公開日 2007.01.31

注意に関係するサル前頭前野と前帯状野のシータ波活動

カテゴリ:研究報告
 脳機能計測センター 機能情報解析室
 

概要

ヒトが注意集中するときに、前頭葉周辺でシータ周波数(4-7 Hz)の脳波が記録される。この脳波活動は「前頭正中シータ波」と呼ばれているが、正確な発生源やメカニズムなどについては不明な点が多い。ヒトを対象としてそれらを解明することは、侵襲的な実験が限られた状況下でしか許されないために、極めて困難である。私たちは、サルにおける前頭正中シータ波のモデルを作成しようと考えた。そして、運動課題を行うサルの前頭前野(9野)と前帯状野(32野)にヒトの前頭正中シータ波に相当する脳活動を見つけた。サルのモデルは、「注意集中」の仕組みの解明に役立つと考えられる。

論文情報

Tsujimoto T, Shimazu H, Isomura Y,
Direct recording of theta oscillations in primate prefrontal and anterior cingulate cortices.
J Neurophysiol 95(5): 2987-3000, 2006

【 図 】

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自分のペースでレバー運動を行うサルの脳活動(前頭前野9野での記録例)。レバー運動前に6秒以上じっとしていた場合は報酬を与え(上図)、じっとしていられなかった場合は報酬を与えなかった(下図)。
このようにすると、サルは約6秒の間隔でレバー運動を行うようになる。このときの大脳皮質電位を観察すると、シータ周波数(約5Hz)の脳活動が(1)運動前から徐々に増加し(2)報酬を得るとさらにもう一回増加する(上図)。
報酬がなければ2回目の増加はない(下図)。
この脳活動はサルの「注意集中」を反映していると考えられ、ヒトの「前頭正中シータ波」に相当する。