公開日 2011.04.11

成熟脳の可塑性を促す抑制性神経の機能構造的役割

カテゴリ:研究報告
 生理学研究所 大脳神経回路論研究部門
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成熟した脳の神経回路の中で、抑制性神経が可塑性に重要な役割を果たしている事が示唆されて来ていますが、まだそのメカニズムはわかっていません。本研究では、経験依存的可塑性に関する抑制性神経の構造面での変化を報告します。マウスの大脳皮質視覚野を2光子レーザー顕微鏡でin vivo観察したところ、視覚経験依存的に、皮質2/3層の抑制性細胞の樹状突起が、両側性視覚野、片側性視覚野で、それぞれ異なった構造変化(およそ16%の樹状突起の最先端部分の伸縮を観察)を示す事を見つけました。例えば、視覚遮蔽の初期には、抑制性神経細胞の樹状突起の尖端部分の収縮を認めましたが、これと同時に近傍の錐体細胞上の抑制性神経終末の数の減少も観察しました。抗うつ薬fluoxetineの薬理学的な投与でも同様の状態を誘導しますが、神経回路の抑制機能を減弱させるこの状態は、機能的なシナプス入力を持つ樹状突起を新たに伸張させる等の神経回路の構造変化を促す環境となっていると考えられます。



この成果は、米国MITとの共同研究により、2011年4月10日にNature Neuroscience(電子版)にて発表されました。