公開日 2007.03.29

マウス大脳皮質発達過程における糖鎖生合成関連遺伝子とN-結合型糖鎖構造の網羅的解析

カテゴリ:研究報告
 分子生理研究系 分子神経生理研究部門
 

概要

糖鎖は細胞の最も外側を覆う構造であり、細胞間や細胞―細胞外基質との相互作用に重要な役割を果たしていると考えられている。しかし、糖鎖生合成には10段階を超えるような酵素反応が必要であり、どのような糖鎖構造が合成されるか、遺伝子発現解析からはなかなか理解できない。そのため、ポストゲノムの最も重要な研究課題として脚光を浴びている。われわれはこの問題にアプローチするために、糖鎖生合成関連遺伝子の発現を網羅的に解析できるマクロアレーシステムを開発した。糖鎖生合成関連遺伝子の発現レベルは低く、従来の蛍光を使用したマイクロアレーでは検出感度が低かったため、放射性同位元素を使用する高感度検出システムとした。これと並行して、ヒドラジン分解―ピリジルアミノ化標識法を用いて、N-結合型糖鎖の網羅的も行った。これらの結果、脳内の糖鎖生合成マップを作製することが可能となった。今後このような解析により、細胞外糖鎖構造の決定様式の理解が進むと考えられる。

論文情報

Ishii A, Ikeda T, Hitoshi S, Fujimoto I, Torii T, Sakuma K, Nakakita S, Hase S, Ikenaka K. Developmental changes in the expression of glycogenes and the content of N-glycans in the mouse cerebral cortex. Glycobiology. 2007 Mar;17(3):261-76.

【 図 】

20070329_1-l.jpg

※クリックすると拡大図が表示されます。
大脳皮質におけるN-結合型糖鎖生合成経路。糖鎖生合成関連遺伝子は130種類以上存在し、一つの酵素反応ステップにも複数の遺伝子が関与するが、脳内では一つの酵素反応は基本的に1つの遺伝子が主に担当しているようである。図中の数字は担当遺伝子を表しており、上記論文http://glycob.oxfordjournals.org/cgi/content/abstract/17/3/261のTable 1を参照。