公開日 2007.03.20

ストレスによる神経細胞特異的カリウムークロール共役担体(KCC2)の脱燐酸化・内在化とGABA抑制作用の機能消失

カテゴリ:研究報告
 発達生理学系 生体恒常機能発達機構研究部門
 

概要

神経細胞特異的カリウムークロール共役担体(KCC2)は神経細胞内Cl-濃度の恒常性を保つ重要分子であり、Clチャネルを開く抑制性伝達物質であるGABAおよびグリシン応答を規定している。未熟脳および各種神経障害後にはKCC2の発現が低下し、GABAは脱分極応答をしめすことに近年注目が集められている。特に障害後には急速なKCC2の機能低下が起こり、蛋白発現以外の機能制御の存在が示唆されていた。今回、培養海馬神経細胞を用いて、種々の神経細胞ストレス(過酸化酸素、BDNF, 過剰興奮)によって、蛋白およびmRNAの低下消失に先行してKCC2の脱リン酸化が起こることが判明した。この変化に伴い、細胞内Cl-濃度は2段階(1時間以内、6時間以降)で増加をしめすことが判明した。障害後の脱リン酸化はKCC2の細胞膜発現を減少させることが判明した。この結果、GABAは障害培養神経細胞に脱分極を惹起し、細胞死を促進することが判明した。脱リン酸化酵素阻害剤によって、ストレスによる初期(蛋白発現減少以前)の細胞死は優位に抑制された。また、KCC2を強制発現した神経細胞においては、早期および後期いずれの時期においても優位にGABAによる細胞死を抑制した。これらの結果から、種々の神経障害によって脱燐酸化によるKCC2の細胞内在化、その後の蛋白発現自体の消失によってGABAは細胞脱分極―細胞死を惹起することが判明した。

論文情報

Wake H, Watanabe M, Moorhouse AJ, Kanematsu T, Horibe S, Matsukawa N, Asai K, Ojika K, Hirata M, Nabekura J. (2007)
Early changes in KCC2 phosphorylation in response to neuronal stress result in functional downregulation. J Neurosci 27:1642-1650.

【図1】

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【図2】

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