公開日 2006.01.18

レプチン代謝調節作用における骨格筋AMPキナーゼの生理的意義を解明:
レプチン・トランスジェニックマウスを用いた研究

カテゴリ:研究報告
 発達生理学研究系 生殖・内分泌系発達機構研究部門
 

概要

私どもは、レプチンが骨格筋AMPキナーゼを活性化し、その作用を通して骨格筋での脂肪酸酸化を促進することを報告している。この機構は、レプチンの抗糖尿病作用、脂肪毒抑制作用を担う重要な分子機構の一つと考えられる。しかし、骨格筋AMPキナーゼがレプチンによって持続的に活性化し、代謝に長期的効果を及ぼすかどうかは明らかとなっていない。そこで本研究では、レプチンを過剰に発現するレプチン・トランスジェニック(TG)マウスを用いて骨格筋AMPキナーゼに及ぼす効果を調べた。その結果、このマウスの骨格筋においてAMPキナーゼが恒常的に活性化していることが明らかとなった。興味深いことにこのモデルマウスに高脂肪食を与えることにより、AMPキナーゼの恒常的活性化は消失し、骨格筋中性脂肪含量が増加、個体レベルのインスリン感受性も悪化することが判った。また、標準食に戻すとTGマウスのAMPキナーゼ活性は再び亢進し、インスリン感受性の回復が認められた。この実験結果は、骨格筋脂肪蓄積抑制作用・インスリン感受性亢進作用におけるレプチン-骨格筋AMPキナーゼ軸の重要性を強く示唆するものである。

論文情報

Tanaka T, Hidaka S, Masuzaki H, Yasue S, Minokoshi Y, Ebihara K, Chusho H, Ogawa Y, Toyoda T, Sato K, Miyanaga F, Fujimoto M, Tomita T, Kusakabe T, Kobayashi N, Tanioka H, Hayashi T, Hosoda K, Yoshimatsu H, Sakata T, Nakao K. Skeletal muscle AMPK phosphorylation parallels metabolic phenotype in leptin transgenic mice under dietary modification. Diabetes 54: 2365-2374, 2005.