用いて一次と二次の運動刺激に対する脳の活動を比較した。その結果、一次運動の知覚時にはMT野・中心前回など従来から視覚運動処理に関係が深いとされてきた部位における脳活動が見られたのに対し、二次運動の知覚時にはこれらに加えて頭頂葉上部・上側頭領域の2箇所に有意な脳活動が見られた。これらの結果は、二次運動の知覚には後頭葉視覚野を中心とする大脳皮質領域間の広いネットワークが関わっていることを示している。

論文情報

Noguchi Y, Kaneoke Y, Kakigi R, Tanabe HC, Sadato N: Role of the Superior Temporal Region in Human Visual Motion Perception. Cerebral Cortex, 2005 15: 1592-1601

【図1】

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被験者の左視野に一次運動刺激(First-order)と二次運動刺激(Second-order)を提示したときの右半球の脳活動。一次運動知覚時にはMT野(MT/V5+)と中心前回(PrCG)に強い活動が見られるのに対し、二次運動知覚時はそれらに加え頭頂葉の角回(AG)や上側頭領域(STS)を含めた広い範囲の活動が見られる。