公開日 2010.09.30

抑制性のシナプス結合が網膜神経節細胞の方向選択性を増強する(理論およびシミュレーション研究)

カテゴリ:研究報告
 
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光をうけとり電気信号に変換する目の中の網膜と呼ばれる神経組織には、様々な視覚の特徴に応じて反応する神経節細胞と呼ばれる神経細胞が知られています。とくに注目される機能として、ある種類の網膜神経節細胞は、モノの動きやその方向に応じて反応する「方向選択性」を持っていることが知られています。しかし、これまでその方向選択性がどのように生まれるのか数多くの説があり、その詳細なメカニズムについては、議論が続いているところです。とくに方向選択性神経節細胞が樹状突起で受け取る興奮性信号と抑制性信号の空間的な配置とそのバランスについて、多くの研究が進んでいます。

生理学研究所の小泉周 准教授と、東京工業大学の高安美佐子 准教授、SONY CSLの高安秀樹シニアリサーチャーは、理論解析とコンピューターシミュレーションを用いた研究により、網膜神経節細胞への多少の非対称的な興奮性入力は方向選択性を生みだすことができるものの、それが、非対称的な抑制性入力が加わることにより、より増強されることを明らかにしました。とくに非対称な抑制性信号によりスピードチューニングが増強されることを明らかにしました。昨今の解剖生理学的・電気生理学的知見をサポートし、また、興奮性および抑制性信号の方向選択性に対する役割の違いを明示する研究成果として注目されます。
 

Asymmetric inhibitory connections enhance directional selectivity in a three-layer simulation model of retinal networks.
Koizumi A, Takayasu M, Takayasu H.
J Integr Neurosci. 2010 Sep;9(3):337-50.

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