公開日 2007.03.14

微小管上の道路標識「ポリグルタミン酸側鎖」の役割を解明

カテゴリ:研究報告
 岡崎統合バイオサイエンスセンター 戦略的方法論研究領域(ナノ形態生理)
 

概要

脳内では、細く長い神経突起の中を効率的に物質輸送するために、モータータンパク質と微小管が非常に重要な役割を担っている。脳内の微小管は、チューブリンのカルボキシ端領域にグルタミン酸が複数個付加されるポリグルタミン酸化と呼ばれる、非常にユニークな翻訳後修飾を受ける。これまで、哺乳類生体内におけるこの修飾の役割は全く不明であった。本研究では、ランダムミュータジェネシスによるスクリーニングで得られたROSA22マウスを解析し、アルファチューブリン上のポリグルタミン酸が、シナプス小胞の前駆体を輸送するKIF1Aの軸索への移動に重要であることを発見した。高解像度二次元電気泳動法と多段階質量分析法を組み合わせて解析した結果、ROSA22マウスではアルファチューブリン上のポリグルタミン酸が消失していることが分かった。このマウスから培養した神経細胞を調べた結果、KIF1Aが細胞体から神経突起に移動しにくくなっていた。この結果を支持するように、ROSA22マウスでは、神経週末におけるシナプス小胞の密度が減少していた。更に、ROSA22マウスのスライス培養海馬神経細胞では、高頻度連続刺激によるシナプス伝達がワイルドタイプの細胞に比べより短い時間で減衰した。これは、シナプス小胞が早く枯渇したことを示す。以上の結果から、アルファチューブリン上のポリグルタミン酸が、シナプス小胞前駆体を載せたKIF1Aが軸索の微小管を見つけるための標識となっており、神経情報伝達に重要であることが示された。

論文情報

Ikegami K, Heier RL, Taruishi M, Takagi H, Mukai M, Shimma S, Shu T, Hatanaka K, Morone N, Yao I, Campbell PK, Yuasa S, Janke C, MacGregor GR, Setou M (2007)
Loss of alpha-tubulin polyglutamylation in ROSA22 mice is associated with abnormal targeting of KIF1A and modulated synaptic function. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 104, 3213-3218.

【図1】

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【図2】

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