公開日 2008.07.16

網膜神経節細胞の興奮性入力の分布は共通ルールに従っている

カテゴリ:研究報告
 細胞器官研究系 機能協関研究部門
 

概要

網膜の中の神経回路の最終出力神経細胞にあたる網膜神経節細胞(視神経細胞)は、その機能と形態によって最低でも12種類に分けられることが知られている。そのすべてが、非スパイン性の樹状突起(non-spiny dendrites)をもっているが、その樹状突起における興奮性入力の位置を網羅的に調べた研究はこれまでなかった。現生理学研究所の小泉周らハーバード大学医学部(マサチューセッツ総合病院)の研究グループは、網膜神経節細胞の樹状突起上の興奮性入力の分布を調べるため、新たに開発した網膜組織培養法(Koizumi et al, PLoS One, 2007)に、PSD95-GFPプラスミドを遺伝子銃により導入し、その分布を記録した。その結果、興奮性入力の樹状突起上の分布は、神経節細胞の種類によらず、以下3つの共通ルールに従っていることを見出した。

  1. 樹状突起の長さあたりの興奮性シナプスの数は、種類によらず、一致し偏りなく分布している
  2. 樹状突起の広がる面積あたりの興奮性シナプス入力の数は、細胞体を中心にドーナツリング状にピークとなる
  3. 小さな細胞ほど樹状突起が密でたくさんの興奮性入力をうけることができる

このように、網膜神経節細胞では、非スパイン性の樹状突起上の単位長さあたりの興奮性入力の密度は定まっていることが分かったことから、こうした共通ルールをささえる分子基盤があることが示唆される。

論文情報

The Journal of Comparative Neurology, Volume 510, Issue 2, Pages 221-236
Published Online: 11 Jul 2008
The spatial distribution of glutamatergic inputs to dendrites of retinal ganglion cells
Tatjana C. Jakobs*, Amane Koizumi*, Richard H. Masland
*These authors equally contribute to this work.

【図】

20080716_1.jpg

網膜神経節細胞の非スパイン性樹状突起上のPSD95-GFPの分布  神経節細胞の種類によらず樹状突起上に一様に同じような密度で分布していることがわかる。

参考文献

網膜組織培養法について

  1. PLoS ONE. 2007 Feb 21;2(2):e221. Links
    Organotypic culture of physiologically functional adult mammalian retinas.
    Koizumi A, Zeck G, Ben Y, Masland RH, Jakobs TC.
  2. JoVE, http://www.jove.com/index/details.stp?ID=190
    Organotypic Culture of Adult Rabbit Retina
    Ming H. Lye, Tatjana C. Jakobs, Richard H. Masland, Amane Koizumi