公開日 2011.06.09

経頭蓋直流電気刺激による脳卒中片麻痺患者の下肢運動機能の改善

カテゴリ:研究報告
 生理学研究所・心理生理学研究部門
 

概要

頭蓋の外に置いた電極から微弱な電流によって電極直下の神経細胞を刺激する経頭蓋直流電気刺激は、ヒトの脳活動を安全に修飾することのできる手法として基礎研究や臨床応用に注目が集まっている。今回、慢性期の脳卒中片麻痺患者において、下肢の一次運動野をターゲットとして電気刺激を与えることで麻痺のある下肢の筋力が一時的に向上することが二重盲検法を使った実験において示された。この結果は、大脳への電気刺激を機能訓練と組み合わせることで脳卒中後のリハビリテーション効果を増強することの出来る可能性を示唆するものである。本研究は、経頭蓋直流電気刺激を臨床疾患に応用した本邦で最初の国際学術論文であり、リハビリテーション分野で最も高いインパクトファクターをもつ米国神経リハビリテーション学会の専門誌Neurorehabilitation and Neural Repairに掲載された。

本研究は、生理学研究所の田中悟志・特任助教を中心とし、東京湾岸リハビリテーション病院、ATR脳情報通信総合研究所(脳科学研究戦略推進プログラム)、国立精神・神経医療研究センター神経研究所との共同研究として実施された。また本研究は文部科学省科学研究費補助金の補助を受けた。

論文情報

Tanaka S, Takeda K, Otaka Y, Kita K, Osu R, Honda M, Sadato N, Hanakawa T and Watanabe K.
Single session of transcranial direct-current stimulation transiently increases knee extensor force in patients with hemiparetic stroke. Neurorehabilitation and Neural Repair, 25(6), 565-569 (2011).