公開日 2007.07.05

空間的注意における視覚-触覚間クロスモダルリンクに関わる脳磁界反応

カテゴリ:研究報告
 統合生理研究系 感覚運動調節研究部門
 

概要

空間的注意による神経活動の変化はよく知られている。近年この注意効果は他の感覚モダリティにも及ぶこと(クロスモダルリンク)が報告されたが、その神経機構の時間動態は未だ解明されていない。本研究では脳磁場記録により、視覚-触覚間のクロスモダルリンクに関わる皮質処理の時間動態を調べた。視覚、触覚ともに標的、非標的刺激を右視野(右手第2指)、左視野(左手第2指)に約1秒間隔でランダム順に提示した。被験者は4つの注意条件をランダム順に行った(右体性感覚・左体性感覚・右視覚・左視覚注意)。右手体性感覚刺激に対する二次体性感覚野(SII)付近の脳磁場反応(潜時80ms~)は、右体性感覚注意時だけでなく右視覚注意時にも増大したが、一次体性感覚野の反応には有意な変化は認められなかった。左手刺激でも同様の結果が得られた。これらの結果より、体性感覚入力に対する潜時80ms以降のSII近辺の神経活動は、注意された感覚モダリティに関係なく、空間的注意により変化することが示唆された。

論文情報

Kida T, Inui K, Wasaka T, Akatsuka K, Tanaka E, Kakigi R. Time-varying cortical activations related to visual-tactile cross-modal links in spatial selective attention. J Neurophysiol 2007: 97, 3585-3596.

【 図 】

20070705_1.jpg

注意される感覚モダリティに関係なく、刺激される手と同じ場所に注意を向けたときにはSIIの双極子モーメントが大きい((C)の赤と水色の波形)。 SI:一次体性感覚野、SII:二次体性感覚野、c:刺激対側、i:刺激同側、LHS:左手触覚刺激、RHS:右手触覚刺激。丸印は推定された双極子の位置、(C)の波形は双極子モーメントを示す。