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目の中には網膜があり光を感じている。デジタルカメラの撮影素子(画素)のように、網膜の神経は、目の中で規則正しく整列し、「網目(あみめ)」を作っている。この網目がどうして規則正しく並んでいるのか、そのメカニズムはこれまで知られていなかった。
今回、生理学研究所の小泉周と、米国ハーバード大学医学部およびジャクソン研究所の研究チームは、網膜の網目を規則正しくつくるタンパク質としてDscam(ディーエスカム)が重要な役割を果たしていることを発見した。2008年1月24日発売のNatureに発表された。
研究チームは、ネズミの網膜の神経の一つであるドーパミン細胞の配列に注目。遺伝的にDscamがないマウスでは、このドーパミン細胞が網目を規則正しくつくらず、網膜全体にバラバラに広がっていた。また、ドーパミン細胞の突起の形もおかしくなり、太く束になり、絡まっていた。
Dscamは、免疫の抗体と同じような構造で、相手の細胞を認識するときに用いられる。Dscamがなくなることで、どこに自分の仲間の細胞がいるのか分からなくなり、「網目」を規則正しく作ることができなくなるのではないか、と考えられた。
Dscamは、「ダウン症細胞接着因子」とも呼ばれ、ダウン症で過剰にみられるとされる。このタンパク質の異常により網膜で神経が間違って並んでしまう仕組みは、脳の構造異常を考える上でも重要な発見であり、ダウン症の知的障害の原因解明の可能性もあると考えられる。
Peter G. Fuerst, Amane Koizumi, Richard H. Masland, and Robert W. Burgess. Neurite arborization and mosaic spacing in the mouse retina require DSCAM. Nature (Jan 24, 2008 )
規則正しい網膜の神経(ドーパミン細胞)の並び方(左)と、バラバラになった異常な網膜の細胞(右)
細胞(赤丸)の位置が正常では規則的であるが、Dscamがない異常な網膜では不規則となる。
また、細胞から出ている突起(緑線)が、正常ではまんべんなく広がっているのに対して、異常な網膜では絡まって太くなっている。
網膜の平面全体を細胞(緑丸)とその突起が規則的にまんべんなく覆っている。
Dscamが無い異常な網膜の神経細胞(ドーパミン細胞)の分布
細胞(緑丸)の位置が不規則になり、細胞の突起が絡まり太くなっている。また網膜の平面全体をまんべんなく覆っていない。