公開日 2007.10.11

『目の動き』を見たときの後頭側頭部の活動に対する顔輪郭とパーツ情報の影響

カテゴリ:研究報告
 統合生理研究系 感覚運動調節部門
 

概要

日常生活では、顔の動きの認知は大変重要であり、我々はこれまで「顔の部分の動き」に対するヒトの運動視中枢(MT⁄V5野)の活動について脳磁図を用い、調べてきた。今回、「目の動き」が単なる「ドットの動き」と区別されるための要因と考えられる顔の輪郭とパーツ情報の影響を検討した。2枚の刺激(図1中のS1とS2)を連続提示し、被験者に運動が知覚される仮現運動を利用した4条件の視覚刺激を用い(図1)、誘発脳磁場を測定した。(1) CDL: 模式的な顔の絵(輪郭、目、口)の中で目の部分が動く刺激。(2) CD: CDLより口を取り除いた刺激。(3) DL: CDLより輪郭を取り除いた刺激。(4) D: CDLより輪郭と口を除いた刺激。D条件では単なる2つの点の動きにしか見えないが、他の条件、特にCDL条件では、顔に見えるため、目の動きとして認知される。動き刺激提示後145~220ミリ秒の間で、単一等価電流双極子モデルを用い活動源を推定し、その活動潜時と大きさ、その活動部位を各条件間で比較検討した。活動源は後頭側頭部、MT⁄V5野付近に推定された(図2)。活動潜時及び推定位置に全条件で有意な差はなかったが、活動の大きさは、右半球でCDL条件の方がCD(p < 0.05)、DL(p < 0.01)、D(p < 0.01)条件よりも有意に大きかった(図3)。また、左半球ではCDL条件の方がDLとD条件(p < 0.01)よりも有意に大きかった(図3)。動きそのもの自体は条件間で違いがないにもかかわらず、条件によって活動の大きさに差がみられた。このことより、ヒトのMT⁄V5野では、運動そのものに対する反応に加えて、「目の動き」に対する特異的な活動が起こり、その際、顔の輪郭とパーツの情報が重要な役割を担っている可能性が示唆された。

論文情報

Miki K, Watanabe S, Honda Y, Nakamura M, Kakigi R (2007) Effects of face contour and features on early occipitotemporal activity when viewing eye movement. NeuroImage 35(4):1624-1635

【図1】 用いた刺激

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【図2】 推定された活動部位

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【図3】 推定された活動部位の活動の大きさ(** p < 0.01, * p < 0.05)

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