公開日 2007.05.16

抗ガン剤耐性にイオンチャネルが関与

カテゴリ:研究報告
 細胞器官研究系 機能協関研究部門
 

概要

ガン細胞の抗ガン剤耐性はガン治療において難問中の難問である。プラチナから成るシスプラチンという広く使われている抗ガン剤はDNAと付加体を形成することによってガン細胞にアポトーシス性細胞死を誘導する。しかし、シスプラチンに対し内因性あるいは獲得性耐性を有するガン細胞が何種類も存在している。今回、獲得性シスプラチン耐性モデルとしてシスプラチン耐性KCP-4細胞株を用いて、その耐性メカニズムを研究した。細胞容積調節に関与している外向整流性容積感受性(VSOR)クロライドチャネルの活性化がアポトーシス誘導に重要な役割を果たしていることが知られているので、KCP-4細胞においてホールセルパッチクランプ法でVSORクロライドチャネルの活性を調べたところ、このチャネルの機能的発現はほとんど見られなかった。VSORクロライドチャネル活性の欠落がシスプラチン耐性の因子であるものと仮定して、チャネルの活性を回復させることを試みた。ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(トリコスタチンA)によって遺伝子転写を促進させるとVSORクロライドチャネル活性の部分的回復が見られ、そしてこの活性回復によってシスプラチン耐性が失われることを細胞生存率とカスパーゼ3活性測定で確認した。これらの結果により、VSORクロライドチャネル活性の欠落がKCP-4ガン細胞のシスプラチン耐性の原因となっていることが明らかとなった。(本研究は産業医大・分子生物の河野研との共同研究である。)

論文情報

Lee EL, Shimizu T, Ise T, Numata T, Kohno K, Okada Y. Impaired activity of volume-sensitive Cl- channel is involved in cisplatin resistance of cancer cells. J Cell Physiol 211: 513-521, 2007.

【図1】

20070516_1.jpg