公開日 2008.05.15

右利きはなぜ右利き?第一次運動野の機能的非対称性を発見

カテゴリ:研究報告
 大脳皮質機能研究系  心理生理学研究部門
 

概要

これまでの電気生理学的研究では、片手手指運動中の同側第一次運動野(M1)の活動は脳梁を介した反対側M1からの抑制と皮質脊髄路による同側支配を反映し、その活動の非対称性が利き手の優位性に関連しうることが提案されてきた。本研究では、ヒト(右利き)の片手手指対立運動遂行中における同側M1の活動の運動頻度依存性を調べるために、機能的磁気共鳴画像法を用いて実験を行った。その結果、運動する手の対側のM1では、運動頻度依存的なBOLD信号の増加が観察され、その変化は左右のM1で対称的であった。一方、同側のM1は、左右半球で非対称的な負のBOLD信号を示し、運動頻度の増加に伴い右M1では信号の低下、左M1では信号の増加が観察された。これらの結果は同側M1で左右非対称的な半球間抑制と同側支配を反映していると考えられ、これらがともに左M1優位に行われていることを示唆している。

論文情報

Hayashi MJ, Saito DN, Aramaki Y, Asai T, Fujibayashi Y, Sadato N (2008) Hemispheric Asymmetry of Frequency-Dependent Suppression in the Ipsilateral Primary Motor Cortex During Finger Movement: A Functional Magnetic Resonance Imaging Study. Cereb Cortex

【図1】

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代表的な被験者における片手手指対立運動中の脳活動(中心溝付近、運動の主効果)。赤-黄は正のt値(BOLD信号の増加)、青-緑は負のt値(BOLD信号の低下)を表す。太線で強調された曲線は中心溝を表す。左に示された数字は、2つの水平断画像のz座標を表す。

【図2】

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各運動周波数におけるBOLD信号強度の変化。 (a) 運動する手指に対して対側(左図)および同側(右図)における右M1(緑色)および左M1(橙色)の信号強度変化。(b) 対側及び同側M1における左右M1の信号強度差 (右M1 - 左M1)。