公開日 2008.08.01

経脳硬膜超音波ドプラー法を用いた運動課題実行中のサル大脳皮質運動関連領野の機能計測

カテゴリ:研究報告
 統合生理研究系 生体システム研究部門
 

概要

神経活動に伴う大脳の血流変化を観察することは、様々な脳機能の評価に広く使われている。しかし、これまでの方法では同定された血管の血流変化を、直接測定することは出来なかった。本研究では、大脳皮質内の微小動脈を超音波脳断層図とカラードプラーイメージ法を組み合わせて同定し、その後、その微小動脈の血流速変化をpulsed-wave ドプラーモード法で測定することにより、同定した血管の血流を測定することに成功した。われわれはこの「経脳硬膜超音波ドプラー法」を用いて、片手あるいは両手のスイッチ押し運動課題を実行中のマカクサルの大脳皮質運動関連領野における血流速変化を調べた。運動に応じて、反対側の一次運動野の血流速度が増加した。片手運動と両手運動において、手がかり刺激と運動に応じた二峰性の血流増加が補足運動野において観察された。補足運動野におけるそこのような血流速変化は、課題トレーニングの早期に大きく、学習が進むと徐々に減少した。しかし、一次運動野における血流速変化は学習の早期・後期に関わりなく、一定の傾向であった。さらに補足運動野における血流速変化は、課題の難しさに依存していた。これらの結果は経脳硬膜超音波ドプラー法が局所脳機能の評価に有用であることを示している。

論文情報

Nobuhiko Hatanaka, Hironobu Tokuno, Atsushi Nambu, and Masahiko Takada
Transdural Doppler Ultrasonography Monitors Cerebral Blood Flow Changes in Relation to Motor Tasks
Cerebral Cortex Advance Access published on July 25, 2008.

【 図 】

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反対側片手運動を実行中のサルから記録した血流速測定の結果。手がかり刺激(A)、あるいは運動(B)に応じた血流速変化を、脳溝を展開した脳表面上に等高線で表示してある。血流速変化は、1 × 1 mmの区域ごとに20回の成功試行を加算平均した。血流速変化はベースレベルからの増加量によって異なる色で示してある(左下)。(C)測定した脳領域、(D)前頭葉、頭頂葉の皮質領野、(E)課題のタイムコースの中で測定した時間を、手がかり刺激、運動について、それぞれ示す。CgS, 帯状溝; CMAd, 帯状皮質運動野背側部; CMAr, 帯状皮質運動野吻側部; CMAv, 帯状皮質運動野腹側部; CS, 中心溝; IAS, 弓状溝下部; IPS, 頭頂間溝; LS, 外側溝; PF, 前頭前野; PMdc, 背側運動前野尾側部; PMdr, 背側運動前野吻側部; PMvc, 腹側運動前野尾側部; pre-SMA, 前補足運動野; SI, 一次体性感覚野; SMA, 補足運動野; SPS, 上中心前溝.