公開日 2007.04.06

TRPM7は細胞容積調節に関与するメカノセンサーチャネルである

カテゴリ:研究報告
 細胞器官研究系 機能協関部門
 

概要

動物細胞はたとえ異常浸透圧環境下におかれて収縮・膨張を強いられたとしても、速やかに正常容積へと復帰する能力を持っている。浸透圧性膨張後の容積調節はRegulatory volume decrease (RVD)と呼ばれる。RVDは、細胞膨張後に細胞内Ca2+濃度上昇が起き、それに引き続きKClの流出とそれに伴う水の流出によって達成されることがわかっている。しかしながら、RVD過程においてCa2+流入経路として考えられている膜伸展刺激活性化カチオンチャネルの性質の詳細や分子実体については長い間、不明であった。今回私達は、ヒト上皮HeLa細胞におけるRVD過程に関与する膜伸展刺激で活性化するカチオンチャネルの分子がMg2+やGd3+に感受性を示すTRPM7であることを発見した (Am J Physiol Cell Physiol. 292: C460-467, 2007)。さらにヒト上皮(HEK293)細胞に強制発現されたTRPM7クローンも、膜伸展刺激、細胞容積増大、液灌流刺激により活性化すること発見した (Cell Physiol Biochem. 19: 1-8, 2007)。

論文情報

Numata T, Shimizu T, Okada Y. (2007) TRPM7 is a stretch- and swelling-activated cation channel involved in volume regulation in human epithelial cells. Am J Physiol Cell Physiol 292: C460-467

Numata T, Shimizu T, Okada Y.(2007)Direct mechano-stress sensitivity of TRPM7 channel. Cell Physiol Biochem 19: 1-8, 2007

【 図 】

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RVDの模式図。 低浸透圧溶液の暴露によって細胞容積は増大する。その際の膜伸展を感知しTRPM7が活性化し、Ca2+流入が起こる。これを引き金として、細胞内Ca2+濃度上昇が起き、それに引き続きCa2+依存性K+チャネル及び容積感受性Clチャネルを介したKClの流出とそれに伴う水の流出によってRVDが起こり、最終的には細胞は元の正常な容積へと復帰する。