公開日 2008.04.11

機能的MRIを用いた二点識別覚の責任部位の解明

カテゴリ:研究報告
 統合生理研究系 感覚運動調節研究部門
 

二点識別覚閾値は体性感覚における空間的識別能を示すものであり、臨床的検査方法として広く用いられている。主に皮膚感覚受容器の感覚受容野、中枢神経系内の抑制機構によって規定されると考えられてきたが、二点識別覚を識別しているときのヒトの脳活動に関する報告はほとんどなく、責任部位は同定されていなかった。そこで、本研究では二点識別時に特有に活動する皮質内の神経基盤を明らかにすることを目的として機能的核磁気共鳴画像法(fMRI)を用いた実験を行った。方法としては、二点識別と強度識別の二種類の識別課題を行い、この二つを直接比較することにより二点識別時に特有に活動する脳部位を特定することにした。

二点識別課題とコントロールを比較すると、inferior parietal lobule (IPL)、anterior cingulate cortex (ACC)、pre-frontal gyrus (PFG)、inferior frontal gyrus (IFG)、left primary somatosensory cortex (SI)、anterior insula、striatum、それにthe anterior lobe of the cerebellar vermis (ALV)が有意に活動していた。強度識別課題とコントロールを比較した場合にも同様な部位が活動していた。二点識別課題と強度識別課題を直接比較すると、左のIPLが二点識別課題時に有意に活動していた (図)。強度識別課題時に有意に活動する部位は見られなかった。

今回の実験により、IPLが二点識別時には重要な役割を担っていることが解明された。二点識別に関する神経基盤に関して、fMRIを用いた研究は本実験が初めてである。

論文情報

Akatsuka K, Noguchi Y, Harada T, Sadato N, Kakigi R: Neural codes for somatosensory two-point discrimination in inferior parietal lobule: An fMRI study. Neuroimage, 40(2):852-858, 2008.

【 図 】

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二点識別課題と強度識別課題を直接比較した際に、二点識別課題時に有意に活動した部位を表した図。