公開日 2007.08.31

レプチンは AMPK の細胞内局在を変化させることにより骨格筋細胞C2C12での脂肪酸酸化を促進する

カテゴリ:研究報告
 発達生理学研究系 生殖・内分泌発達機構研究部門
 

概要

レプチンは脂肪細胞から分泌されるアディポカインであり、骨格筋においてAMPKの活性化と転写因子PPARα(脂肪酸酸化関連遺伝子の発現調節を行う)の発現を誘導することにより脂肪酸酸化を促進する。その結果、骨格筋での脂肪蓄積を防ぎ、抗糖尿病作用を引き起こす。本論文では、レプチンによる脂肪酸酸化及びPPARαの発現誘導作用においてα2AMPKの細胞内局在変化が必須であることを、骨格筋細胞株C2C12細胞を用いて明らかにした。AMPKは、α(触媒体)およびβ⁄γ(制御体)サブユニットからなるヘテロ三量体である。C2C12細胞がレプチンによる刺激を受けると、β1サブユニットを含むAMPK複合体はβ1サブユニットのミリストイル化により細胞質内に局在し、アセチルCoA脱炭酸酵素ACCをリン酸化してミトコンドリアでの脂肪酸酸化を引き起こす。これに対して、β2サブユニットを含むAMPK複合体は速やかに核内へ移行してPPAR の発現を誘導する。この核移行は、α2AMPK分子内の核移行シグナル(NLS: nuclear localization signaling)と上流因子(AMPKK)によるα2AMPKのThr172のリン酸化が必須である。このようにレプチンは、AMPKのヘテロ三量体を構成するサブユニットの分子種を巧みに使い分けることにより、ミトコンドリアでの脂肪酸酸化と遺伝子発現を誘導し、抗糖尿病作用を引き起こす。

論文情報

Suzuki A, Okamoto S, Lee S, Saito K, Shiuchi T, Minokoshi Y. Leptin Stimulates Fatty Acid Oxidation and PPARα Gene Expression in Mouse C2C12 Myoblasts by Changing the Subcellular Localization of α2AMP-Activated Protein Kinase. Mol Cell Biol 27: 4317-4327, 2007.

【 図 】 レプチンによる脂肪酸酸化調節機構(A)とAMPKの細胞内局在変化(B)

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C2C12細胞ではAMPKのβ2サブユニットが 発現している。従って、レプチンで刺激し活性化したα2AMPKは、1時間以内に速やかにα2サブユニットの核移行シグナルに従って核移行し、PPARαの発現を促進する。しかし、さらにレプチンで刺激すると、6時間後にはβ1サブユニットの発現が誘導される。その結果、α2AMPKの一部はβ1の働きによって細胞質に局在し、ACCをリン酸化してミトコンドリアでの脂肪酸酸化を促進する。