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神経を再生させ、さまざまな脳神経の病気の治療に応用することが、社会的に大きな期待を集めています。iPS細胞のような万能細胞を病気の場所に「移植」する方法も考えられますが、移植をせずに脳の中にある神経幹細胞を必要に応じて薬物によって増やすことができれば、より簡便な薬物治療の道を切り開くことができるでしょう。
今回、生理学研究所の等 誠司 (ひとしせいじ) 准教授のグループは、躁うつ病の薬である「気分安定薬」が脳の神経幹細胞を増やし、神経再生を活性化させることをマウスの実験で明らかにしました。
研究グループは「リチウム」など3種類の気分安定薬に注目。脳の中にもともと存在する神経幹細胞が、リチウムを投与することによって活性化され増えることが分かりました。臨床で用いられる気分安定薬が、神経幹細胞に作用していることを示した世界で初めての成果です。
等准教授は、「今回の研究によって、おとなの脳にも存在する神経幹細胞が、通常治療に使われている薬物で増えることを示した。ヒトへの応用についてさらに実験をすすめたい」と話しています。
米国専門誌「ステム・セルズ」に掲載されます(5月8日に電子版が公開された)。
気分安定薬※1はノッチシグナル※3活性化を介しておとなの脳の神経幹細胞(脳の万能細胞)※2を増やす。
気分安定薬(リチウムなど)で、神経再生が促進する!
神経幹細胞(脳の万能細胞) → 神経前駆細胞 → 神経細胞 |
Higashi M, Maruta N, Bernstein A, Ikenaka K, Hitoshi S.
Mood Stabilizing Drugs Expand the Neural Stem Cell Pool in the Adult Brain Through Activation of Notch Signaling.
Stem Cells. 2008 May 8. [Epub ahead of print]
http://stemcells.alphamedpress.org/cgi/reprint/2007-1032v1