公開日 2007.08.24

身体図式の保持における後部頭頂葉の役割

カテゴリ:研究報告
 大脳皮質機能研究系 心理生理学研究部門
 

概要

四肢の腱への振動刺激によって四肢の運動錯覚が惹起される。この錯覚は振動刺激が興奮させる筋紡錘からの求心性Ia線維入力によってひきおこされ、被験者は四肢の動きを伴わずに明瞭な四肢運動を経験する。被験者が手の運動錯覚を経験している最中に、実際には動いていない手をみると、運動錯覚が減弱することがわかっている。これは運動感覚に対する視覚の優位性として知られている。この現象を利用して、脳のどの領域が身体図式の保持に関係するかを機能的MRIにより検証した。その結果、上頭頂葉後部領域の活動が視覚の優位性に関与していることがわかった。さらに、この活動の度合いは視覚の運動感覚に対する優位性(=視覚によってどの程度運動錯覚が減弱するかの度合い: visual attenuation index, 図1)と正の相関を示した。このことは、複数の感覚入力に葛藤がある場合、身体図式を保つ上で頭頂葉後部領域が重要な役割をはたすことを強く示唆した(京都大学・ATRとの共同研究)。

論文情報

Hagura N, Takei T, Hirose S, Aramaki Y, Matsumura M, Sadato N and Naito E (2007) Activity in posterior parietal cortex mediates the visual dominance over kinesthesia. Journal of Neuroscience 27: 7047-7053.

【図1 】 

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