公開日 2006.06.22

母語と第二言語の文字認知に関する研究

カテゴリ:研究報告
 統合生理研究系 感覚運動調節研究部門
 

概要

母語と第二言語の処理は同様のメカニズムで行われているか、それとも異なるメカニズムで行われているかについて未だ一致した見解はない。本研究では、韓国語を母語とし、日本語を第二言語として学習している韓国人被験者が、ハングル、カナ、擬似文字を認知するときの自発脳活動の差を脳磁図を用いて解析した。その結果、全ての条件で両側後頭側頭部におけるγ帯域活動(60~90 Hz)の増強とα帯域活動 (8~13 Hz) の減弱が認められた(図1)。左側γ帯域活動は条件間に差はなく、右側ではハングル、カナ、擬似文字の順に活動強度が小さかった。α帯域活動の減弱は、擬似文字と比べてハングルとカナで長く持続した。これらの自発脳活動の違いは、前語彙処理に関与する神経ネットワークの活動が文字と擬似文字で、さらには母語と第二言語とで異なることを示唆する。

論文情報

Ihara A & Kakigi R: Oscillatory activity in the occipitotemporal area related to the visual perception of letters of a first⁄second language and pseudoletters. Neuroimage, 29(3):789-796, 2006.

【図1】

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両側後頭側頭部チャンネルにおける信号パワー値の時間-周波数スペクトル。α帯域活動の持続的な減弱 (上図) とγ帯域活動の一過性の増強(下図)が認められた。赤色は信号強度の増強、青色は信号強度の減少を示す。