公開日 2008.08.27

機械的力は、細胞接着斑でのアクチンの重合をzyxin依存的に促進する

カテゴリ:研究報告
 分子生理研究系
細胞内代謝研究部門
 

概要

細胞接着斑において、細胞内のアクチン細胞骨格は細胞外マトリックスにアンカーしている。この結合の強度は接着斑への力の付加により増強する。この反応は、細胞が運動したり、生体内での力学的変動に応じて形態を変化させたりすることに重要であると考えられている。アクチン骨格—マトリックス間結合の強化には、アクチン繊維の接着斑への集積が関わっていることが知られている。しかし、力に応答してアクチン繊維の量を調節する分子機構は不明であった。今回我々は、培養ヒト皮膚繊維芽細胞を用いて、接着斑におけるアクチン重合活性への、機械的力の影響を調べた。アクチン重合活性は、蛍光標識アクチン分子の接着斑への取り込み量で評価した。ミオシンIIを阻害することで、細胞自身の収縮力による接着斑への力の付加を阻害すると、接着斑でのアクチン重合活性が消失した。ミオシンIIを阻害した状態で、基質を伸展させることにより外部から接着斑へ力を加えると、接着斑でのアクチン重合が回復した。これらの結果は、力の付加が接着斑でのアクチン重合を活性化することを示している。次に、アクチン重合との関わりが示唆されている接着斑タンパク質zyxinについて、力応答性のアクチン重合調節への役割を調べた。zyxinの接着斑への局在は、ミオシンIIの阻害で消失し、基質を伸展させると回復した。すなわち、zyxinの接着斑への局在は力依存的であった。また、zyxinのアミノ末端欠損変異体の発現により内在性zyxinの接着斑への局在を阻害すると、接着斑での力依存的なアクチン重合活性が低下した。これらの結果から、zyxinは力に応答してアクチンの重合を調節するメカノトランスデューサー分子であることが明らかとなった。

なお本研究はJournal of Cell Science誌において注目論文を紹介するIn this issueにて取り上げられました

論文情報

Hiroaki Hirata, Hitoshi Tatsumi and Masahiro Sokabe
Journal of Cell Science 121, 2795-2804 Published by The Company of Biologists 2008
doi:10.1242/jcs.030320

【図1】

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機械的力の変化に応答してのzyxinの局在の変化。
A: 正常な繊維芽細胞。zyxinが接着斑に局在している(矢印)。
B: ミオシンIIを阻害し、収縮力の発生を阻害した細胞。zyxinの接着斑への局在が消失している。C: ミオシンIIを阻害した状態で、基質を両矢印の方向に50%伸展させた。zyxinの接着斑への局在が回復している(矢印)。