公開日 2006.06.15

ホヤゲノムに含まれるイオンチャネル関連遺伝子の総括的解析:脊椎 動物の生理機能の進化の解明に向けて

カテゴリ:研究報告
 岡崎統合バイオサイエンスセンター 時系列生命現象研究領域
 

概要

イオンチャネルは神経シグナルと恒常性維持の両 方に重要な役割を担っており、個々のイオンチャネルの性質は良く調べられているが動物が環境に適応する仕組みとの関係はあまり理解されてこなかった。カタユウレイボヤのゲノムから網羅的に160個のイオンチャネル関連分子をリストアップ し、他のゲノムの明らかにされた動物の遺伝子と比較した。その結果、ホヤでは脊椎動物のプロトタイプといえるイオンチャネル遺伝子が少ない数のセットで存在していたが、その傾向は神経シグ ナルに関わる分子に特に顕著であった。一方ホメオスタシスに関わるイオンチャネルはホヤ独自の多様性を示していた。また、ホヤと他の無脊椎動物に固有のイオンチャネルが複数あることがわかり、脊椎動物の進化の過程で、新しいイオンチャ ネル遺伝子を獲得したと同時に、無脊椎動物型のイオンチャネル遺伝子を切り捨てたと考えられる。

本研究は、岡崎統合バイオサイエンスセンターと生理学研究所、京都大学、明治薬科大学、東京都神経科学総合研究所、産業技術総合研究所、ダルハウジー大学(カナダ) との共同研究として行われた。

論文情報

Okamura Y, Nishino A, Murata Y, Nakajo K, Iwasaki H, Ohtsuka Y, Tanaka-Kunishima M, Takahashi N, Hara Y, Yoshida T, Nishida M, Okado H, Watari H, Meinertzhagen IA, Satoh N, Takahashi K, Satou Y, Okada Y, Mori Y. : Comprehensive analysis of the ascidian genome reveals novel insights into the molecular evolution of ion channel genes. Physiol Genomics, 22, 269-282 (2005)

【図1】

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カタユウレイボヤ(右から二番目)から見出された約160個のイオン チャネル遺伝子の特徴を、線虫(一番 左)、ハエ(左から二番目)、脊椎動物(一番右;ヒト、マウス、サカ ナ等)のイオンチャネル遺伝子群と比 較することで、各系統の特徴が明らかになった。これらの違いは、各系 統の感覚情報処理や運動制御上の革新 の歴史や、環境適応の歴史を反映していると考えられる。