公開日 2006.04.19

小脳出力を強化する異種シナプス抑制の分子基盤を解明

カテゴリ:研究報告
 生体情報研究系 神経シグナル研究部門
 

概要

下オリーブ核から小脳への登上線維から放出された興奮性伝達物質は,AMPA型グルタミン酸受容体を活性化して,籠細胞‐プルキンエ細胞間のGABA作動性伝達にシナプス前抑制を引き起こす。脳スライス‐パッチクランプ法と免疫組織化学を用いて,この異種シナプス抑制に関わるAMPA受容体の性質や局在・活性化機構について検討を行った。本研究により,登上線維の興奮性伝達物質は,放出部位から拡散して,籠細胞終末のカルシウム非透過性AMPA受容体を活性化できることを見出した(図1参照)。登上線維入力は,プルキンエ細胞を強く興奮させると同時に,籠細胞からプルキンエ細胞への抑制性入力を阻害すること(即ち,脱抑制)により,小脳出力を強化していると考えられる。

論文情報

Satake S, Song S-Y, Cao Q, Satoh H, Rusakov D A, Yanagawa Y, Ling E-A, Imoto K and Konishi S (2006) Characterization of AMPA receptors targeted by the climbing fiber transmitter mediating presynaptic inhibition of GABAergic transmission at cerebellar interneuron-Purkinje cell synapses. J. Neurosci. 26, 2278-2289.

【図1】 

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登上線維から放出された興奮性伝達物質は,後シナプス性AMPA受容体を活性化してプルキンエ細胞を興奮させると同時に,拡散して籠細胞の前シナプス性AMPA受容体(GluR2/3)に作用することにより,籠細胞のGABA放出を阻害する。伝達物質の拡散は,バーグマングリアやプルキンエ細胞のグルタミン酸輸送体(GLAST/GLT-1/EAAT4)によって常に阻害されているものの,反復刺激に伴い大量に放出された登上線維伝達物質は,回収機構の能力を超えて籠細胞のAMPA受容体に到達する。