公開日 2008.02.29

体性感覚刺激Go/No-go課題における反応抑制過程

カテゴリ:研究報告
 統合生理研究系 感覚運動調節研究部門
 

概要

不適切な動作・行動を抑制することは、我々の日常生活で多く見られることではあるが、実際の脳内の抑制活動を記録することができないため、筋電図や反応時間といった行動指標をもとに研究を進めていくことは非常に困難である。そのため、機能的MRIを用いて、脳内の抑制過程に関わる神経活動を明らかにすることは非常に有用であると考えられる。そこで本研究では、機能的MRIを用いて体性感覚刺激Go/No-go課題を行なっている際の脳内の活動部位を明らかにすることにより、ヒト脳の抑制過程に関する神経ネットワークの一端を明らかにすることを目的とした。被験者は(1)動作Go/No-go課題、(2)計数Go/No-go課題を行ない、左手の正中刺激をGo刺激、尺骨神経をNo-go刺激とし、呈示確率を50:50とした。動作課題ではGo刺激時に右手親指でボタン押しを行ない、計数条件ではGo刺激の数を数えた。

その結果、動作課題のNo-go刺激時において、前頭前野、前補足運動野、前帯状回、後頭葉などの活動を記録することができた。またこれらの活動部位は、計数課題のNo-go刺激時にも同様に見られたことから、動作を我慢する際も思考や情動に関わる心の抑制をする際も、ほぼ同一の脳領域で処理が行なわれている事が示唆された。つまり、我々が「何かをしない」という我慢・抑制とは、その種類に関係なく、同様の脳内ネットワークによって統率されていることが明らかとなった。

なお本研究は、イタリアのダヌンチオ大学との共同研究である。毎日新聞、中日新聞などで研究内容が紹介された

論文情報

Nakata H, Sakamoto K, Ferretti A, Perrucci GM, Del Gratta C, Kakigi R, Romani GL. Somato-motor inhibitory processing in humans: An event-related functional MRI study. NeuroImage, 2008, 39: 1858-1866.

【 図 】

(A) 動作Go/No-go課題のNo-go試行の際の脳活動、
(B) 計数Go/No-go課題のNo-go試行の際の脳活動

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