公開日 2008.06.17

"VSOP"はシングルでも上手い!
—タンパク質の塊一つで水素イオンを上手に通す!— —免疫病の創薬に期待—

カテゴリ:プレスリリース
 生理学研究所 広報展開推進室
 

概要

細胞の表面には数々のタンパク質でできた「穴」があいておりイオンを流しているが、タンパク質の塊は一つだけでは穴ができず、いくつかのタンパク質が手と手をとりあって「輪」をつくることによって、その真ん中に穴を作っているとされていました。

自然科学研究機構・生理学研究所 岡村康司教授ら(現・大阪大学医学部統合生理学教室教授)のグループは、以前発見したVSOPというタンパク質は、タンパク質どうしが幾つか集まって穴をつくらなくても、一つのタンパク質の塊だけで水素イオンを流すことができることを明らかとしました。タンパク質の塊一つでイオンなどを流すのは塩素イオン・チャネル、水チャネルに続き3つ目の発見です。

このVSOPは、voltage sensory only proteinの略語。細胞の内と外の電気信号を感受して、水素イオンを流し、細胞内をアルカリ化します。VSOPの働きによって、細胞内が酸性になりすぎないように調節しており、人の防御機能である免疫力獲得に関与していることがわかっています。そのため、このタンパク質の異常で、水素イオンの流れが悪くなることが、免疫の病気である膠原病の原因にもなると考えられていましたが、どこを水素イオンが流れるのかが明らかにはなっていませんでした。今回、研究グループの実験で、VSOPは、バラバラに一つ一つのタンパク質の塊にしても、上手にイオンを通すことが、確認できました。

岡村教授は、「VSOPがタンパク質の塊一つ"シングル"でも上手に水素イオンを流すことがわかった。今回の発見によって、膠原病などの免疫病に対する創薬のターゲットを絞り込むことができる」と話しています。

6月16日の週に米国アカデミー紀要(PNAS, 電子版)で発表されます。 (webのみリリース)

【 図 】

20080617_1.jpg

VSOP(中央)は二量体を作るが、集まって穴をつくっているわけではなく、それぞれのサブユニットが水素イオンを流すことができる。