共同利用

 archive 2015-2018 archive ~2015

 

MRI 装置

過去20 年以上にわたり、MRI 装置の管理・維持・共同利用運営は心理生理学研究部門が担っており、安全性に関して特に留意してきた。基礎研究用に設置されたMR 装置の安全性について、2016 年より、日本磁気共鳴医学会と日本神経科学学会の合同ワーキング・グループが設立され、定藤と福永がそのメンバーとして参加し、指針の策定を進めて「基礎研究に用いるヒトを対象としたMRI 検査の指針」を2018 年9月に公表した。これは、MR 装置を適切かつ安全に管理運用するための安全管理体制を確立することに重点を置いたものである。
重要な研究ツールである3テスラMRI 装置は当初1 台であったが、2010 年度より3 台となり、その維持管理と効率的運用にいっそうの努力が必要となった。このため、高磁場 MRI(3テスラおよび7テスラ)の共同利用によるヒト並びに非ヒト霊長類を対象とする脳機能計測を支援するとともに、脳の構造機能連関研究を進めることを目的とする脳機能計測・支援センター 生体機能情報解析室と協力して運営体制を固めてきた。具体的には、技官による装置管理、事務担当者による被験者予約など、役割分担によって、研究者が研究に集中できる環境を作る努力を続けてきた。3テスラ装置のうち一台(Allegra)は2017 年度末をもって運用を停止した。一方2018 年以降7TMRI の運用が本格化し、超高磁場MRIの専門家である福永准教授と生体機能情報解析室の近添准教授を中心に運営してきた。心理生理学研究部門の閉鎖後、安全かつ効率的なMR 装置共同利用を継続展開するために、生体機能情報解析室にMRI 装置の管理・維持・共同利用運営機能を移す必要がある。

脳機能イメージング共同利用実験

現在MRI 装置の状態は良好であるが、問題点として所内対応研究教育職員の不足が挙げられる。最近研究人口の増大している脳賦活検査は、主に人間を対象としている関係上、倫理委員会の検討が必須であることから、共同利用には、所内対応研究教育職員との共同研究が前提となる。脳賦活検査の適用は認知科学全般に広がりつつあり、共同利用の申込は人文系(特に言語・心理領域)からの増加が顕著である。一方で、所内対応研究教育職員の守備範囲は限られており、心理生理研究部門の教授1名、准教授1名、助教1名、特任助教2名による対応には限界があった。生体機能情報解析室を中心として、生理研内の複数の研究室と連携して共同利用を推進する「集団対応」が必要となるだろう。
 

データベース構築

脳機能イメージング共同利用研究の新しい方向性として、データベースを用いたメタ解析があり、データベース構築と維持が重要性を増している。ナショナルプロジェクトとしての革新脳・国際脳での活動に鑑み、脳・神経・精神疾患の病態解明と治療戦略の策定を目的とする脳データ収集とデータベース化の基盤整備を目的とする「脳・神経・精神疾患の病態解明と治療戦略の策定を目的とした脳データ基盤整備に関する協定書」が、東京大学、理化学研究所CBS、国立精神・神経医療研究センター、生理学研究所の間で締結された。本協定に基づいて、
  1. ヒト脳の生理的データ、病態に関連するデータの系統的な取得に係る計画の策定
  2. 多機関で取得された脳画像データ、機能データ等の共有化・データベース化に係る調整・分担・実務
  3. 共有されたデータの解析と活用に係る研究協力
  4. その他本協定の目的達成のために必要な事項
の事項について、連携協力をすることになった。心理生理学研究部門では、3.3 で記載したデータベース構築と維持に長年携わってきている。脳機能計測・支援センターの生体機能情報解析室はデータベース構築をその業務の1 つにかかげていることから、研究所の業務として生体機能情報解析室で引き継ぎ展開する必要がある。
 

先端バイオイメージング支援プラットフォーム(ABiS)

共同利用研究/ABiS で述べたとおり、2022 年4月より第二期が開始されている。ヒトを対象としたMRI 撮像技術ならびに画像解析技術の高度化は著明であり、第一期では以下の点での支援ニーズが高まっていることが明らかとなった。
  1. 臨床医学においては疾患が研究対象となっている関係から、病院における患者MRI データ収集が一般的で、撮像パラメータ最適化への支援ニーズが高い。
  2. ヒトを対象とした研究で扱うデータ数は11(個別実験)から105(データベース)まで幅広く、ゲノムデータとの組み合せによる統合的解析も展望されていることから、数理統計学の基礎知識を前提とした支援を進める必要がある。
  3. MRI 撮像技術の高度化は、ヒトを対象としたMRI 撮像で展開しており、動物を対象としたMRI 研究においては、ヒトで確立された撮像法や画像解析法が円滑に動物MRI へ展開できるような支援ニーズが高まっている。これは、非ヒト霊長類とヒトの神経科学的な種間比較において顕著である。
このようなニーズ把握の上で、第二期では、臨床研究と基礎研究、MRI 撮像とデータ解析、個々の課題とチュートリアルという切り口で、多角的な支援を行うこととなった。機関メンバーとしては、第一期の東京大学(代表者:岡田直大)と順天堂大学(代表者:青木茂樹)に、理研(代表者:林拓也)が加わり、以下の3 点の活動を開始した。
  1. 臨床研究については、岡田と青木が、主にDTI(青木)とResting state / VBM(岡田)を対象としてすすめる。動物とヒトを対象とする基礎研究については定藤と林が担当し、3TMRI を用いた動物MRI のデータ収集並びに収集パラメータ支援とデータ解析支援(林)並びにヒト-動物MRI(7TMRI)を用いたデータ収集とデータ解析支援(定藤)を担当する。
  2. MRI 撮像支援については、主に病院における患者MRI データ収集を対象とする(青木、岡田)とともに、3テスラ臨床機を用いてファントムやボランティアによる画像標準化を支援する(青木)。
  3. 個々の課題に対して画像解析支援、数理統計支援、データ収集支援を行うとともに、チュートリアルを行う。チュートリアルは共同で行い、生理学研究所で取りまとめる(岡田、青木、林、定藤)。
このような形で、科研費取得課題の先端的技術支援を継続的に行うためには、MRI装置、脳機能イメージング共同利用研究、データベース構築 で記載した活動に基づいた共同利用体制の確立と維持が必須である。