公開日 2006.08.24

転写因子Olig2による前脳基底部アセチルコリン作動性ニューロンの発生制御

カテゴリ:研究報告
 分子生理研究系 分子神経生理研究部門
 

概要

Olig2はbHLH型転写調節因子であり、脊髄においてはオリゴデンドロサイトと運動ニュー ロンの分化に必須である。一方、Olig2は脳の広い領域で発現しているが、その機能 やOlig2発現細胞の細胞系譜は一部を除いて不明なままである。本研究では、胎生期 の前脳におけるOlig2発現細胞の細胞系譜をタモキシフェン誘導型Cre-loxPを用いて 調べた。Olig2-CreERノックインマウスとレポーターマウスを交配させ、胎生12.5日 目(E12.5)にタモキシフェンを投与してOlig2発現細胞で組換えを誘導すると、前脳 基底部に多くのレポーターを発現するOlig2系譜細胞が観察された。その一部に はcholine acetyltransferase (ChAT)を発現する細胞が存在し、Olig2系譜細胞の一 部はコリン作動性ニューロンに分化することが明らかにされた。Olig2欠損マウスは 新生仔致死となるため、E18.5の前脳基底部でChAT発現細胞を調べた。その結果、 Olig2欠損マウスでは野生型やヘテロマウスと比較して40%程度の細胞数の減少が見ら れた。以上の結果から、Olig2が前脳基底部のコリン作動性ニューロンの発生に関与 することが明らかにされた。

論文情報

Furusho M, Ono K, Takebayashi H, Masahira N, Kagawa T, Ikeda K, Ikenaka K. (2006) Involvement of the Olig2 transcription factor in cholinergic neuron development of the basal forebrain. Developmental Biology, May 15;293(2):348-57