公開日 2006.03.03

脊髄背側部に由来するOlig3系譜細胞の短期的系譜解析

カテゴリ:研究報告
 分子生理研究系 分子神経生理研究部門
 

概要

Olig3はbHLH型転写因子で、神経管ではE9.5までにその背側端部から発現が始まる。さらに、E11.5より脊髄腹側部にも発現が見られるようになる。その後、Olig3発現細胞は分布を広げ、E15.5では脊髄腹内側部と後角底部に位置するようになる。その機能や細胞系譜を解析する目的で、Olig3-lacZノックインマウスを相同組換えにより作製した。このマウスではX-gal組織化学染色により、Olig3細胞の系譜や挙動を短期間追跡することができる。Olig3-LacZ細胞は、E9.5までに神経管背側部に出現する。その分布は、Olig3-mRNAを発現する細胞より腹側にまで広くみられる。さらに、E10.5では脊髄背側端部から腹側端部まで、背腹軸全長にX-gal陽性細胞が連続して見られる。これらのことから、Olig3系譜細胞は、脊髄発生の非常に早い時期に腹側方向への移動を開始することが示された。また、これらの細胞は、Math1, Brn3a, Islet1/2を発現することから、介在ニューロンに分化することが示された。これに加えて、背側正中部(後正中中隔;アストログリアの一種により構成されている)にもX-gal陽性細胞がみられることから、Olig3系譜細胞の一部はアストログリア(のサブクラス)に分化することが明らかにされた。

論文情報

Ding L, Takebayashi H, Watanabe K, Ohtsuki T, Tanaka KF, Nabeshima Y, Chisaka O, Ikenaka K, Ono K (2005) Short-term lineage analysis of dorsally derived Olig3 cells in the developing spinal cord. Developmental Dynamics, 234: 622-623.