公開日 2007.12.20

脂肪細胞から分泌されるアディポネクチンは視床下部において摂食を促進する

カテゴリ:研究報告
 発達生理学研究系 生殖・内分泌系発達機構研究部門
 

概要

脂肪細胞から分泌されるアディポネクチンは、骨格筋、肝臓、血管内皮等、末梢組織に作用し、AMPキナーゼの活性化に伴う脂肪酸の酸化、並びにインスリン感受性を向上させることが知られている。しかし中枢神経系におけるアディポネクチンの作用は殆ど解明されていない。本研究では、アディポネクチンが視床下部弓状核に存在するAdipoR1受容体を介して、AMPキナーゼを活性化し、摂食量の増加、エネルギー消費の低下をもたらし、結果として体重を増加させることを明らかにした。また絶食によって血中・脳脊髄液中のアディポネクチン濃度が上昇し、かつ弓状核におけるAdipoR1発現量が増加する事、再摂食により両方とも減少することを見出した。これらの事から、中枢神経系に作用するアディポネクチンは、エネルギーを効率よく蓄え、飢餓に備える倹約遺伝子として働くことが考えられる。

またアディポネクチンは血液中で多量体として存在するが、脳内には中・低分子量型のアディポネクチンのみが移行する事が本研究において明らかとなった。これらの事実から、高分子量型アディポネクチン、あるいはその類似体は、食欲増進作用が少なく、末梢臓器に対して抗糖尿病効果が高い、新たな抗糖尿病薬となる可能性がある。

本研究はCell Metabolism の近刊(vol. 6, p55-68, July 2007)に、東京大学 糖尿病・代謝内科学教室と生理研 生殖・内分泌系発達機構研究部門との共同研究で発表された。

論文情報

Naoto Kubota, Wataru Yano, Tetsuya Kubota, Toshimasa Yamauchi, Shinsuke Itoh, Hiroki Kumagai, Hideki Kozono, Iseki TakamotoShiki Okamoto, Tetsuya Shiuchi, Ryo Suzuki, Hidemi Satoh, Atsushi Tsuchida, Masao Moroi, Kaoru Sugi, Tetsuo Noda, Hiroyuki Ebinuma, Yoichi Ueta, Tatsuya Kondo, Eiichi Araki, Osamu Ezaki, Ryozo Nagai, Kazuyuki Tobe, Yasuo Terauchi, Kohjiro Ueki, Yasuhiko Minokoshi, and Takashi Kadowaki (2007) Adiponectin Stimulates AMP-Activated Protein Kinase in the Hypothalamus and Increases Food Intake. Cell Metabolism 6: 55-68.

【 図 】

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